#005「ベテラン芸」
「テロに麻薬の密輸に感染症。日本も、平和ボケしてる場合では無いな」
「二十一世紀が始まってから、まだ十六年しか経っていないというのに、世紀末って感じね」
「自衛意識と防犯対策が必要だね」
「世も末だな」
「監視カメラとカラー・ボールと刺又が欲しいところね。部費で購入できないかしら? ちょっと調べてみてよ」
「それぞれ、いくらくらいするか気になるね」
「そんなものを買う必要は無い。それから、黛。山内に調べさせるな」
「だって、多くの情報から必要な情報をピック・アップするのは、大貴が一番早いんだもの」
「僕も迷惑してないよ?」
「他力本願が身に付くと、逃げ癖になるんだぞ?」
「針小棒大に捉えすぎよ。――あたしから報告するわね。間食にスナック菓子ではなく、ナッツ類やドライ・フルーツ、チョコレートを食べると集中力が高まるという情報、クロマグロの緊急漁獲規制で、鮪が食べられなくなるかもしれないという情報。食品に関しては以上の二点なんだけど、あと、性的マイノリティーに関する意識調査で、回答者の三割がエル・ジー・ビー・ティーの人間と一緒の職場で働くことに抵抗があると回答したという結果が話題になってるという情報もあるの」
「ウゥン。最後の話は、放送できるかなぁ」
「言葉を選ばないとマズイだろうな」
「もし何か問題があったら、お詫びのメッセージは、あたしが言うわ」
「念のため、順番はラストにしたほうが良いね」
「そこで中断しても良いようにだな、山内?」
「せっかく調べたことが無になったら嫌だものね」
「リスク・ヘッジは大切だからね」
「配慮しないといけないとは、頭で分かっているけど、どこまでも配慮しなきゃならないから、キリが無いよな。――俺からは、米国で、一年間に亘る隔離生活による火星環境の模擬実験が完了したという情報、ノート型パソコンの父とされ、エー・アールにも先見の明があったエレンビー氏が亡くなったという情報、それから、あえてエス・エヌ・エスを使わない少年の情報の三点だ」
「続けて報告するね。僕からは、塗り絵や数学が、大人の趣味として密かな流行の兆しを見せているという情報、公営施設の閉鎖や、公園内での遊具の撤去や禁止事項の増加によって、子供の遊び場が減少しているという情報、ある小中学生向けのアンケートで、得意科目も苦手科目もトップが算数・数学だったことを受けて、各方面から話題を呼んでいるという情報の三点だよ」
「あたしの話を最後にするとして、そこに繋がりそうなのは大貴のほうだから」
「今日は俺からスタートか」
「よろしくね、五十嵐くん」
「ちょっと話が逸れるけど、疑問を一つ。車内広告が減ったのは、スマート・フォン画面しか見なくなったからかしら?」
「そういえば、年々、空きが目立つようになってるな」
「動画を流してるのは、よく見かけるけど、紙の広告は減ってるね」
「あっても、消費者金融や弁護士事務所の広告ばかりだし」
「もしくは、医薬品や介護施設の広告だな」
「どちらにしても、面白味が無いから見ないよね」
「そうでしょう? 何事も掴みが大切だわ。そういう訳だから、翔。頼んだわよ」
「ん? 俺に、どうしろって言うんだ」
「ギャグを飛ばせば良いんじゃないかな」
「期待してるわ」
「ちょっと待て。そういうのは、黛のほうが」
「あれぇ? 他人に頼るのは良くないって言ったのは、どこの誰だったかなぁ」
「一分前。総員、位置につけ!」




