#037「明治、大正、昭和」
「傍目では、ごく普通の生活を送っているようでも、実は貧困に陥ってる家庭が増えていることが、少し前から大きな社会問題になってるよね」
「相対的貧困という奴だな。ある高校生が取り沙汰されてたな」
「まとまったお金を用意できないことが理由なんだけど、そもそも一度に支払うべきお金が高すぎることに、どうして誰も疑問を感じないのかしら?」
「支払うより他に、有効な選択肢が無いからじゃないかな。――教育熱心なのに、高い授業料が払えないから進学を諦める親子」
「授業を教えること以外に、添削課題やら事務書類やら、保護者への説明に部活動の指導まで一人でやらなければいけない教師」
「学校が多すぎるのか、先生が少なすぎるのか」
「両方だと思うよ。海外からも、ただちに改善すべきだって指摘されてる」
「要求内容が増え、要求基準が高まる一方だ」
「盗撮や猥褻行為に及ぶのは駄目だけど、ストレスでおかしくなる先生が増えるのも無理ないわね」
「その穴埋めで、同じ学校で働く先生の負担が増える」
「悪循環だな」
「教育に対して、国はもっと真剣に考えるべきだわ。この負のスパイラルを断ち切って変えていかなきゃ」
「国を治めることの難しさを学ぶのに、ちょうど良い漫画があるんだ。いくつか紹介しようか?」
「黛を政治家にさせる気か、山内?」
「残念だけど、先生になる気はないわ。――四年後は、いよいよ東京大会ね」
「閉会式の引継ぎセレモニーは、見応えがあったよね」
「演出が素晴らしかった」
「八月の五輪と、甲乙付け難いわね」
「あれから、もう一ヶ月経つんだね」
「すっかり日が短くなったな」
「年寄り臭いことを言うわね。そうそう。昨日は敬老の日だったけど、大貴は何かお祝いしたの?」
「まだ老人じゃないし、敬われるような人間でもないって言われるだけだから、特別なことは何もしてないよ」
「半分、照れ隠しなんじゃないのか?」
「恥ずかしがること無いのに」
「そういうのではないと思う。たぶん」
「気を遣わないと、配慮が足りないと言うし」
「特別扱いすると、年寄り扱いするなと言うのよね。――報告するわね。あたしからは、クリーム・チーズを使ったレシピ情報と、鮭や秋刀魚が値上がりしているという情報の二点よ」
「キングか。――乱獲や海水温の変化で、漁に出ても目当ての魚が居ないらしいな」
「魚が美味しい季節なのにね。――僕からは、秋の夜長に読みたい名作小説、風呂場で使える入浴アイテム、それからスマート・フォンと連動した家電。以上の三点を紹介するよ」
「ジャックね。――長風呂して、そのまま夜更かししてしまいそうな情報ね」
「ますます、朝の布団から出られなくなりそうだな。――俺からは、レア・モンスター目当てのスマートフォン・ゲーマーが、マナーの悪さから立ち入り禁止になったり、ルール違反から警察の出動する事態になったりしているという情報、スマートフォンやロボットを使って、遠隔での施術や治療の実証実験が進められているという情報の二点だ」
「残りは、クイーンでした。――先端技術の光と影だね」
「それじゃあ、今日は大貴からよろしくね」
「三人で放送するのも、九月いっぱいなんだよな」
「十月からは、四人になるんだよね」
「放送時間も五分延長されるわ」
「文化祭の準備も本格化するだろうし、ますます忙しくなりそうだ」




