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ESF 楽しい・サイ・ファン  作者: 渋谷かな
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「ここは?」


俺の名前は、うさぴょん。これでも冒険者だ。ファンタジー世界の住人である。


「なぜ!? 俺はサイコロを持っているんだ!?」


俺の手には、なぜか!? 両手サイズの大きなサイコロを持っていた。この世界は、全てサイコロで決める、ファンタジー世界であった。ただし、そのサイコロは、気まぐれだった。


「マジか!?」


この物語は、ファンタジー世界と面白さをテーマに、マニア向けの厳しいものではなく、一般大衆が受け入れられるだろうレベルの話である。




「ここが始まりの町、イチだ。」


普通のファンタジー世界の町である。


「うさぴょん。おまえは誰に話しているんだ?」

「読者、視聴者かな?」

「なんだそれ?」

「そういう、おまえはどうなんだ? コロコロステーキよ。」

「誰がコロコロステーキだ!? その呼び方は却下したはずだ!」

「そうだった。おもしろさを追求するのは難しいな。」

「追及しなくていい。追求しなくて。」

「チッ。残念。」

「舌打ちするな!」


これが俺の相棒。コロコロステーキ・・・ではなく、くまぴょんだ。もちろん冒険者だ。


「うさぴょん。これから何をする?」

「お約束は、装備を整えるために武器屋に行くか、仲間を探しに行くかかな?」

「まどろっこい! 私にサイコロを振らせろ!」

「ダメだ!? おまえには呪いがかかっているのを忘れたか!?」

「呪いなんか、この手で打ち砕いてやる! それ!」


くまぴょんは俺からサイコロをもぎ取って投げた。


「コロコロステーキを食べに行く・・・!?」

「私は、いつまで呪われればいいんだ!?」

「だから言っただろう。おまえがサイコロを振っても、コロコロステーキしかでないのだ!」

「ショック・・・まるでサイコロに意志があるみたいだ。」

「俺のサイコロは気まぐれだからな。」

「おまえが言うな。持ち主だろうが。」

「ごめんなさい。」


俺の職業は、勇者でも悪魔でもなく、サイコロ士。新しい職業である。正確には俺は、気まぐれサイコロ士。レアな存在なのだ。


「じゃあ、行こうか?」

「そうだな。コロコロステーキ。」

「だから呼ぶなって!?」

「飯の名前を言っただけだろ!?」

「すまん・・・。」

「気にするな。悪いのは呪いだ。呪いが悪いんだ!」

「そうだ! 私は呪われているに違いない!」

「ははははは・・・今月何回目のコロコロステーキだ?」

「17回目かな?」

「コロコロステーキ食べたくないな・・・。」

「安心しろ! 明日こそ違う目を出す!」

「やめてくれ!? まだサイコロを投げるつもりか!?」

「私は呪いを打ち破るのだ! はっはっは!」

「頼むから死んでくれ。」


俺とくまぴょんは、こんな調子でも仲良しだった。不思議と付き合っていける、それが友達だろう。



「コロコロステーキ屋に着いた。」

「だから、おまえは誰に話している?」

「場面チェンジのお約束だ。諦めろ。」

「手作り感満載だな。」


俺たちの世界は構想無しの書きながら即席でアイデアだけで創造されている。一言で言えば、適当は、おもしろい。である。


「オヤジ! コロコロステーキ2人前!」

「ちょっと待て! うさぴょん。」

「なんだ?」

「コロコロステーキ屋の店主をオヤジに決めつけるな! 今なら、まだカワイイお姉さんがお肉を焼いてくれる可能性があるじゃないか!?」

「しまった!? 俺としたことが!? 重大なミスを犯すところだった!?」


俺は悔い改め、コロコロステーキ屋のオヤジをカワイイお姉さん設定にしようとした。


「マスター! マスター!」

「はい、お客様。」

「ミディアムでよろしく。」


その時、コロコロステーキ屋の店主を男に確定してしまう呼び声が聞こえてきた。


「しまった!? 先を越された!? マスターが男になってしまった!?」

「女だ。」

「そうか! おまえのサイコロでマスターを女にすればいいんだ!」

「やめい! マスターにかつらと口紅をつけたら気持ち悪い!」

「おえー。」

「違う! 俺が言いたいのは、注文をしたのが女だ!」

「それを早く言え!」


俺と、くまぴょんは客の女を見た。


「カワイイ!」

「乙女だ!」

「声をかけて来い! ナンパしろ!」

「おまえが行け!」

「できるか! 今時、男子に女に声をかける勇気はない!」

「そだね。お金も就職先もないもんね。」

「ガーン。」


これが俺と、くまぴょんの実力だった。


「そこの腐敗男子2人!」

「はい! お嬢さん!」

「コロコロステーキが不味くなる。静かにしてもらえないか?」

「すいません! すいません!」


俺と、くまぴょんは謝るしかできない情けない、ぴょんな存在だった。女はステーキを食べ続けている。


「いあ~、危なかった。」

「ふう~、助かったぜ。」

「ははははは!」

「・・・!? 違う! このままではいけないはずだ!」

「そうだ! このままでは未婚男子が増え続け、出生率が下がり続けてしまう!」

「こうなったら、俺のサイコロを使うしかない!」

「おお!? 遂にあれをやるのか!?」


俺がサイコロを1度も降らずに、第1話が終われるはずがなかった。


「そこの腐敗男子!」

「はい! お嬢さん!」

「しまった!? 反射的に反応してしまった!?」

「俺たちは負け犬だ!?」

「黙りなさい! 肉が不味くなるでしょう!」

「ごめんなさい。ごめんな・・・はあ!? チャンス到来! 頼んだぞ! 俺のサイコロ! 何が出るかな! 何が出るかな!」


俺はサイコロを出して、生意気なカワイイ女に向けて放った。


「俺たちの仲間になる。」


サイコロの目に書かれていた。


「ダサいサイコロ! どうして私があなたたちの仲間にならないといけな・・・なります。仲間に。私の名前はカトリーヌ。一緒に冒険しましょう! よろしくね!」

「やったー! 新しい仲間をゲットだぜ!」

「さすが! うさぴょん! 天才サイコロ士!」

「な、なんで!? どうして!? なんで私が!? こんな腐敗男子たちと一緒に旅に出ないといけないのよ!?」

「説明しよう。うさぴょんは、サイコロを振って、出た目の効果を相手に与えることができるのだ。」

「そう、俺は天下無敵のサイコロ士。」

「そんなのありなの!?」

「サイコロを振らせて、俺の右に出る者はいない!」


これにしよう。決めゼリフ。


「しまった!?」

「どうした!? うさぴょん!?」

「お嬢さんを仲間ではなく、俺の嫁にすればよかった!? ああ!? ミスった!?」

「抜け駆けは許さんぞ!」

「なにを!? やるか!?」

「やってやるさ!?」


俺と、くまぴょんはケンカをしても仲良しだ。


「私、こんな人たちとパーティーを組んでいくのね・・・はあ。」


ため息を吐きながらも、カトリーヌはコロコロステーキを食べ続けた。


つづく。

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