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第三王子は発光ブツにつき、直視注意!  作者: 山田桐子
リクエスト企画2・ロイヤルウェデングに至る日々
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昼下りの女子会

連載開始から本日で一年です。

なんだか待っていてくださる方がいたらとても申し訳ないくらいあいてしまいましたが、記念日投稿してみました。

楽しんでいただけたら幸いです!

「「「「!!!」」」」


 昼下がりのお茶会をするべく集まった庭の一角で、メルリア様からの突然のご報告に、それまで和やかに談笑していたはずの私達のボルテージが一気に上がります。驚きの内容に身を乗り出したものの、それぞれそれ以上言葉が出てきません。当のメルリア様は長い睫毛を恥ずかしそうに伏せると、ほんのりと頬を染めています。


「皆様、お座りになってくださいませ。ご報告が遅れて申し訳ありませんでした。ですけれど、家族以外で話したのは皆様が最初ですのよ?」


 二の句が次げない私達でしたが、いち早く復旧したのはマリーベル様でした。


「お、おめでとうございます!! 一体いつの間に!? まさかリナ様より先にメルリア様だなんて! きゃー!! それで、それで、ご予定はいつですか!?」


 大興奮するマリーベル様は、両手で自分の体を抱きしめてくねくねしています。


「ちょうどリナ様の結婚式あたりになるのではないか、と」


 自らのお腹にそっと触れるメルリア様は既に優しさに溢れた母親のお顔で、相変わらず真っ赤なオーラですが、その揺らめきさえも柔らかくなったように感じます。


「おめでとうございます。妃候補の解散からご結婚も急で驚きましたけれど……」

「結婚式でお見かけしたご夫君の溺愛ぶりは、王太子殿下のリナ様へのものに引けをとらないとお見受けしておりましたが……。とにかく、おめでとうございます」


 アリサ様とライラ様がそれぞれお祝いの言葉を送られています。なんということでしょう! メルリア様に、赤ちゃんが! メルリア様が、お母様に!


「おめでとうございます! 素敵なご報告で、しかも一番に教えていただけるなんてすごく嬉しいです!!」


 じわじわと沸き上がる喜びの感情に笑顔がとまりません。『皆様、ありがとうございます』とはにかむメルリア様のなんとお可愛らしいことか!


「あ! クッションを増やしましょう。いえ、それより寒くはありませんか? 紅茶やお菓子の匂いなどは平気でしょうか?」


 妊婦さんだと聞いてしまったら、色々なことが気になりはじめてしまいました。急いで指示を出そうと腰を上げかけた私を、メルリア様が止めます。


「リナ様、大丈夫ですわ。安定期に入って悪阻も落ち着きましたし、今日は日差しもあたたかいですから」


 そのお言葉に浮かしたお尻を戻すと、隣から物憂げなアリサ様のため息が聞こえます。


「……皆様、どんどん先に進んでしまいますのね。私、焦ってしまいますわ。あ、勘違いしないでいただきたいのですけど、お祝いしたい気持ちも、友人の幸せを嬉しく思う気持ちも本物ですのよ? ですが、何と言うか……ライラ様とマリーベル様もそうではなくて?」


 一身に視線を集めたアリサ様は、少し眉毛を下げてお二人に意見を求めます。


「私は官吏として身を立てることが第一ですので、今は結婚も出産も考えられません。ここで投げ出すなんてことになれば……」


 ギリギリと歯を食い縛るライラ様に、日頃のご苦労が垣間見えます。ジルの口利きで文官として登城しているライラ様は、女性のほぼいない状況でかなり悔しい思いをしている模様です。


「そうですか。ライラ様はまだお若いですし、猶予もそれなりにありますものね。ではマリーベル様は……」


 アリサ様が話を振れば、先ほどのメルリア様よろしくマリーベル様も頬を染めています。こ、これはまさか。


「その、実は、私も結婚が決まりまして……」


「な、なんですって!? いつの間に!? どこのどなたですの!?」


 間髪入れずに食いついたアリサ様。お気持ちはわかりますが落ち着いてください。私はそっと紅茶のカップを勧めます。


「つい先日、幼馴染からプロポーズされたんです。それで、式はリナ様より先になると思うのですけど……。皆様をお呼びしてもよろしいでしょうか?」


 上目遣いでなんとなく申し訳なさそうに願い出るマリーベル様の様子に、私達はそろっておめでとうを伝えて快諾します。


「あぁ、ですが……。これで私だけではありませんか。もう、どうしたらいいのでしょう……」


 おー……。アリサ様のつぶやきが切実すぎます。


「アリサ様は理想が高すぎますのよ」


 バッサリ切り捨てたのはライラ様です。


「まぁ、どんな方を望んでらっしゃるの?」


 メルリア様が首をかしげます。家柄や容姿のことを考えてもアリサ様は売れ残る方が難しいように思います。私が男だったら、ほっときません。


「言っておきますけれど、ずっと殿下の隣を望んでいたのは私ではなく父ですのよ? 今回のことで白紙になりましたけど……あ、いえ、リナ様に不満があるとかでは全くないので勘違いなさらないでくださいませ」


 そこで一旦言葉を切ったアリサ様はカップに手を添えて、物憂げに紅茶に視線を落とします。


「その……。新たな相手を父から言われてしまえば拒否するつもりはありません。ですが我儘を言わせていただけるなら、私だけを見て愛して大事にしてくださる『白馬に乗った王子様』でしょうか。そんな方と燃えるような恋ができたらどんなに素敵か……、と」


「「「「白馬に乗った王子サマー!?」」」」


「いえ! 勿論それはものの例えで、王族に輿入れをと考えているわけではありませんのよ? ただ運命の出会いというか……、目と目が合った瞬間に惹かれあうというか……」


「「「「……」」」」


 し、知りませんでした。アリサ様がこんなロマンチストだったなんて。もっと、こう、即物的というかなんというか。これは乙女ですよ。紛れもなく乙女的思考です。


「まさかそんなことを言い出すなんて……。予想の斜め上でしたけれど、諦めなさいませ。それは無理ですわよ」


 再びバッサリ切ったライラ様。頼りなさげにしていたアリサ様がキッとお顔を上げます。


「私だって現実にそんなことがないのはわかっています! ですがリナ様もメルリア様もマリーベル様だって、身近でこれだけの方が運命の相手と結ばれているのですよ!! 私だって夢を見るくらいよいではありませんか!!」


 ぐあっ! 恥ずかしいこと言わないでください! 運命の相手って!! 夢を見るのは勿論個人の自由です。ですが軽く辱しめる言葉を入れてくるのはいかがなものでしょう。顔が熱いです。


「リナ様のところはそうかもしれませんが。……リナ様赤くなりすぎです。メルリア様とマリーベル様のところは詳しいお話を伺ってませんから何とも言えないではありませんか」


 なぜ、そこで私だけ肯定されるのでしょう! 恥ずかしすぎます。やだ。帰りたい。


「お言葉ですけど、ライラ様! 私も運命の相手だと思っています! 近すぎて気がつけなかっただけで、彼以上の人はもう二度と! 絶対に! 現れません!!」


 恥ずかしげもなく力説するマリーベル様に、もはや向けるのは賞賛の眼差しです。


「……は、恥じらいもなくそのように!!」


 メルリア様だとそういうツッコミになりますよね。ですが予想通りのその返しに、『しかし逃がしません!』とアリサ様が眼力に無言の圧力をのせて本音を迫りました。


「……、……、か、彼以上に私を大事にしてくれる方は、い、いないと思いますけど。ですが、それは、」

「ほら!! 皆様、運命のお相手と結ばれてますのよ!」


 メルリア様の言葉を遮ってアリサ様が両の拳に力を込めます。ここからきっとツン発言をするところだったメルリア様は、流れがアリサ様に移ってしまって誰も聞いていないにも関わらず、可愛いらしく言い訳を続けています。


「だいたい、ライラ様も結婚は先だなんて言いながら、理想くらいはありますでしょう?」


 アリサ様のお言葉にそうですね、と冷ややかにお返事をするライラ様。だめだ。目が据わっています。なんだか、恐い発言がきそうで私は身構えました。


「職場での男性を見ているとそんな気は更々おきませんが。あえて言うならば、私に逆らわない男性が理想です」


「「「「……」」」」


 おぉう。そうきましたか。よっぽど鬱憤が溜まっているのですね。どこかで息抜きをしていただかないとまずそうです。何か日々の嫌なことを思い出されたのか、オーラから冷気が……。ライラ様から吹き荒れるブリザードで、場の空気が一気に冷え込みます。

 うっ。ちょ、ちょっとこの微妙な空気をどうしたらいいでしょうか。


「ご歓談中に申し訳ありません。リナ様、お仕立て中のドレスのことで王太后陛下と王太子殿下が……」


 言葉尻を濁しつつ、声をかけてきたのはトリアンナ様付きの侍女です。この雰囲気は、またトリアンナ様とジルとでバトルになっているようですね。私は少し遠い目になります。これは行かねばなるまい。


「皆様、すみません。今日、ウェデングドレスのデザイン画の最終確認をすることになっていて、本来であればお茶会の後の予定だったんですが……。どうやら行かなければならないようです」


 申し訳ない気持ちで伝えたはずなのに、皆様の目がキラリと光りました。冷えた空気は霧散しましたが、コレ、いつものよくないパターンじゃないですか?


「まぁ! それ、私達もご一緒させていただけないかしら?」

「そうですわね! 若い者の意見も参考になりますでしょう?」

「こういうことは当事者よりも、私達のような者の方が広い視野で見れると思います!」

「流行のことなら任せてください!」


 やっぱり。拒否できないヤツです。


「あ、あの、ジルだけでなく王太后陛下もご同席しているそうなのですけど……」


 軽く言外についてくるとヤバイかもしれませんよー、と匂わせてみますが。


「「「「問題ありません!」」」」


 そんなに力強く言い切ってしまって平気なんでしょうか。という疑問が表情に出てしまったのか、その後された補足に私は思わず笑顔になってしまいました。皆様曰く。


「最近、王太后陛下に不思議と親しみがわいてますの」

「リナ様が何かにつけて話されるからかもしれませんわね」

「人の噂より身近な方の評価、さらには自分の目の方が確かです」

「リナ様がこれだけなついていらっしゃる方が悪い人なわけありません」


 あぁ、もう、皆様大好き!

 なかなか進展してくれない『愛されトリアンナ様計画』にやきもきしているところだったんですが、こんなところでも皆様に助けられるなんて。

 バトル中らしいので一抹の不安はありますが、ここは皆様と一緒に行きたい。行かなければ。たとえ部屋に剣呑な空気が満ちていたとしても、若いパワーで吹き飛ばせばいいんです。トリアンナ様と皆様の距離も縮まって、私のドレス問題も解決すればこんないいことはありません。


「皆様、よろしくお願いします!」


「「「「お任せください!」」」」


 頷きあって気合を入れ、席を立ちます。

 では、そろって参りましょうか! 最大級のブリザードが吹き荒れていようとも、今日はなんとかなりそうな気がします!







読んでくださってありがとうございます!

次話は一週間以内にあげたいと思います!

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