#061「祖父と祖母」
「襟や袖の黄ばみや黒ずみが目立つのが気になるんだが」
「それなら、前もって中性洗剤で揉み洗いしておくと、汚れ落ちが違いますよ」
「あたしは、靴下やハンカチが、よく洗濯途中で行方不明になるんだけど」
「ネットに入れておくと見失わないよ。洗濯機の横に吸盤フックで吊るしておいて、脱いだらソコに入れるようにすれば良いんだ」
「なるほどな」
「参考になりましたでしょうか?」
「充分よ。二人とも、どこで生活の知恵を仕入れてるのよ?」
「僕の場合は、おばあちゃんからだよ」
「苦竹は?」
「わたしの場合は、祖父からです」
「昭和の男にしては、珍しいわね」
「もしかして、婿養子だったとか?」
「そうなのか?」
「そうなんです。よく分かりましたね」
「いつもの、論理に基づく推測かしら?」
「その通りだよ、黛さん。――お笑い芸人の海外進出」
「見た目や動きで笑いが取れるなら、言葉が違っても人気を博すのかもしれないな。――海外ニュース。米国。歳の差で結婚してみれば、新婦は一人目の妻との長男の娘だと判明。中国。容姿や持ち物による解雇の言い渡し」
「合縁奇縁とは言っても、三度目の結婚相手が実の孫だったら、普通は戸惑いますよね」
「美人過ぎるとか、男勝りだとか、高級品を持っているとか、そんなツマラナイ基準で馘にされたら、溜まったものじゃないわ」
「世界は広いよね」
「日本も広いけどな」
「海や山を挟むと、ガラッと変わりますよね」
「北海道とか、沖縄とか」
「四国や九州も、どこか独特だよ」
「所変われば、品変わる。一般常識って何だろうな。――身なりに無頓着だったり、変わった趣味を持ってたり」
「ノーベル賞を受賞されるかたは、凡人には理解できない癖をお持ちですよね」
「天才は、普通の人には無い手相を持ってるとされてるのよね」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦だけど、手相学は、ある種の統計学だから、馬鹿に出来ないところだよね」
「占いに凝って運勢を鵜呑みにしすぎると、自分ひとりでは何も出来なくなるから、要注意だけどな」
「参考程度なら良いでしょうけど、盲信してしまうと生活に悪影響ですよね」
「人体にも大ダメージね」
「健康を意識するのは良いことだけど、美容法についてアレコレ調べて実践していくうちに、少しずつ無理を重ねていって、身体が何も受け付けなくなってしまうと、それはそれで病気だからねぇ」
「過ぎたるは及ばざるが如し、だな」
「不老長寿は、人間なら誰しもが願うことですけど」
「アンチ・エイジングも程々にしないと」
「かえって身を滅ぼす結果になるものね」
「子供の躾にも言えそうだな」
「甘やかすと躾になりませんけど」
「厳しすぎると虐待になるものね」
「何もしないと、それもまた虐待だよ」
「気を配るってのも、一筋縄ではいかないな」
「山嵐のジレンマですね」
「近付きすぎると、お互いの針が刺さるけど」
「離れすぎると、肌寒い」




