#034「微温湯」
「南瓜、薩摩芋、抹茶」
「パンプキン、スイート・ポテト、グリーン・ティー」
「ハロウィン・カラーが、街中に溢れてるわよね」
「食べ物だけじゃなくて、化粧品や医薬品の香り付けにまで利用されてる。気が早いことだ」
「パーティー用の仮装グッズも増えてるよね。来月末なのに」
「そうでもないわよ。本番前にメイクの練習をする人も、少なくないもの」
「勢いでタトゥーを彫ったり、ピアス穴を開けたりする人間は、理解できないけどな」
「身体髪膚、これを父母に受く。あえて毀傷せざるは、孝の始めなりってところかな? 身体は親から恵まれたものだから、傷つけずに大事にすることが孝行の始まりだって意味だけど」
「古臭い道徳観ね。ファッションに対して、無理解にも程があるわ」
「悪かったな。ビューラーだの、コンシーラーだの、何が何やら」
「メンズ向けのメイク用品もあるよね」
「美意識に性別は無いもの。メイクしたり、無駄毛処理をしたり、食べ物や着る物に気を遣ったり。要は、キレイでいたいという気持ち次第よ」
「俺は、中身で勝負する。どれだけ小細工を弄しても、イケメンには敵わない」
「イケメンも、二次元に負けるらしいけどね。――でもさ、五十嵐くん。財布や靴がボロボロの人や流行に付和雷同する人は、一緒に仕事をしたくないと思われて出世できないらしいよ。逆に、時計は時間が判れば良いし、携帯電話は通話できれば良いし、自動車は移動できれば良いと考えて、古い物を使い続ける人が出世するらしい」
「よれよれのスーツを着てる人に限って、高そうな腕時計をしてたりするのよねぇ」
「あまつさえ、それを自慢する傾向もある。――自己投資をしっかりして、余計な支出は抑えることが大切なんだな」
「まぁ、こうして情報交換することも、流行に乗ることになるのかもしれないけどね。――そろそろ、報告の時間かな」
「あたしからは、フレンチ・トーストやキッシュ、プリンや茶碗蒸しが、マグ・カップと電子レンジを使うことで簡単に作れるというレシピ情報と、テンポの遅い曲を聴いたり、小さめの食器を使ったり、時々身体のラインに沿った服を着たり、心理学を応用したダイエット法に関する情報の二点よ。――今日は、ジャックね」
「俺からは、有名人が下積み時代に働いていた意外なアルバイト先に関する特集情報と、夏のボーナスが、十年ほど前に次ぐ高水準を記録したという統計情報の二点だ。――また、キングか」
「僕からは、メルヘンだったり、ロマンチックだったり、絵になる風景が撮影できる穴場スポットのお出掛け情報、南米で六千年前のインディコ染めの衣類が見つかったという情報の二点だよ。――残りは、クイーンでしたっと」
「あっ、そうだ。このあと、少し残ってね」
「ん? 俺は構わないが、何か、連休前にやっておくことでもあるのか?」
「僕も残るよ。台風が気になるところだけど」
「裕子さんから、お知らせがあるらしいのよ。放送が終わったあとに、ここに来るそうよ」
「どんな爆弾発言が飛び出すのやら」
「内容が予測できないね」
「お楽しみに、と言われてもねぇ」




