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こんなに想われて光栄です

 ご令嬢方とのお茶会パートツーきました。


 王宮に来て早一ヶ月、今日は天気も良く本来ならお庭でのお茶なんて素敵なはずなのですが、如何(いかん)せんメンバーが……。

 個々にはお会いしたり、というかそれぞれのお部屋に拉致されるんですけど、結構話す機会があり楽しくすごせます。ですが全員で集まってはいけないでしょう。一人一人は良い方達なのですが、ジルベルト様という同じ目標があるのがいけないのでしょうか。

 こんなに話が弾まないでひたすらお茶をすすってるなんて、十分が一時間に感じるとか誇張表現ではありません。何か、何か話題を……。


「メルリア様、今日のドレスとアクセサリーの組み合わせも素敵ですね」


「あら、ありがとう。このアクセサリー、ドレスに合わせて既製品でなくデザインから起こしたものですの」


 メルリア様が金髪を耳にかき上げて首をかしげたので、イヤリングに日の光りが当たって綺麗です。さすが魅せ方を知っています。


「衣装やお飾りばかりですのね」


 き、聞こえますよ! アリサ様!


「アリサ様は香油をお変えになりました? とても良い薫りです。それに髪の艶も一段と増したのではありませんか?」


「分かりますか? 国内では手に入らない特別な花から作られた香油なのですって。指通りも、このように」


 指先からこぼれ落ちる髪は、まるで絹糸のようです。

 ほんのりと香る花の匂いに天使の輪が降りる髪……女の私もうっとりです。


「お二人とも外見が全てですのね」


 今度はライラ様ですか!


「そう言えばライラ様、お貸し頂いた北の灌漑工事についての考察、とてもためになりました」


「そうでしょう? 新しい工法が効果をあげたなんて、素晴らしいですわよね。郊外が潤えば国が富むのですから」


 お金をかけずに自然のサイクルと地理を最大限に利用する考えには、とても感銘を受けました。ライラ様って最近、私の興味を引くところを確実にチョイスしてくださってすごいです。


「皆様、そんな話題ばかり」


 あ、そうですよね。大丈夫ですよ、マリーベル様。ちゃんと全員に話題をふりますから。


「マリーベル様、今日の紅茶、リッチモンド家が専売している今人気のものなのですって? すごく美味しいです。それに色がとても綺麗で。さすが先見の明がありますね」


「私が見つけて父に進言した紅茶なんです。お口に合いました? 嬉しいです」


 うちにも王都で流行るような特産品があればいいのですが。

 用地はありますが、まず何が受ける商品になるのかの判断ができません。マリーベル様はその点流行に敏感ですから。


「「「「リナ様は……」」」」


 おおー、きれいにはハモりましたね。しかしどの方に顔を向けたらいいのやら、ご令嬢方も顔を見合わせて牽制しあってます。

 しばしの無言のやり取りの後、一斉にこちらを向かれました。私に話し相手を指命しろと言うことですか? そんなの気まずすぎます!


「み、皆様、私のこと大好きなんですねー」


 とぼけた顔して言いましたが、つまりそう言うことですよね? ご令嬢方の視線がキリッとなりました。

 えっ!? 違うんですか?


「そうですわ! 私、リナ様が好きですの!」


 愛の告白きましたー。直球勝負をしてきたのはメルリア様です。


「ついつい高圧的な態度をとっても怯えて避けたりしませんし! それどころか私が言うことに従順なだけでなく、反論したり……友人として会話が成り立つのですもの!」


 メルリア様ってば私のこと、そんな風に見ていたのですね。確かに強い言葉を投げつけた後って、一瞬オーラが止まったり、後悔するように変な動きしたりしてましたものね。私にとっては素敵なツンデレですが、表情がかわらないので言葉を額面通りにうけとる普通の人は心折れるかもしれません。


「お待ち下さい! 私だってお慕いしてます!」


 第二弾きましたー。今度はアリサ様です。

 アリサ様もメルリア様に負けずストレートですね。基本オーラの色や状態が似たお二人なので、言動がやはり似通ってます。


「母から稀色を引き継げず、凡庸な茶色の髪に瞳がコンプレックスの私をいつも励ましてくれますわ! ご自身は珍しい黒色をお持ちなのにひけらかすこともなく! しかも私を頼ってお手入れの指南まで求めてくださって!」


 アリサ様はご自分の髪や瞳に自信がなかったのですか。初耳です。むしろこれほど艶やかな方ってなかなかいないですし、珍しい色よりよっぽどいいと思うのですが。

 なによりアリサ様の心も髪に負けないくらい綺麗ですしね。


「わ、私はリナ様を心の友だと……思っています! 女の私が政治や経済など生意気だ、小賢しいと罵られるのが常のことでしたのに。リナ様は自分も読書ばかりしているとおっしゃった上に、私がまだ見識の浅い農業についてのお話までされて。もうこの方しかいないと思いましたのよ!」


 ライラ様も恥ずかそうにしながらも、好意を伝えてくれました。でも、すごく勘違いされてます。農業特化なだけで、私はけして賢い人間ではありません。今後、ライラ様をガッカリさせてしまう場面がくると思うと……精進します。


「私だってリナ様のこと大好きですよ! 貴族の仲間入りしたとしても所詮新参者。由緒ある方々からは下品、商人仲間からは気取ってると言われて爪弾きされて。そんな私にリナ様は普通に笑いかけてくださいました。おしゃべりだってすごく弾んで!」


 マリーベル様……、明るくふるまっていますが苦労なさってるのですね。マリーベル様の弾丸トークについていくのも随分慣れました。跳弾、散弾、なんでも来いです。


「「「「それで、リナ様は!?」」」」


 序盤に戻りましたね。


「もちろん好きですよ!」


 ですが皆様の溢れる愛と期待に応えきれるかというと……。皆様の信頼に足る人物でいられるように頑張ります、と言うより他ありません。

 そして、そんなやり取りをしている間に、私は皆様にする質問を思い付きました! 常々疑問に思っていたことがあるんです。話を逸らすこともできますし、これを機会に聞いてしまいましょう。


「話は変わるのですけど、皆様はジルベルト様のどこを好ましく思ってらっしゃるんですか?」


 皆様がいっせいに何かを思い出したように顔を輝かせます。


「高貴なお立場に……」

「あの綺麗な容姿……」

「なんでもスマートにこなす有能さ……」

「それにとても紳士的で……」


「「「「なによりあの甘いマスクで微笑まれましたら~」」」」


 あー。私には全然共感できない点で一致されてしまいました。 そういえば忙しすぎて、ジルベルト様の絵姿を探してすらいません。皆様の共通認識ですから、きっととっても素敵なお顔なのでしょうけど、創造力が乏しくて思い描くこともできません。

 しかも私に対しては意地悪なので、皆様のお話がちゃんと結び付きませんよ。

 気になっていたことは聞けましたし、ジルベルト様が女性に大人気なのも分かりましたが、あまり参考にはなりませんでした。


「そうそう、ジルベルト様と言えば、二週間後に王妃陛下主催で行われる夜会のことですわ。私達、お妃候補としてジルベルト様と踊る機会がありますでしょうし、何より両陛下と顔を合わせる機会もあると思いますの」


 それですか……。私、欠席したらダメでしょうか。

 王妃陛下主催となれば、それ相応の断り文句を用意しなければなりませんが……行きたくないですよ。

 どうせ色酔いしたあげく、あの発光ブツを視界にとらえてしまって戦意喪失……ぐったりして退場という流れが今からありありと見えますから。


「私からの提案ですが、それぞれジルベルト様や両陛下へのアピールはお好きになさって、醜いお互いの足の引っ張り合いは止めませんこと?」


 メルリア様の発言が怖いです。裏を返せばこの協定を結ばなければ、醜く引っ張り合うってことですよね? 足を踏み入れたくない世界です。


「そうですわね。正々堂々まいりましょう」

「もともとそのような低俗な行為するつもりありませんわ」

「思いつきもしませんでした。でも、賛成です」


 お三方が()と答えたので、三度(みたび)私に視線が集まります。


「あ、あの、私は欠席させていただこうか……」


「「「「何をおっしゃってるのですか!」」」」


 ひえー。


「リナ様はどうせお衣装もお飾りもお持ちでないでしょうから、私がご用意いたしますわ!」

「磨きあげた髪と肌の発表の場ですもの、絶対にご出席ください!」

「夜会で行われる情報戦。知識を以て他令嬢に差をつけるチャンスではありませんか!」

「一緒に出席いたしましょう!私一人では心細いですもの!」


「あ、あの……、……、……、……はい」


 皆様のプレッシャーに負けた瞬間でした。



本日もありがとうございます!


次回は閑話でグレン視点を入れようと思います。

たまにリナ以外の視点で書くと楽しいです(о´∀`о)

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