始まり
それは確か小学校2年生の秋。僕は校庭で友達と鬼ごっこをしていた。僕の焦点は鬼に当てられていた。いかにして生き残れるか、そればかり考えていた。
そのせいで僕は不注意になっていた。段差に足を取られ頭を地面にぶつけたのだ。
空の色が霞んで見え、空間が歪み、意識を失しなった。
僕はその後のことは覚えていない。後に母親から一時的に記憶喪失になっていた、と聞かされた。一週間後には記憶喪失ではなくなっていた。しかし、戻った記憶は、記憶喪失になる前の記憶だけであり、今だに記憶喪失の時の記憶が空白になっている。
今思えばそれが原因だったかもしれない。
衝撃の時が中学2年のころに訪れた。
その時は数学の授業であった。しかし、僕は次の時間に来る英語の授業の宿題をしていなかった。よって、水が上から下に落ちるのと同じぐらい当たり前の様に英語の宿題をしていた。
だが授業中に他の教科の勉強をすると、先生の目の向きを確認しながらの作業のため、通常よりはかどらない。よって、少しずつ止まりながら作業をしていた。
ちょうど、common senseを訳す問題のところで先生の動きを確認していると
(常識)
と言う声が頭を流れた。一瞬困惑したが、答えが頭に浮かんだだけだと思った。
しかし、それと同時に僕の筋肉は硬直した。目の前に知らない人間が現れたのだ。
そして、僕は一瞬のうちに全てを了解した。扉の開く音がしなかったということは、壁をすり抜けたということ、誰も何の反応もしてないことから僕にしか見えていないこと、そしてこの人間は幽霊だということ。
しかし、どれも受け入れがたいことである。
可能性としては、花粉症の薬の副作用による幻覚である。
だが、今までそんな副作用なんて起きなかった。
そしてまた、
(私は貴方に取り憑きます。)
と言う声が頭に響いた。
この声はこいつの声か?僕の時間は完全に止まっていた。
すると、時間の流れの違和感を感じたのか、今までこちらを見向きもしなかった先生が首を僕の方向に向かって動かした。
そして案の定、僕の名前が呼ばれた。
「高橋、お前この問題解けるか?」
もちろん授業を葬式の念仏みたいに聞き流してる僕には分かる分けがない。しかし、頭に声が響くのだ。
(X=3、y=2)
僕は聞こえた音の響きどうり発音し、
「X=3、y=2 です。」
と答えた。すると先生は説明できるか?と聞いてきた。まるで、尋問ともとれるような会話に僕は思えたが、僕は恐れることはなかった。
(上の式から、xを求めて、そのxを下の式に代入すればyが分かる)
「上の式から、xを求めて、そのxを下の式に代入すればyが分かります。」
と答えた。
さすがの敏腕刑事でも、この答えに反論はできなかった。
敏腕刑事は僕に座るように命令した。
僕の目の前に現れた人間を見ると安らかな顔になっている。
その日は、もうこれぐらいしか覚えていない。
残りの授業は全てお経だったし、帰り道は死後の世界に行く道みたいだし、夕御飯は病院食のようだった。
そして、寝ようとしたら、またはあの人間が現れた。