#027「鼠と狸の」
「街はオレンジになってきたわね」
「紅葉と公孫樹と」
「南瓜のランタンだな」
「ブラウン系のファッションも増えてきたわ」
「クリーニングのタグが付いたままだったり、防虫剤の臭いがしたり」
「何を誤魔化すためかしらないが、香水を掛けすぎた中高年が増える時期だな」
「小瓶を選んで店頭で試すまでは良いんだけど、買ったあとに、いざ付けて出掛けてみたら、アレッと思うニオイになるものなのよ」
「時間が経つと、成分が変化するものだからね」
「どんな化学変化が起きてるか知らないけどな。――被災地で長期化する避難生活、か」
「豪雨、津波、台風、地震、感染症」
「七十億人以上の人間が日夜忙しなく動き回っていれば、異常気象や病気の一つも起きるだろう」
「それなのに少子化を食い止めようとしてるんだから、地球にとったら堪らないわよね。
「温暖化の影響で、季節外れのインフルエンザが蔓延してるらしいよ」
「そうらしいな。学級閉鎖が相次いでいるとか」
「小学校の保健便りでも、正しい手洗い、うがいの仕方の記事が載ってたわ――ンンッ」
「ワッ。粉だらけ」
「ボロボロと零してからに、まったく。世話が焼ける子だ」
「翔は、あたしの母親か!」
「小舅染みてるから、あんまり言いたくないけど、一度に口に詰め込み過ぎだと思うなぁ」
「ほら、見ろ。育ちが悪いと思われるから、直せよ」
「もぅ。こうなったら、豪快さを売りにするわ」
「発想の転換だね。悪くないかもしれない」
「良くない。ただの開き直りじゃないか」
「細かいことを気にしてると、禿げるわよ。――関ヶ原の戦いって、半日で終わったのね」
「そうだよ。知らなかった?」
「前近代の戦いは、短期的な局地戦が大半だ。当時の庶民にしてみたら、何か知らないが遠くでガヤガヤ騒がしくやってるなぁ、程度の出来事でしかなかっただろうさ」
「天下分け目の戦いっていうくらいだから、半年くらい争ってたのかと思ってたのに」
「授業で時間を掛けて教えるからといって、それだけ長期間にわたっていたという訳ではないよ。――そろそろ、時間だね」
「二分前だな。準備を始めよう」




