#058「午後の秋風」
「五月蝿くない程度にビー・ジー・エムを流したり、さり気なく花を生けたりして、来館者に音や臭いを意識させないように気配りしてるんだな」
「オススメを把握したコンシェルジュが案内してくれるサービスは、エー・エイの自動選曲システムに似てるね」
「それは、人間が凄いんですか? それとも機械が凄いんですか?」
「どっちもプロフェッショナルには違いないわ」
「機械的な人間か、人間的な機械か」
「その差は、どんどん縮まってるよね。――荷物の受取り代行して、その荷物を転送するだけのアルバイトは、個人情報を引き出す詐欺だったみたいだよ」
「そのようですね」
「ときどき、インター・ネットの広告で宣伝してるアレね」
「やっぱりな。どうも話が旨すぎると思ってたんだ」
「おいしい話には、その裏に罠やカラクリがあるものだから。気を付けないと駄目だよ、苦竹さん」
「うぅ。その話、まだ引っ張るんですね」
「元はといえば、大貴がノラリクラリと逃げ続けたから、詩織ちゃんにお鉢が回ったんじゃないの」
「そうだぞ、山内。苦竹を責めるな」
「分かったよ。でも、他人を泥鰌か鰻みたいに言わないで欲しいところだよ」
「わたしも、捕まえられないように警戒しますから」
「火炙りにされて、切り刻まれて、鍋や丼にされないうちにね。――考えたら、涎が出そう」
「たいそう、想像力の豊かなことで」
「今の時期は、松茸とか、鰈とか、どんな料理にでも使える食材が多いよね」
「松茸なら、炊き込みご飯に、お吸い物に、茶碗蒸し。鰈なら、煮付けに、あんかけ。ムニエルにもできますね」
「そのへんにしてくれ。俺まで空腹になりそうだ」
「それじゃあ、そろそろ報告に移るわね。あたしからは、塵も積もれば式の食費の節約術と、お菓子や飲み物の、普通とは違うデザインの珍しいパッケージに関する情報の二点よ。――今日はキングね」
「わたしからは、意外にもジャンク・フードが好きすぎる女優さんの情報と、最近、お子さんに恵まれたアイドルの情報の二点です。――わぁ。今日はジャックですか」
「僕からは、十月一日は眼鏡の日であり、ネクタイの日でもあるということで、顔の輪郭に合った眼鏡の選びかたと、ティー・ピー・オーに応じたネクタイの選びかたに関する情報、それから、読み始めると後を引く、入れ替わりをテーマにした漫画に関する情報の三点だよ。――やったね。エースだ」
「俺からは、肉体や精神に溜まったストレスを解消できるアイテムに関する情報と、エス・エヌ・エス疲れを逆手に取ったエス・エヌ・エスに関する情報、それから全国には無い、地方ならではのご当地情報の三点だ。――クイーンに間違いなし、と」
「そうしたら、今日は詩織ちゃんから、よろしくね」
「二回目でトップ・バッターですか? 引き直しましょうよ」
「ここは逃げちゃ駄目だよ、苦竹さん」




