#022「ざっくりとした」
「五十嵐くんは、将棋と空手」
「黛が、水泳で」
「大貴は、ピアノと書道か」
「オーソドックスだね」
「どれも習い事の定番だな。――おい、黛。適当に放置しておくな。どっちが俺のか分からなくなるじゃないか。ガサツだなぁ」
「五月蝿いわね。そうやって、細かいことを気にして他人に注意してばかりいると、交友関係が広がらないわよ?」
「二人とも、持ち物に名前を書こうよ」
「この歳で記名は、恥ずかしいって。――五輪に引き続いて、リオ大会ではメダルの獲得が続いてるみたいだな」
「車椅子にしても、義手や義足にしても、計算された構造だと感心してるわ。どの選手も健常者と変わらないか、それ以上の活躍をしてるもの」
「よく言われる例えだけどさ。僕が今、こうして掛けてる眼鏡は、僕たちが生まれる前は、視力矯正という実用性を重視した無骨な代物で、掛けてるだけでも揶揄や虐めの対象にされたらしいんだけど、今はファッションの一部として伊達眼鏡を掛ける人が現れるようにまでなったでしょう? だから、現代では障害とされてることだって、将来の時点では障害とは思われなくなっているかもしれないよね」
「色んなことが、どんどん変わっていくものだな。――八月の東尋坊での自殺者数がゼロ、か。あのゲームが抑止効果になったと考えられてるらしい」
「ブームが下火になったと思ったら、また新たに機能が増えるみたいだし、まだまだ続きそうね」
「ゲームというものが、家の中で長時間篭ってクリアするものから、外に出て色んな人と交流しながらするものになりそうだね。――このページを見てよ、五十嵐くん」
「克服しなきゃいけない問題は様々あるが、良い方向に動いてるよな。――どれ、どれ。ダブル主演に、新ドラマに、フムフム」
「ちょっと。二人だけで読まないで、あたしにも教えなさいよ」
「ごめん、ごめん。この十月の番組改編で、六、七十代の大物司会者から、四十代の司会者に世代交代するみたいだよ」
「やっと刷新されたって感じだな」
「政治家も刷新されれば良いのになぁ」
「高齢化を憂慮してる内閣が、世界的に見ても、著しく高齢化してるじゃないかって話だよね。――フゥン。財務大臣は、連続在任期間が歴代一位になったんだ」
「あの、悪代官みたいな顔の大臣か。首相在任中は、定額給付金がバラマキだとか、漢字の読み間違えやら、即席麺の値段を知らないやらでマス・コミから叩かれまくってた人物だな」
「トップには向いてなかったみたいだけど、大臣としては有能なのね」
「伊達に経済学部を出てないってところだね。そうだ。終わったら、久々に焼き鳥を食べに行かない?」
「駅前の、ブルジョワ地鶏か?」
「国産食材が一皿二百八十円で堪能できるから、お得よね」
「単価が安いから、ついつい財布の紐が緩くなってしまうんだよね」
「注文しすぎないようにしないとな。食べ過ぎるなよ、黛」
「ひとこと余計よ、翔」
「言ってはいけないことを言ってしまう反面で、言わなきゃいけないことを言えない面もあるんだよねぇ、五十嵐くん」
「山内。その話は、もう済んだだろうが」
「ナニナニ。どういう話?」
「フフッ。実はねぇ」
「ワァー、ワァー、ワァー。もう、放送を始めるぞ」




