#062「帽子とルーペ」
「将棋崩し、はさみ将棋、まわり将棋」
「坊主めくり、五目並べ、ドミノ倒し」
「鈍器としてのバール、手品の小道具としての帽子とステッキ」
「傘をバットにした、ゴルフや野球のスイング」
「本来とは違う使いかたをしてる道具や遊びは、意外と多いものだな」
「輪ゴムは、もともと札束を留めるためのもので、ゲート・ボールは、戦災孤児の非行防止のためだと言われてますよね」
「トランプ、花札、サイコロ、双六は賭博用品よね」
「シルエット画は絵の具代の節約として、ギロチンは首切り役人の負担軽減として考案されたものだよ」
「ランドセルは兵隊の背嚢で、学生服は軍服、トレンチは塹壕を意味するんだったな」
「大学生が使わないのに大学ノートと呼ぶのは変だという話から、大きく飛躍しましたね」
「そもそも、オープン・キャンパスの話だったわよね?」
「そうそう。テストが終わったら見学に行こうって話してたんだよね。でも、その前に五十嵐くんが、同じ時期にある高校見学会で、妹さんと鉢合わせしたくないって言う話があって」
「その話は、もう済んだだろう」
「でも、五十嵐さん。せっかくの機会なのに、他人のフリをするのは可哀想ですよ」
「そうよ。やっぱり案内してあげるべきよ」
「文化祭のときも、あのあと結局、僕が案内することになったんだよ、苦竹さん」
「山内っ」
「そうだったんですか」
「そうなのよ。あたしは、ちゃんとユウトを案内したっていうのに」
「日頃は焼かなくて良い世話をするに、あぁいうときは、面倒見が悪いんだもんね」
「うるさい。過ぎたことを言うな」
「見学会は、まだ、これからですよ」
「そうそう。キチンと説明してあげなさいよ」
「進路の参考になるんだからさぁ」
「分かったから、三人とも離れろ。今度は、俺が面倒を看るから」
「約束ですよ、五十嵐さん」
「あとで、遥ちゃんに確かめるからね」
「この三人が証人だよ」
「はいはい。多勢に無勢だな、まったく」
「言質も取れたところで、勉強会を再開しましょうか、部長さん」
「おや、こんなところに虫眼鏡が」
「逃がさないよ、黛さん。そこに座って」




