表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/57

二重生活にニアミスはつきもの

閑話扱いな内容なんですが……

リナ目線なので通常投下しちゃいます(;´∀`)

「そこの貴方、こっちにいらっしゃい」


 ま、まずいです。メルリア様です。

 私は今、ジルベルト様の私室から帰ってきたところで『リナ』でなく『サリタ』です。


 『貴方』って誰ですか? 僕のことじゃないですよね?あ、僕のことでした? あはは気が付きませんでしたー。って逃げてもいいでしょうか。


「貴方、お名前はなんとおっしゃるの? このところジルベルト様とよく一緒にいらっしゃるわよね?」


 うわー。

 前から来るメルリア様を後退して避けようとしたものの、たった今その退路も断たれました。

 どうしてこういう時ってタイミングよく、いや悪く必ず誰か登場するんですかね。後ろからアリサ様ですよ。


「こんなところで立ち止まって何をなさってるんですの?」


「あら、ご機嫌よう。最近ジルベルト様のお側に上がった侍従がいたので声をかけていたところです」


「そう。貴方、お名前は?」


「……サリタ・クロルと申します」


 私は意識して低い声を出します。


「クロルさん、貴方に聞きたいことがありましたの。私の部屋にいらして。あぁ、貴女もどうぞ。他の皆様も呼びましょう」


 そうして有無を言わさず部屋に連れ込まれ、居心地の悪さに身を固くすることしばし。

 変装しているとは言え、いつどこで怪しまれるかわかりません。

 冷や汗をダラダラ流しているところで、ライラ様にマリーベル様もいらっしゃいました。


「ランドール家のお嬢様はお散歩中だそうで、お探ししたのですが姿が見えませんでした。申し訳ございません」


 当然ですよ。ここにいるのですから。

 それにしてもハディさん、上手く誤魔化してくれました。ハディさんにはオーラのことは伏せてサリタのことを伝えてあります。

 伝えたのはグレン様なので抜かりはないはずです。


「まぁ、リナ様にもこの場にいていただきたかったのですけど。それとは別に用もありますし、引き続き探してちょうだい」


 はい。と下がる侍女さん達。

 ですから私、ここにいるんですってばー。


「メルリア様、この者は誰ですの?」


「最近ジルベルト様の侍従に上がったサリタ・クロルさんです。皆様にも一緒に聞いて欲しい事がありましたので、お呼びしたのですわ」


 メルリア様、何を言い出すのでしょうか。

 現在、度入りの眼鏡なので表情で推し量るしかないのですが、あまり良い話しではなさそうです。


「まぁ、なんですか?」


「私、見てしまったのです! ジルベルト様とクロルさんが抱き合ってるところを!」


「「「「!?」」」」


 いっせいに皆様の視線が私に集まります。

 そ、そんなことしてませんよ!? と私は必死に首を振りました。

 そんな中、メルリア様は事の次第を話しはじめます。


「あれは、二日前のことですわ。ジルベルト様とクロルさんが廊下を歩いていらっしゃるのを見かけて……。執務中にお声をかけるのも躊躇われましたので目で追っていたのですわ。そうしましたら……そうしましたら!」


 メルリア様がワナワナと震えてらっしゃいます。私も大混乱ながら必死に記憶を辿ります。


 二日前の廊下?

 えー……。

 あー!? あの時ですかっ!?


「ち、違うんです! よろめいた僕を殿下が助けてくれただけで……」


 メルリア様がキッと睨み付けてきます。


「しかもその後、ジルベルト様が貴方の頬を撫でていましたわっ!」


 おのれ、発光王子め! 人の目に晒されるところで余計なことをして!


「ち、違います! あれは頬を……つ、つねられてたんですよ! しっかりしろとお叱りを受けてたんです!」


 疑いの眼差しが痛い。


「オ、オルディス嬢はもしかして殿下と僕が、で、出来てるとかお考えですか? でしたら勘違いですよ! そもそももしそんな関係でしたら、 衆目に晒される危険のある場所でそんなことしません!」


 なんて言いつつも、あの日あの場所で(つまず)いたのは本当ですが、頬をつねられたのではなくメルリア様の言う通り撫でられたのですけど……。


「……一理ありますわね」


 ちょっと苦しい言い訳でも少し納得していただけたようです。このままた畳み掛けなければ!


「でしょう? だいたい殿下は女性が大好きですよ! 皆様もご存知でしょう! 殿下のとろける笑顔を!」


 私の言葉に皆様は揃ってジルベルト様の顔を思い出されたのか、頬がぽおっと上気していきます。

 逆に私は冷めた気分になりました。

 ジルベルト様、貴方の手管にご令嬢方はメロメロですよ。良かったですね。


「で、では、誤解も解けたようですし、もう僕はいいですよね?」


 逃げるが勝ちとはよく言ったもので、私は腰を上げました。


「お待ちになって。ねぇ、以前どこかでお会いしてませんか?」


 一番聞きたくない言葉を発したのはライラ様です。

 その言葉に他の皆様も、次々に同意の声をあげていきます。や、ヤバイー。


「ぼ、僕、特徴のない平凡顔なのでよく言われるんですよー。気のせいではないでしょうかー。は、ははは。あ、あの僕もランドール嬢をお探しするのを手伝ってきますねー!!」


 再び捕まる前に逃げきるしかありません。

 私は挨拶もそこそこに素早く部屋から脱出しました。扉を閉めきって少しでも遠くにと素早く足を進めます。


 ほ、本当にあぶなかったー!心臓がドキドキしてます。

 もう! それもこれも全部ジルベルト様のせいですよ!


◇◆◇


 はぁ、忙しすぎます。


 慌てて着替えてメルリア様の部屋に戻りましたが、皆様、大変お待たせいたしました……。

 サリタの件が解決して、後は何のお話しがあるのでしょうね?


「明日が夜会だと言うのに、貴女はのんびりとどこを散歩なさってたのですか!」


 お、おおお。そのお話ですか。


「す、すみません」


 メルリア様が腰を手にあててご立腹です。


「謝罪などいりません。それより私がお渡ししたドレスと飾りは一度ちゃんと合わせて着てみられたのですよね?」


「いいえ、まだ……」


「なんですって! 今すぐ着るのです!! サイズがあわなかったらどうするのですか!」


 サイズがあわないって……。

 渡された時に試着してサイズ直しをしてから数日しか経ってないではありませんか。

 いくらここの食事が美味しくても、そんなすぐ太ったりはしませんよ。と思いつつも、声には出せません。


 そしてこういう流れの時って順番に……。


「リナ様! 私がお渡しした化粧水などはちゃんとお使いになってますか?」


「そ、それはもう! 毎晩ちゃんと……」


「夜だけですの!? 朝もなさって下さい!」


 アリサ様のご指導入りましたー。

 朝の身支度ってハディさんを煩わせるのもなんなので、自分で終わらせちゃうのですよね。なので多少おざなりに。

 夜はハディさんにこねくり回されてから寝てます。


 そして、次は……。


「リナ様! 私がまとめた王族の方々、主要な貴族の方々の資料に目を通していただけましたか?」


「ちゃんと読みました!」


「それは良かったです。ではテストしましょう!」


 テ、テストとな!?

 自信はありませんが、私のためにお手製の資料をつくってくれたライラ様を悲しませるわけにはいきません。精一杯頑張らせていただきます。


 はい、とりですよ!


「リナ様!」


「はい!」


「一緒に楽しみましょうね!」


「……そうですね!」


 マリーベル様、貴女のその何でも楽しもうとする前向きな姿勢……感服いたします。

 そうですね。楽しくないと決めこまず、視野を広く持てばどんなことでも面白さを探せますよね。


 こうなったら楽しんでやろうではありませんか! 皆様のお心遣いとダンスレッスンを無駄にするのはもったいないですもの!


 ……と入れた気合いも、メルリア様に『リナ様のお部屋に移動いたしましょう』と言われてすぐに霧散する事態になりました。

 そんなに四方八方から話しかけられ、こねくりまわされたらグッタリゲッソリしてしまいますよ。

 投げやりな気分に蝕まれてしまえば、胸を占める思いは一つです。


 や、やはり明日は欠席させていただけませんか……?



本日もありがとうございます!


そういえば私、各話の見出しを付ける作業がかなり好きです。

もう二十個も付けたのかぁ(*´∀`)

と、しみじみしてます(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ