#046「ガス抜きとポンプ」
「台風十七号の上陸か」
「六月まで全然発生しなかったのに、急に連続して発生するようになったわよね」
「これからは、大型化に注意が必要だって呼びかけてるよね」
「今後の天気の移り変わりに着目しないといけないな」
「秋の天気は、先が読めないのよねぇ。――過去に実写化の話が持ち上がったまま、お蔵入りした日本のアニメ、か」
「全米国民に届ける前に頓挫したパターンだね」
「海外で映画化するって噂は多いが、実現した例は少ないよな」
「ハードルが高いのね」
「日本で制作するほうが、まだハードルが低いかもよ。――母国の大学に入れず、日本の大学に留学する外国人が増えている」
「入りやすさの割りに、ブランド力が高いからなぁ」
「でも、知名度は限定的よ?」
「国内では有名でも、他国では殆ど知られていない大学は多いよね」
「学問の標準言語が英語である限り、英語で講義をしてる大学でもなければ、全世界で知られないんだろう。――国民投票の結果次第で、イタリアがイー・ユーを離脱することになるかもしれないらしい」
「英国に次いで離脱したら、いよいよ解散の危機が現実味を帯びるわね」
「ドイツとフランスが、どう受け止めるかが鍵だね」
「これは、戦後のヨーロッパ統一への動きに対する反動なのかもな」
「枠の中に押し込められてたバネが、自由を求めて飛び出し始めたのよ」
「その比喩は、どうなんだろう?」
「大所帯になって息苦しくなってたのは事実だと思うが?」
「共存するには、よほど上手にコミュニケーションしていかないと駄目なのよ。――ステレオ・タイプの幻影化。そこそこの短大を出て、程々の会社に勤めて、手頃な相手を見つけて、出産して育児して。そんな生活が、現代では珍しくなっている」
「オートメーション化や情報化で社員同士の交流が減って、社内結婚や寿退社する割合が減ってるのかもしれないね」
「一人っ子が増え、技術革新で一人暮らしが快適になった分、誰かと一緒にいるのが煩わしく感じる人間も増えてるんだろうな。――浮気チェックのポイント。こんな変化があったら、誰か知らない人と付き合ってるかも」
「冷蔵庫の中身、部屋の片づきかたと掃除の行き届き具合、それから食器類や消耗品の置き場や量が変わってたら、誰か新しい交友関係がある可能性が濃厚。――なるほど。たしかに、普段は散らかってる部屋が小綺麗になってたら、誰かが掃除と整理整頓をしたと思うわね」
「散らかった部屋の片付けに、飾り気の無いシンプルな収納ボックスがオススメだよ」
「突然コマーシャルするなよ、山内」
「こうして見ても。大貴の家は、広い割りに物が少ないわよね。――有名一流ホテルから食べ放題専門店まで、スイーツ・バイキング特集」
「極力、いま手元にあるもので済ませるように習慣付けられてるからね。――美味しそうだね」
「……痩せの大食い」
「何か言った、翔?」
「それは疑問文? それとも反語?」
「どっちにしても黙秘させてもらおう」
「聞こえなかったのよ。翔は何て言ったの、大貴?」
「部内平和のために、僕も緘口するね。――何をモデルにしたのか判別不能なモニュメントがある公園。ウゥン。これは山羊なのかな?」
「でも顔の周りには、鬣っぽいものがあるぞ?」
「それ以前に、風化が酷すぎるわ」
「前衛芸術は、凡人には理解できないものだよね」
「奇を衒ったアーティストは多いよな」
「アバンギャルドこそが芸術、みたいな風潮ね。――そうだ。このグループ、知ってる?」
「変わった名前のバンドだね」
「邦楽か? 洋楽か?」
「邦楽よ。はじめは、手に取ったり他人に伝えたりするのに抵抗があるけど、一度聴くと、もう一度聴きたくなって、何度も聴くと、他の曲も知りたくなる魅力があるの」
「一度覚えたら、しばらく忘れられそうにないバンド名だね」
「中毒性が高そうだな」
「何年かしたら、一大ブレイクを果たしてるかもしれないわよ?」
「将来のことは、そのときになるまで分からないものだけどね。――有名一流企業の創業者に有名映画俳優。今年で生誕から百年を迎える偉人の特集」
「百年前というと、日本は大正時代だな」
「明治ハイカラ、大正ロマン、昭和レトロ、平成モダン」
「僕たちは、百年後に何を遺せるかなぁ」
「夕焼ーけ、小焼けぇの、赤とーんーぼぉ」
「負われーて、見たのぉは、いつのぉ日ぃかぁ」
「もうすぐパンザマストの時間だね。曲は違うけど」




