表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/50

10.十年前の出来事(1)

 その日、朝陽は偶然にも東雲家にボールを投げ入れてしまった。

 正直なところ逃げ出してしまいたかったが、逃げてしまえばもっとややこしいことになるかもしれないと思い、勇気を振り絞って東雲家のインターホンを鳴らす。


 玄関から出てきたのは、自分の母親より少し若いぐらいの女性。最初、彼女が泣いているのかと思ったが、それは違うということにすぐ気付く。よく見ると右目の下には泣きぼくろがあり、それが涙に見えただけだった。


 朝陽は声が震えながらも事情を説明すると、庭へ行きボールを探しに行ってくれた。戻ってきたときにはその手に一つのボールが握られていて、朝陽はホッと安堵する。


 そして不意に、一粒の涙が頬を伝った。怒られるかもしれないと身構えていたが、その女性は優しい表情のまま朝陽の頭を撫でてくれたのだ。


 一向に泣き止まないその姿を見て、女性は家の中へと入れてくれた。美味しいケーキを振舞われ、朝陽の表情に笑顔が戻る。


 そんなときに、一つの写真が目に入った。


 そこには、目の前の彼女そっくりな少女が映っている。彼女はカメラ目線でピースをしているが、隣にいる少女は恥ずかしがっているのか、目線をやや外していた。


 その写真を見ていると、彼女はとても嬉しそうな笑みを浮かべる。


「可愛いでしょ。私によく似た、自慢の娘なの」


 確かに、写真に映っている娘は、目の前の彼女とよく似ているなと朝陽は思った。


 朝陽はその少女に純粋な興味を示した。会って一度話をしてみたい。ベッドの上の少女が、とても孤独そうに見えたから。


 すぐに少女の母へお願いをした。母は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、最後には嬉しそうな笑みを浮かべて朝陽の言葉を了承する。その瞳には、綺麗な涙がたまっていた。


 そして朝陽はベッドの上の少女、東雲紫乃と出会った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ