#012「亀の甲より」
「山内は、弁当持参で」
「翔は、手製のおにぎりと水筒のお茶」
「黛さんは、購買部のパン」
「女子力って、何なんだろうな?」
「あたしには、大貴みたいな可愛らしいお弁当を作れないわ。毎朝、自分で作ってるのよね?」
「そうだよ。おばあちゃんに任せちゃうと、茶色いオカズばかりになるのが嫌でね」
「煮物も、たまに食べる分には美味しいけどな。――あぁ、涼しい」
「部室は冷房が入ってるから、快適よね」
「クーラーが導入されているのは、部員のためではなくて、熱に弱い機械が多いという名目らしいけどね」
「図書室や情報室と一緒だな。それにしても、久し振りに三人揃ったもんだ」
「五十嵐くんとは、金曜日に会わないまま土日を挟んだもんね」
「朝は、お土産ありがとうね、大貴」
「俺からも礼を言う。この度は、結構なものを」
「大したものじゃないけど、喜んでもらえて良かった。両親にも伝えておくね」
「欲を言えばだけど、今度は食べ物が良いわ」
「食欲の秋か、黛?」
「天高く、馬、肥ゆる秋。帰りに、どこかパン・ケーキかパフェでも食べに行く?」
「良いわね。駅前に、新しいカフェがオープンしたんだけど、そこは?」
「女性向けの店なら、俺は遠慮するぜ?」
「そう言わずに、五十嵐くんも付き合おうよ。僕も一緒だから」
「店によって、ターゲットの客層が違うものよねぇ。あたしは平気だけど、居酒屋、立ち食い蕎麦屋、牛丼屋は、女性ひとりでは入りにくいって言うわよね?」
「俺も、度々そういう話を耳にする。あと、ラーメン屋や純喫茶もハードルが高いらしいな」
「どうも一般的には、そういう傾向があるらしいよね。逆に、雑貨店やブティックには、男性ひとりだと入りにくいらしいし。僕は、そういうのは全然気にならないけど」
「周りは気にしてるかもしれないけど。――そろそろ、報告を始めるわね。あたしからは、国際社会に関して。カナダの首相をモデルにしたヒーロー・コミックが、米国で出版されたという情報、ドイツ首相が、イタリア地震で倒壊した小学校の再建を約束したという情報、米国とキューバを結ぶ旅客便が、半世紀以上ぶり復活したという情報の三点よ」
「カナダの首相は、人気者なんだな」
「男性の僕から見ても、カッコいいと思うよ。――僕からは、気象と科学に関して。台風で貯水量回復で、利根川取水制限が全面解除されたという情報、携帯キャリア各社が、洪水情報に対応した緊急速報サービスの提供することになったという情報、業界で初めてとなるスプレー式の食器用洗剤が開発され、来月から発売されることになったという情報の三点だよ」
「身の安全を確保するためにも、いち早く正確な情報を得たいところよね」
「逃げ遅れないためにも重要だな。――俺からは、スポーツと科学に関して。惜しくも四度目の金メダルを逃した、あの女子レスリング選手が、東京五輪を目標に現役を続行することにしたという情報、群馬県で、渓流釣り中に熊に襲われそうになった空手有段者の男性が、目潰しで撃退したという情報、米国が、宇宙空間でのディー・エヌ・エイ解読に初めて成功したといック。という情報の三点だ。ヒック」
「あら、しゃっくり?」
「そのようだね」
「ここは、水をヒック、飲めば治るだろう。……これで、大ック。平ック」
「駄目ね」
「人差し指を耳の穴に入れて軽く押すと、すぐに治まるらしいよ」
「ヒック。こういうことか? ……お!」
「あっ、すごい! ピタッと止まったわ」
「効果があって良かった」
「どこで、そういう知識を得るんだ?」
「クフッ。知恵袋だよ」




