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両足つっこむ五秒前

 リナ・ランドール改めサリタ・クロルは、本日より第三王子殿下の侍従見習いとしてグレン様の下につくことになりました。

 

ちなみにデコチューより三日後のことです。三日も間があいたからか、はたまた私が気にしない(たち)なのか、思ったより平常心です。ジルベルト様の顔が見えないのも大きいかもしれません。

 ただ、その平常心も程度を誤ってはいけないのです。無関心ととられると、再びアレが行われる危険性があります。グレン様がいる間は安全でしょうけど、普段から余計なことは言わず節度をもっていかなければ。


 それにしても、侍女でなく侍従ですよ。いくら侍女じゃ代わり映えしなくてバレそうだからって、男の子になれとは。

 そんな訳で私は今、後ろで一つに縛られた茶髪のカツラをかぶり、ズボンにベストを着用しています。元から凹凸の少ない体型のおかげで補正の必要もなく、どこからどう見ても少年です。


「それで、リ……サリタ。どうだった?」


 先程初仕事を終えたばかりなのですが、現在ジルベルト様の私室にて報告会中です。

 初仕事は会議に列席する面々の観察でした。ジルベルト様の強烈オーラを視界に入れないように、他の方々を観察するのは骨が折れる折れる。

 しかもこの会議、陛下に王太子殿下のイェリク・ユノー様、第二王子殿下のヨエル・ドース様に各役職トップの方々が一堂に会し、私の緊張感も限界を振り切りっぱなしで……。お配りする資料に私の手汗が付着するのではないかと、何度こっそり服でぬぐったことでしょう。


「その前に、名前と顔は一致していますか?」


 グレン様、手の届く距離の相手ならいざ知らず、近眼の私に人の顔の判別は難しいですよ。言いかえて、名前とオーラが一致しているかどうかであれば、答えは否です。会議の開始直後に雑用だけして退出した私に、一瞬ですべてを暗記する力はありません。求めすぎないでいただきたい。


「座席を表にしよう。その方が解りやすいだろう」


 私が微妙な表情をしたからでしょうか。ジルベルト様がナイスフォローをしてくださいました。そして取り出されたのは紙とペン。

 紙には四角でテーブルと、丸で人を表しているものが書かれました。小さく人名も記されています。

 私は差し出された紙にある全部で十個の丸に、見たままオーラの色を書き込んでいきました。厳密にいえば正確さにかけますが、とりあえず主要な一色ないし二色がわかれば問題はないと言えるでしょう。


「……できました」


 ジルベルト様とグレン様が紙をのぞきこみます。


「解説をお願いします」


 それはそうですよね。


 赤・情熱的、行動力がある、思い込みが激しい

 橙・明朗、好奇心旺盛、嘘がつけない

 黄・元気、ムードメーカー、打たれ弱い

 緑・優しい、平和主義、優柔不断

 青・冷静、客観的、理想が高い

 紺・真面目、誠実、頑固

 紫・信仰心が深い、感受性が強い、ミステリアス


 他にも白や黒、銀は見たことがあるのでたぶん金も、中間色にいたっては千差万別に存在します。組み合わせや配置まで言及すると枚挙に(いとま)がないので、お二人には上記の七色をざっと説明しました。


「……以上ですが、私の経験則なので多少違う部分もあると思います」


 今回の観察において、性格の悪さや腹に一物を抱えていそうな方はいても、悪意に満ちた方がいなかったことに私はとても安堵していました。先の事件で触れたような悪意あるオーラは何度見ても慣れないでしょう。たとえその矛先が私ではなかったとしても、視界に捉えた時点で平常心が保てるとは思えません。


「一つお聞きしてよろしいですか? 僕は何色なのでしょう?」


 グレン様、それ、聞いてしまいます? 本人を前にするとすごく言いにくいですよね。


「青に緑です……」


「冷静で優しい平和主義者ってことか? 少しイメージ違うな」


 ジルベルト様はグレン様をよく知っていますからね。ですが余計なことを言わないでください。


「思うに濃淡や明暗、配置に組み合わせで意味合いが変わってくるのではありませんか?」


 ご明察! でもそれ以上つっこまないでほしいです。


「サリタ、はっきり言ってやれ」


 ジルベルト様、完全に面白がってますよね。グレン様もオーラで威圧するの止めてください。聞きたいって言ったのはお二人ですから、私に文句つけたり怒ったりしないでくださいよ。


「……穏やかな仮面をかぶった策士です」


「……はははは! ピッタリだな!」

「……興味本意で聞くもんじゃないですね」


 だから言いましたのに。


「そういうご自分は何色なんですか?」


 不服そうにグレン様が聞いてきます。


「自分のって見えないのですけど、たぶん薄いオレンジあたりかな、と」


「いや、違うだろう」

「違うんじゃないですか」


「……」


 お二人から見る私って一体……。それ以外にこれかなっていう色が私的にはないのすが。

 も、もう! 話題を変えますよ! もっと大事なこと、そうです、今日初仕事を終えて気になったことがあるんです。


「そんなことより! 今日はじめて王族の方々にお会いして分かったのですが、殿下以外の方は眩しくないんですよ! 私は王族の皆様は全員、殿下のように眩しいのだと思っていたので驚いて……」


 そうなのです。陛下はサンルームに射し込む春の柔らかい光のように仄かに発光していました。それは直視できないという程のものではありません。

 また王太子殿下と第二王子殿下に至っては一般人とかわらない……不敬罪? いえいえ事実を述べる必要があるので……普通のオーラでした。


「 第三王子であるジルベルト様は、なぜこんなに眩しいのでしょうね?」


 首をかしげる私ですが、さっきまでの雰囲気はどこへやら、突然訪れてしまった沈黙に居たたまれなさを感じます。


「それは、第三王子であるジルベルト様の方が王太子殿下より王座に相応しい、とそう言うことでしょうか?」


「えっ?」


 そんな受け取り方をされるなんて思ってもみませんでした。発光現象が王の威厳やらカリスマ性やらを表してるってことですか? 見たままをお伝えしただけで、そんなつもりで言った訳ではありませんよ。

 そもそも、私のような者が誰が王様に相応しいとか偉そうに意見するはずも、というかあまり興味もないですから。


「サリタは、我が国が王位継承権でもめていることをご存知ではないのですね」


「グレン」


 ジルベルト様がいつにない低い声を出したので、これは聞かせたくない話しなのでしょうか。私としても込み入った内容はあまり聞きたくありません。こう言うことって、知ると大抵巻き込まれるものですよね。もう片足突っ込んでる気もしますが。


「サリタの力を利用する以上、知っていただいた方がいいはずです」


 主の意見を無視して進みますか。ジルベルト様がため息をついていますが、諦めたようでもう止めてくれません。どうやら聞かなくてはならないようです。既にややこしそうな気配がプンプンです。



本日もありがとうございます!


次話は説明回になりそうです(;^_^A

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