#021「シスターとブラザー」
「秋の花粉症が猛威を揮ってるとは言ってたけど、こうも身近に被害者が出るとはねぇ」
「春に飛散するスギやヒノキの花粉も厄介だけど、秋のブタクサ花粉も厄介だよね」
「まっ、体力自慢の翔のことだから、一日ゆっくり休めば治るでしょう」
「そろそろ部室を片付けようと思ってたけど、また今度にしないとね」
「何で、ここまで物が増殖してしまうのかしら」
「まるで、その辺に散らばってる書類が、夜な夜な分裂するかのように言ってるけど、原因は紛れも無く僕たち三人だからね?」
「分かってるわよ。でも、これだけトッ散らかってると現実逃避したくなるじゃない」
「収納スペースが出来ると、それに安心して物を増やしてしまうから、ここに収まるように必要なものだけを選ぶことから始めないとね」
「ところで。話は変わるんだけど、昨日は二人で何を話してたの?」
「言って良いのかなぁ。何となく憚られるんだけど」
「防音なら優れてるし、こんなところに盗聴器を仕掛けるスパイも居ないわ」
「好きだね、ハード・ボイルド」
「ストイックなイケメンに憧れるのは、自然なことだと思うわ。ただ、現実に居たらドン引きするかもしれないけど」
「あくまでも、手の届かないフィクションだから魅力なんだね?」
「そういうこと。それで、何の話をしてたのよ?」
「かわせなかったか。――最近、五十嵐くんの妹さんが、家族に対してツレナイ反応をしてるんだって」
「逸らさせないわよ。――まったく。シス・コンも大概にしなさいよ」
「黛さんは、もし将来、弟くんが彼女を連れてきても、嫌だと思わないの?」
「ユウトが好きに選んだ相手なら、どんな人間でも受け入れるわ」
「本当? 右目に眼帯をして、腕には包帯を巻いていて、黒一色のロココ調ファッションに身を包んだ人間でも、耳だけでなく舌や臍にまでピアスをして、チューブ・トップにホット・パンツを着て、厚底のロング・ブーツを履いた人間でも、玉蜀黍のヒゲみたいな髪で、真っ黒に日焼けして、背中や腕に刺青を入れたオラオラ系の人間でも、すぐに受容できる?」
「任せなさい。極端な話だけど、たとえ女装をしたマッチョ・マンでも、それがユウトの好みなら止めないし、拒絶もしないわ」
「本当に極端な話だね。日本人でなくても、日本語が通じなくても大丈夫?」
「平気よ。繁体字だろうが、簡体字だろうが、ハングルだろうが、アラビア文字だろうが、トンパ文字や象形文字やヒエログリフでも構わないわ」
「ワールド・ワイドだねぇ」
「過激な言いかたをするようだけど、国境線なんて、政治家が陣地を勝手に決めてるだけじゃない」
「領土や国籍や憲法の問題を吹き飛ばす発言だね」
「ついでに、花粉も吹き飛ばしてやるわ。プ、ラ、ズ、マ、波ぁ!」
「ちょっと。原稿まで落とさないでよ」




