#007「ぶぶ漬けでも」
「いよいよ渡されてしまったわね」
「この日が来ないことを祈っていたのだが」
「そんな、召集令状や重病告知みたいに受け取らなくても良いのに。進路希望調査票なんだからさぁ」
「クラスと類型は、三年生でも固定なのかしら?」
「多少の変動はあるんじゃないか? 原級留置もあることだ」
「編入や転出もあると思う」
「でも、大半は持ち上がりになるんじゃないかしら?」
「過半数は、そのままだろうな。現状維持なら、一組が文系で、担任が国語教員」
「二組が理系で数学。三組が体育系で体育」
「四組が芸術系で社会。五組が看護系で理科」
「それで六組が国際系で英語だな」
「こういうとき、誰に訊いたら良いのかしらね?」
「選択肢は大きく分けて、家族、友人、教員の三つだな」
「どれも社会の現状に詳しいとは思えないけどね」
「そうなのよねぇ。何も考えずに過ごせるユウトが羨ましい」
「俺も、遥と立場を入れ替わりたいものだ」
「弟くんや妹さんからしたら、早く大人になりたいと思ってるだろうし、好都合かもね」
「三人お揃いで、何を話してるの? 恋愛話だったら、わたしも入れてちょうだい」
「あっ、裕子さん」
「司書の仕事は、どうしたんですか、お嬢様?」
「二人とも、斎藤先生に失礼だよ」
「良いのよ、大貴さん。アスカさんも翔さんも、悪気がある訳ではないもの。あら、進路希望調査票ね。なるほど、なるほど」
「また、裕子ワールドが始まったわね」
「勝手に一人合点しないでほしいよな」
「ヒソヒソするくらいなら、直接訊きなよ。――何が、なるほど、なんですか?」
「こうなったら、顧問として悩める仔羊を導かねばなりません。進路相談に乗ってあげましょう。わたしと一緒に、いざ司書室へ」
「どうする?」
「断りたいところだが」
「拗れると拗ねるから厄介だよ?」
「いらっしゃいよ。お茶とお菓子もあるのよ?」
「迷うこと無いわ。行きましょう」
「目の色が変わったな。まぁ、釣られるのは癪だが」
「斎藤先生の審美眼は、たしかだものね」




