#020「楽観視」
「クリスマス商戦スタート、か」
「お月見やハロウィンも、まだ先なのにね。――送った画像は、無事に開けた?」
「あぁ。池の水面から足だけが出てる画像に、半身浴という題を付けて送ってくるな。笑いを堪えるのに必至だったぞ」
「あれは、僕が考えたんじゃないよ。元々は、黛さんから送られてきたんだ」
「黛の精神年齢は、ユウトくんと良い勝負だな。――そうそう。最近、妹が家族に対して塩対応なんだ。それに、髪型を頻繁に変えたり、わざわざ自分専用のシャンプーや石鹸なんかを用意したりしててさぁ」
「お年頃だからじゃないの? 自我の目覚めだよ」
「簡単に片付けるなよ。金髪に厚化粧でミニ・スカートやルーズ・ソックスを穿くようになったら困るんだ。どこかで変な病気をもらってきたら」
「過保護だねぇ」
「影響されやすいから、心配してるんだ。もしくは、眉毛を剃り落として丈の長いスカートを穿くようなことも」
「それで、三角を外したり裾に安全ピンを鈴なりにしたセーラー服や、持ち手をテープで巻いて角を潰して薄くした鞄を持ってたりするの? 丈の短い詰襟にニッカ・ポッカみたいなズボンを穿いた暴走族と同じぐらい絶滅寸前だと思うけどなぁ」
「付き合う相手は、慎重に選ぶべきだろう?」
「理想が高すぎるよ。妹さんが可哀想だ」
「泣きを見る結果になって欲しくないから、サポートしたいだけで」
「干渉しないほうが良いと思うけどなぁ。ハァ。こうして、また一人、見た目や言葉遣い、職業や経済力で男性を判断する女性が生まれてしまうんだねぇ」
「頬杖を突いて遠い目をするな」
「肌荒れや皺の原因になるから?」
「そういうこととは違くてだな」
「永久に倒産しない企業は存在しないんだから、相手の財布に依存するのは良くないと思うけどなぁ。――余談だけど、役員や経理担当者が相次いで辞職したり、給与の支払いが遅れるようになったり、金融関係から視察が増えたりしてる会社は、倒産が近いらしいよ」
「役立たないことを祈りたい知識を、どうも。それなら山内は、借金まみれの甲斐性なしでも良いって言うのか?」
「極端から極端に行くねぇ、五十嵐くん」
「いよいよ本日、世界中から集まった障害者による熱き戦いの火蓋が、切って落とされました!」
「落とすな。この男子小学生が」
「ご機嫌だね、黛さん」
「あたしが来るまでに何を話してたのか訊きたいのは山々だけど、早速、報告するわね。あたしからは、マイタケとシメジを栽培するバイオ技術工場が、いよいよアジアに進出したという情報と、ザトウクジラの個体数が増えたことで、絶滅危惧種のリストから外れることになったという情報の二点よ」
「この並びで報告されると、鯨を食べたがってるように聞こえるんだが?」
「鯨肉が再び一般家庭の食卓に並ぶ日も、そう遠くないかもよ? ――僕からは、林檎社のスマート・フォンに関して。新しいモデルが発表されて、防水防塵性能が追加されたけどイヤフォン・ジャックは廃止されたという情報と、スマート・フォンで撮影された幾つかの映画の情報の二点だよ」
「美味しくないって言う人も多いけど、食べてみたいじゃない。――それで、翔は?」
「俺からは、七十三歳の日本人男性が、津軽海峡の遠泳成功して世界最高齢記録を樹立したという情報と、迷惑メールのブラック・リストが、携帯キャリア各社で共有されることになったという情報の二点だ」
「二点目は僕と近いね」
「それなら、あたし、大貴、翔の順で良いんじゃないかしら」
「そうだな」
「決まりだね」
「てれってってれってって。――翔、続きを」
「てってってっ、ってってれ。――俺たちは配管工なのか?」
「てれれてってれってれってれれ。――僕はキノコか、亀かな?」
「てれれてれれてーれー、てれれてれれてーてー、れー。本番、スタート!」




