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#054「牛歩」

「静かな幼稚園に対する賛否。主体性が重んじられて、好きなことを選べるようになると、考えて行動するようになって、騒がなくなるそうだけど」

「全体で一斉に同じことをさせられると、文句の一つも言いたくなりますよね」

「閑静な住環境が乱されるとして、保育所や幼稚園の建設を反対する街が増えているせいだろうな」

「小さい子ほど、直感で大人の意図を察知する能力に長けてるものね」

「それが自分の気に食わないと抗議する訳だけど」

「反発する理由が無くなれば、大人しくなるんですね」

「すべての欲求を満たすのは不可能だろうけど、ある程度まで好きに出来たら、少しぐらいは我慢する気になるわね」

「変に空気を読んで感情を抑圧してしまって、ストレスが溜まらないか不安だな」

「教育効果は、長期的に観察しないと分からないものね」

「それに、いつの、何が、どの時点で影響を及ぼすかは、大人になるまで分からないものだと思います」

「そうね。同じことは、健康法にも言えそうね」

「医師の忠告を額面通り受け取って、やりたいことや好きなものを我慢し続けたストレスで病気になったら、本末転倒だもんな」

「生活習慣は、なかなか、すぐには変えられないものだよね。――日本発祥のソロ・ウェディングが、海外から概ね好評価されて、大きな反響を呼んでるそうだよ」

「結婚式や披露宴に対するコダワリは、新郎より新婦のほうが強いですものね」

「一度はウェディング・ドレスを着たいものなのか?」

「誰だってそうだと思うわ。乙女の憧れよ」

「お相手がいなくても良いものなの?」

「もちろん、素敵なヒトが居るに越したことはないですよ。でも、三十代になっても見つかる素振りが無さそうなら、二十代のうちに一人で挙げたくなるでしょうね」

「その場合、指輪はどうするんだ?」

「あら。今は結婚して無くても指輪をしてるものよ」

「余計な心配をされないようにとか、世間体を気にしてとか、理由は様々あるみたいだよ」

「相手が独身か既婚かで態度を豹変させる人間は、少なくないですものね」

「へぇ、そうなのか。でも、何とも世知辛い話だな」

「完成した理想を追い求めすぎて、原石を見逃さないようにしたいところね」

「炭にするのも、ダイヤにするのも、相性次第だろうね。――それじゃあ、報告を始めようか」

「はい。そのトランプは何ですか?」

「発表順を決めるのに使ってて、三人の時はジャック、クイーン、キングだったんだけど」

「今日からは四枚だな。どのカードを使ったんだ、山内?」

「四枚目にエースを入れてあるんだ。それを引いた人が大トリってことで」

「誰から引きますか?」

「あたしは二番目が良い。クイーンを当てたいもの」

「三択なら当てられるのか、黛?」

「何番目に引いても、確率は同じだよ。ここは、苦竹さんから引いてもらおう」

「わたしからですか?」

「それが良いわね。その次は、あたしだから」

「わかった。俺は残り物で構わない」

「三番目は僕だね。どうぞ、苦竹さん。ビギナーズ・ラックがありますように」

「そうですね。これにします」


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