#043「マイ・ペース」
「賃金は前払いなら労働者が有利で、後払いなら使用者が優位なんですね」
「そうなんだ。でも、まずは最低限の暮らしが確保できないとね。仕事を探すのは、それからだよ」
「なるほど。勉強になります」
「まぁ、ほとんどは、昨年に引退した先輩の受け売りなんだけどね」
「情報は集めるだけではなくて、後々関連する記事が出たときのために、ポイントを覚えておく必要があるんですよね?」
「覚えておくだけなら、デジタル・デバイスのほうが優秀だよ。記憶媒体って言うくらいだから」
「そうですね。どう組み合わせるかが、人間としての腕の見せ所ですね。――クシュン」
「寒いね。ドアを閉めようか?」
「いえ。カーディガンがありますから」
「そう言わずに。僕も冷えたから閉めるよ。――それじゃあ、続けるね。今度は、この四つの記事について」
「その一。日本で学歴の最高峰といわれる大学も、アジアでは四位。有名人を両親に持ち、その二.一流大学を卒業したサラブレッド俳優の、その変わり者ぶりに拍車が掛かっている。その三。大御所芸能人が情熱を注いだ、定番の被り物や往年のギャグを封印して台詞一つにまでトコトン現実味を追求したコント。その四。トリオ芸人の一人が、身近に存在すると共感する架空のキャラクターになりきったフリー・ペーパー」
「繋がりがあるんだけど、どういう関係性があるか見えるかな?」
「えぇっと。その一とその二は、大学と学歴の関係。その二とその三は、芸能界の関係。その三とその四は、お笑い関係?」
「そうそう。筋が良いね」
「あんまり褒めないでください。――繋がりがある場合は、それを活かした順番で紹介していくと、話がスムーズに進むんですよね?」
「照れること無いのに。――飲み込みが早くて助かるよ」
「調子に乗りますから、その辺で」
「羽目を外したところが見てみたいけどなぁ。――あ! もう、こんな時間」
「下校時間ですね」
「食べる時間が無くなっちゃったね。持って帰ってよ」
「えっ。悪いですよ」
「いいから、いいから。余り物で申し訳ないけど」
「充分ですよ。ありがとうございます」
「あと、塗る物も欲しいよね。ライ麦ラスクとグラハム・クラッカーがあるんだけど、どっちが好き?」
「どちらも馴染みが無いので、何とも。あっ、いえ、その」
「それじゃあ、半分ずつ入れておくね」
「良いんでしょうか。本当に」
「遠慮すること無いよ。遅くまで付き合わせちゃったから」
「そうですか。いただきます」
「どうぞ。食べたら、感想を聞かせてね」




