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#048「下駄箱」

「害虫退治が、ジー・メン作戦ですか。面白いネーミングですね」

「家が古いせいか、奴と頻繁に遭遇してしまうんだ。こうでもして自分に発破を掛けないと、気力が失せるから」

「奮い立つには、気持ちを盛り上げる何かが必要ですよね。――そういえば、何かと五十嵐さんのお宅に集まってますよね?」

「俺の家は母親が常時在宅してるし、通いやすい位置にあるせいで、溜まり場扱いされるんだ。苦竹も、家を便利屋扱いされないようにしろよ」

「はい、心得ておきます。それにしても、お互いの家を行き来するくらい、先輩方三人は仲良しなんですね」

「グダグダと集まっては、馬鹿なことばっかりしてるけどな」

「いがみ合ったりするより、ずっと良いと思いますよ」

「たとえ外の世間が物騒になっても、クラブ内は平和を保ちたいものだ」

「揉め事が起きないのは、三人のバランスが良いからなんでしょうね」

「上手い具合に、アクセルとブレーキになってるからな」

「バレー部は、わがままな一人が部長になって、イエス・マンばかりを従えてる構造になってしまいましたから」

「腰巾着に囲まれてると、ガキ大将は、自分が有能だと錯覚してしまうものだからな。役割は、その人間の性格を考えた上で決めないといけない。まぁ、細心の注意を払っていても、いざ役職や権威を与えると豹変する人間は少なくない」

「本当に、その通りなんです。新しく部長になる前の先輩は、謙虚で優しい人柄だったんですけどねぇ」

「何がどう作用するかは、反応させてみるまで分からないものだ」

「そう言うと、景気の話みたいですね」

「対策がプラス効果を発揮するかどうかは、施行してみるまで分からない」

「二〇二〇年の東京五輪に向けて、いろいろ目まぐるしく動いてますけど」

「景気刺激策は起爆剤だからな。栄養飲料と同じで、のちのちに必ず副作用があるものだ」

「山内さんも、記事のレクチャーのときに同じことを言ってたような」

「あれ? この話は山内の受け売りだったか。それとも、先輩の話だったか。はて?」

「五十嵐さんが共感したのなら、五十嵐さんの意見ってことにしておきますよ?」

「共感はしてるが、それで良いのだろうか?」

「わたしは、悪くないと思いますけど?」

「どの道、今となっては調べようが無いからなぁ」

「記録は残ってるとも思えませんね」

「仮に残されてあったとしても、あの書類の腐海を精査する気は、俺には起きない」

「完全に死蔵品扱いですね」

「電子情報だって、いつかは使われなくなる。インター・ネット、携帯端末、エス・エヌ・エス。これらが、みんな過去の遺物になるんだ。――日が暮れるまで居残らせて済まなかったな」

「長い宇宙の歴史の中で、ヒトという生き物が地表を支配するようになったは、ホンの一瞬前なのに。――良いんです。祖父には遅くなると伝えてますし、一人で帰るわけではありませんから」

「薄暗がりに一人で行動していたら犯罪者に狙われる。送るのは当然だ。――祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」

「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」

「驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」

「猛き者も遂には滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ」

「祇園精舎がどこにあるかは知ってるか、苦竹?」

「京都ではないんですか?」

「一年前の俺と同じ勘違いだな。インドにあるそうだ。詳しくは、明日にでも山内に聞いてくれ」


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