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#053「瀬々の網代木」

「朝ぼらけ、宇治の川霧、たえだえに」

「そっちの下の句は何だったかしら? 有明の月のほうは覚えてるんだけど。――あっ、翔。お帰り」

「ただいま。何を食べてるんだ?」

「お帰り、五十嵐くん。――今年は、ちゃんと案内放送が流せたね」

「リンゴとパイナップルよ。――昨年は、うまくいかなかったのよねぇ」

「缶詰じゃなくて、生なんだな。――放送事故が起きなくて、ひと安心だ」

「斎藤先生からの差し入れ。疲れが取れる上に、美容と健康にも効果があるんだって」

「まだ食べてないのは翔だけよ。でも、早い者勝ちだから」

「そうかい、そうかい。食べ過ぎて舌が痺れても知らないぞ、黛」

「その忠告は、もう少し早く言うべきだったかな。はい、爪楊枝」

「ちょっと、大貴。言わなくても良いじゃない」

「遅かったか。どうも。――水素発生器に、自作シー・ディー」

「有名人の引き出物だね」

「食べ物や飲み物なら嬉しいけど、陶磁器やグラスや時計をもらってもねぇ」

「定番だが、持て余してしまうよな」

「形の残るものは、扱いに困るよね」

「捨てるに捨てられないし、使うに使えないもの」

「結局、リサイクル・ショップに行き着くんだよな」

「売れるのかな?」

「欲しい人がいるとは思えないけど」

「物好きな収集家がいるかもしれないぞ? 蓼食う虫も何とやらだ。――ブラウンとグレーでコーディネート」

「日が短くなって朝夕がグッと冷えるようになったから、セーターやジャケットを出したんだけどさ。秋冬物は虫に食われやすいから、お手入れに困るよね」

「ニット類とかコートとかは、汚れても水洗いできないものね」

「そのせいか、紺とか黒とか、汚れが目立たない色を選んでしまうんだよな。――映画のヒットで、少なくとも五百億円規模の経済効果」

「日本の映像技術は、世界でも高評価されてるよね」

「目や耳に強いインパクトが残る動画も多いわよね」

「脳内で無限ループしてしまって、集中できないときがあるよな。――スウェーデン発祥の無料音楽アプリケーションが、ついに日本に上陸」

「待ってましたって感じだよね」

「遅すぎたくらいよね」

「日本独特の習慣や法規制のせいで、海外より遅れてリリースされることがよくあるよな。――作詞家で、アイドル・グループのプロデュースしたり専門学校の講師を勤めたりしてるあのオジサンが、今度は劇団を立ち上げるみたいだな」

「行動が読めないヒット・メーカーだよね。今度は何を企んでるんだろう?」

「各地の四十八人組は、もう良いのかしら?」

「後進に譲るそうだ。未知の才能を発見できないのか、いま以上の発展が望めなくなったのか、それとも単純に飽きたのか。――二〇二五年に大阪で万国博覧会を開催しようという動きが、本格化してるみたいだ」

「缶コーヒー、ヨーグルト、インク入りスタンプ。東洋初の万国博覧会で、日本に広まったものは多いよね」

「でも、同じことをやったからって、同じような効果が得られる訳じゃないわ」

「いつも柳の下に泥鰌は居る訳じゃないからな。海洋博、科学博、花博、それから愛知。その後の博覧会は、大成功とは言い難い問題が残される結果に終わっている」

「夢よ、もう一度と思う気持ちは分かるんだけど、過去の成功体験に縋ってばかりではいけないよね」

「反省点を活かさないと駄目ね」

「東京五輪にしても、同じことが言えそうだな。世界各地の五輪会場が廃墟と化してるそうだ」

「ロンドンは、有効活用してるみたいだけどね。大会後のことも考慮して建設しないと、負の遺産になってしまうよ」

「会期が終わったあとのことは知らない、という無責任なことはしないで欲しいわね」

「捨て鉢な人間ほど、社会の荷物になる存在はないからな」

「自分のモノにせよ、他人のモノにせよ」

「命は大事にしないとね」

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