#026「グウの音」
「朝夕が冷えるからニットを着てきたんだけど、暑くて堪らないわ」
「気温は下がって少し涼しくなったが、湿度は高いままだな」
「ムシムシするよね。――五年ぶりのラニーニャ現象の影響で、今年の秋は暑さが続くらしいよ」
「それじゃあ、今年の冬は暖かくなるの?」
「そうそう単純なものでは無いぞ、黛」
「さまざまな面から分析されてるけど、これから気温がどうなるかは、冬になってみないと分からないというのが本音みたい。科学者は、予知能力者じゃないからねぇ」
「何だぁ。予報として、ぜんぜん当てにならないじゃない」
「何とかと秋の空って言うじゃないか。――フゥン。キャスト予想が盛り上がってるようだな」
「あっ、このマンガも、今度ドラマ化されるんだ。最近、アラ・サー女子が主役の話が多いね」
「三十歳前後までに何をしたかで、その後の人生が大きく左右される風潮があるからじゃないかしら?」
「身体面でも、精神面でも、社会面でも、重要な分岐点に当たる年齢らしいからなぁ」
「それから、ラブ・ホテルの舞台裏を描いたこのマンガも、実写化されるみたいだよ」
「何だか、修羅場の連続する作品になりそうね」
「ホテルといえば、京都のホテルでは、外国人来日者向けの改装が進んでるらしい」
「小売業でも、外国語に堪能なスタッフを増やしてるよね」
「東京五輪の開催に合わせて、観戦客の取り合いになりそうね」
「大規模な経済効果が期待できそうだな。そのあとに燃え尽きなければ良いが」
「安心して招き入れるためにも、災害復旧や外交関係の改善を急いで欲しいところだよね。そうそう。四月の地震で販売休止していた名菓が、再び店頭に並ぶようになったそうだよ」
「熊本城の石垣を模した構造の、あの和菓子ね」
「復興へ向けて、一歩前進だな」
「スイーツでは他にも、高級なショート・ケーキの特集記事もあったよ。ほら」
「美味しそうね。でも、値段が四桁だから、気軽には手を出せないわね。――あっ」
「腹の虫は正直だな」
「今のはデリカシーに欠ける発言だよ、五十嵐くん」
「平成生まれの昭和男に、デリカシーは理解できないわ。関白亭主になって、不倫されて、熟年離婚されてしまえ!」
「嫌な未来予想をするな、黛。縁起でもない」
「演技といえば、文化祭の劇で代役を頼まれたんだってね」
「そうなのよ。クラブで案内放送があるから、クラスのほうは遠慮したかったんだけど、入念に外堀を埋められちゃってたみたいで、断れなかったのよ」
「黛が言い返せないほどだとすると、陰で着々と交代話が進められてたんだろうな。まっ、選ばれたからには、頑張れよ」
「練習が忙しかったら、無理してクラブに顔を出さなくても良いからね」
「ありがとう」
「でも、そうなると、なかなか三人揃わないことになりそうだな。――最近、肩の調子が悪いから、重いものを持ちたくないと思っていたところではあったが」
「部室の片付けは、先送りだね。――あとで、オススメのストレッチを教えてあげるよ」




