始まり 3
それから生活していると、亡霊との関係が分かってきた。
亡霊とは口に出さなくても、テレパシーの様なもので会話ができる。
亡霊はこちらの意思とは関係なく常に見えたり、見えなくなったりする。
なぜか亡霊の声は人間とは違う。これはきっと伝達方法の違いのせいだろう。
このことを知っていれば、自ずといかなる対応もできる。
そして亡霊との生活が始まった。
亡霊のことは僕しか知らない。もちろん僕の肉親も知らない。よって、僕は亡霊のことを気づかれないように生活しないといけなかったため、精神をすり減らした。
亡霊が現れてから、現実までを少し話そう。
亡霊は、なにかと僕に話かけてくる。時も場所も選ばずにだ。
しかし、その事を払拭できるぐらい勉強を教えてくれた。授業の発言は間違えなくなったし、テストに至っては解答が頭に響いた。もちろん100点を取ることはできないので、わざと間違えた解答をすると亡霊は叫びだす。このことはどんな説明をしても亡霊には分からないだろう。
そんなこともあり、勉強の面は順調であった。
問題は日頃の生活である。友達と話してるときですら亡霊は話しかけてくる。僕がやめろ、と言うと理由を聞いてくるし、無視をすると、返答をするまで質問してくる。ある意味いい頭のトレーニングである。
だが、まだ友達に違和感を持たれたこともないしうまくやれていると思う。いつかは聖徳太子のように複数の声を一度に聞き取れる日は近づいているだろう。
そして、もちろん高校受験というものが訪れる。
もちろん亡霊のおかげでこんなものは余裕なのだが、この受験に対して僕と亡霊の間に少しいざこざがあった。
亡霊はなぜ受験をするのかと聞いてきた。僕は、これから生きるためには高校ぐらい出ないといけない、と言うと亡霊は、生きるために苦痛を通るのか?したくもないのに勉強をする道に進むのか?と聞いてきた。僕は、うん、と返事をした。すると亡霊は、いいかよく聞けよ、これは極端な例だが、ある人間が事故によって体が動かなくなったとする、しかし彼には意識があり、体が動かないことを苦痛だと思ってる。果たして彼は生きていると言えるのだろうか?心臓が動いており、あとは苦痛を常に感じる日々を。
僕は、学校生活が本当に苦痛だけか分からないし、そもそも俺の未来が明るいか、暗いかはかはわからない。けどその人間の未来は暗いことが分かってる。例えが、極端過ぎるよ、と答えた。亡霊は怪訝な顔をしたが、お前がそう思うなら仕方ない、と言った。
しかし、正直なところ亡霊の言ってることは分からないでもなかった。生きるとは苦痛を感じてまですることなのだろうか。もし僕に未来がないとしたらきっと僕は勉強しないで今を楽しむだろう。もし、僕が例え話の人間みたいになったら果たして生きていると言えるのだろうか。
僕は、結局未来があるというのを自分に暗示のように言い聞かせ、実際にそうなるかどうかも分からないようなことは考えるのをやめた。
そして、明日は高校の入学式である。