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#044「スーパー」

「メールにファイルを添付するより、ユー・エス・ビー・メモリを使うほうが多いみたいね」

「封筒に入れて郵便受けに投函したり、机の上に無造作に置いたりして、何気なく中身をチェックしたところで感染するんだよね」

「悪質なハッカーの攻撃による情報流出も跡を絶たない」

「電子データの取り扱いには、充分に気をつけないとね」

「感染経路に近寄らないことが一番だな」

「ウイルスをもらわないようにしないとね」

「どこに菌が潜んでるか分からないから怖いところだけどね。――仙台でカエンタケが確認されたことで、見掛けても絶対に触らないように警告してる」

「行楽シーズンで、山に入る人間が増える時期だからな」

「茸の見分けは、専門家でも間違えるくらい難しいもの。素人が安易に採集するべきではないわ」

「毒々しい色や、物々しい形をしてるとは限らないからね」

「そういえば、官公庁や大手企業は白銀週間なんだよな?」

「そうよ。おかげで公共交通機関が空いてるの」

「ゆったり座れるから良いよね」

「五月と黄金週間と違って、ただの三連休でしかない場合が多い休みだよな」

「普段から、あれくらいの利用率なら良いのにね」

「大体、集団で短時間に移動するから、どこかで無理が出てくるんだ」

「遅延によって損失が発生したとしても、鉄道会社に損害賠償する法的責任は無いんだけどねぇ」

「運転手も、車掌も、駅員も、みんな謝りすぎよ」

「腰の低さから、図に乗る人間も少なくないよな」

「相手より立場が上だと判断したた時点で、いきなり手の平を返すんだよね」

「権威や発言力をチラつかせて言うことを聞かせることほど、嫌らしいことはないわ」

「暴言や悪態を吐く会社役員に」

「自慢や説教をするタクシー運転手」

「その立場の人間がみんなそうだとは言わないけど、中身がお子様のまま図体だけが大きくなったミットモナイ社会人が無視できない人数存在することは、紛れもない事実だと思うわ。――あっ」

「飲んだり食べたり動いたりすれば、音が鳴るのは当たり前なんだから、恥ずかしがること無かろうに」

「そういう問題じゃないんだよ、五十嵐くん」

「周囲が静かだと、ちょっとした物音でも響くものね」

「住宅街だし、遥は母親と買い物に出てるからな。――十月の改変で、テレビのココが変わる、か」

「この秋から朝の報道番組の顔ぶれが若返ってるよね」

「テレビに限らず、映画、ドラマ、アニメ。色んな方面でイケメンが活躍してるわよね」

「映像の世界では、美男美女が一番なんだろうな」

「ひと昔前は、性格や素行が悪いテレビ・タレントが多かったらしいんだけど」

「最近は、品行方正なアイドルが多いわよね」

「陰で何かやらかしたら、エス・エヌ・エスに投稿されるようになったからかもしれないけどな。――人気アイドルが女装した家政夫ドラマも、話題になってるみたいだな」

「紛らわしいタイトルだって、おばあちゃんは言ってたけどね」

「フの字が違うし、名前も違うわ」

「原作は松本清張じゃないって言ってあげないとな。――誇大広告だと、景品表示法に引っ掛かる」

「医薬品じゃないんだから。あっ、そうそう。基準に満たない商品を製造販売したり、報告を怠ったりする悪質性の高さから、特定保健用食品の資格を取り消された商品があるんだよ。これなんだけど」

「血糖値の上昇を緩やかにする効果があるとか」

「脂肪を燃焼させる効果があるとかいう宣伝をしてる商品ね」

「そもそも、医学的な根拠は無いらしいよ。プラセボ効果っていうんだけど」

「健康に気遣えるのは、裕福な人間だけみたいだがな。――生活保護費を受給している男性の三割以上がメタボリック・シンドロームで、女性も非受給者の三倍近くが、それに該当するそうだ」

「調査した役所は、食事が安くて高カロリーのジャンク・フードに偏っているとか、健康への関心が低いとか言うけど」

「関心があっても、生活保護費で割高な自然食品を買い続けることは難しいよ」

「企業として生き残るために、薄利多売やコスト削減といった戦略を採るのは止むを得ない面があるのかもしれないが、安かろう悪かろうも、考え物だな」

「安全や安心のための費用は、目に見えにくい」

「割安な未承認品が売れる訳だ。強度不足のチャイルド・シートや自転車が流通して、深刻な問題になってる」

「ネイルとかボディー・ミストとかアクセサリーとか、廉価品とは思えないクオリティーの高さを誇る商品も多いけど」

「有害物質や事故に繋がるような欠陥がある商品もあるのよね」

「判明次第、直ちに自主回収する企業は、まだ良心的だが」

「被害者が出てから、隠蔽してたことが明るみになるケースもあるよね」

「早い段階で決断しないから、傷口が広く深くなってしまうんだ。――大江山、生野の道の、遠ければ」

「百人一首ね。下の句は?」

「まだ文も見ず、天橋立。和泉式部の娘の、小式部内侍の和歌だよ」

「股のぞきによる視覚効果の研究に、知覚賞が贈られたそうだ」

「瑣末なことを真面目に研究する人間がいるものね」

「過去には、真正粘菌の交通計画、話した言葉を少し遅れて聞かせることで黙らせる音響、玉葱と涙の関係性の化学、バナナの皮で滑って転ぶ古典的ギャグの物理学なんかがあったんだよ」

「たしか、ワサビを使った警報を考えた研究者もいたよな?」

「そうなの、大貴?」

「いたよ。目の付け所が違うよね」

「よくもまぁ、そういうことを思い付くものね。――あの長編アニメーション映画の興行収入が、いよいよ百億円超えたわね」

「一方で、舞台とされている飛騨には映画館がないそうだ」

「上映会も、交渉が難航しているそうだよ」

「せっかく大ヒットしてるのに、残念な話ね。――でも、百億円って言われてもピンと来ないわ」

「それだけの大金で、何が買えるんだろうなぁ」

「三千円あれば月の土地が買える。三万円あれば星に好きな名前を付けられる。三千万円あれば街が買える。三億円あれば古城が買える」

「安すぎない?」

「それ以前に、売り出されてるものなのか? そうだとしても、もっと値が張りそうなものだが」

「絵空事じゃないよ。本当に商品化されてるんだから」

「大貴を疑う訳じゃないのよ。――隣の部屋が賑やかね」

「帰って来たみたいだな」


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