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幼馴染が家族になったのだが  作者: あるみホイル
6/6

バットタイミング

今日の学校もあっという間に終わり放課後の演劇の練習か始まった。

もう演劇の練習を始めた頃から三週間経った。我ながら芝居は順調だと思う。

クラス皆の意見を取り入れつつ不自然な箇所やスポットの位置などの訂正、全員で一つの物語を作っていく。映画やドラマなどももしかしたらこんな風に作られているのかもしれない。

そう思うと俺たちは今まさに青春しているのだと思う。

文化祭まで後三日。

すでに皆は心身共に疲労しているようだ。

この衣装も徹夜続きで女子達が作ったらしい。そして背景の飾りや小道具などは男子が担当した。俺も少しだけ手伝うと言ったが「柏田は演技に集中しろ、こっちは心配ない」と言われた。まるでこれが青春だと言わんばかりにかっこいいセリフだ。

だが、そんな青春真っ只中に並行してある事が起きていた。

「いい加減にしてよ男子!あと文化祭まで一週間しかないのよ!」

「なぁにムキになってんだよ、恥ずかしい」

そう。ある事とは仲間割れである。

文化祭の準備などで疲れた男子達は次第にサボるようになり、ついに放課後に帰る奴まで現れた。

「皆で文化祭盛り上げようって言ったじゃん!」

「もう飽きちまったしつまんねぇし、女子達ががんばればー?」

「「「ハハハハッ」」」

そしてとうとう泣き出す女子も現れた。当然っちゃ当然だ。男子はそれを見て泣くほどのことじゃないと言った。確かに泣くほどのことじゃない。でもそれは俺たち、俺の価値観だ。女子にすればものすごく大切なことなのかもしれない。

今現在、男子と女子の仲は最悪だ。授業の班で話合う時も休み時間も男子と女子の会話は一切ない。

こんなんで文化祭を盛り上げられるのだろうか。これ以上悪い方向に行かなければいいが……


文化祭前の最後の休日。俺は相変わらずネトゲで休みを潰していた。

「お、ラッキー!欲しかったアイテムゲットだぜ」

「ぐわー!強い、こいつ小さいくせに一撃が強い!」

「マネーが貯まったし武器でも買い換えるか」

ほらよく、車のゲームとかでさコーナー曲がる時コントローラも一緒に傾ける奴いるじゃん。あれと一緒。なんか独り言多くなっちゃう。

……コンコン

やっぱ敵に攻撃されるとついつい「痛っ!」とか言ってしまうよな。別に、てか全く痛くないのに。

……コンコン

「さぁて武器も買い換えたしさっそく試しにフィールド出るか!」

……コンコンコンコン

ちっ、うるせ〜な。誰よ全く。俺は今手が離せないんだよ。それに今からイベントがあるから部屋からも出ん。めんどくさいしとりあえず無視だ。

「……居るなら返事ぐらいしろや!」

勢いよくドアが開くと同時に眉間にシワを寄せて怒っている渚がいた。

「んだよ、今取り込み中なんだよ邪魔すんな」

「な〜にが邪魔すんな、よ!わざわざお兄ちゃんに電話かかってるの教えに来たのに!」

俺に電話?誰かに電話番号教えたっけな?

「ちっ、めんどくせーな」

やっぱイベントって一番乗りしねぇといやなんだよな、なんかモチベーション下がるわ。

「はい、柏田です」

『あ、柏田?』

「……あ、あの誰ですか?」

『え?俺だよ、禿(かむろ)だよ。禿(かむろ)(しゅう)!』

……禿愁?禿……禿……禿。

『ほら、中学ん時同じ部活だった!』

同じ部活……禿愁。やっべ誰だっけな?中学の時、テニスやってたけど禿って奴いたっけな?

『……てか、今同じクラスなんだけど』

へ?同じクラス?

ヤバいマジで顔が思い出せない……あ、そうだ。

「すまん、少し待っててくれアルバム見てくる!」

『は?アルバム?おい、ちょっ』

前、沙羅の好きな人調べた時出したままにしててよかった。

「えーと、禿愁っと。禿、禿、禿、禿、あった。ん?あれ、こいつは確かすぐに辞めたやつじゃん」

そう。確かに一応同じ部活ではあったが忘れているほど短い期間しかいなかった。

俺が忘れているのも無理はない。よな?

「悪りい、待たせたな」

『で、分かったか?』

「まぁな。てかなんか用あったんじゃ?」

『おぉ!そうだった!実はな、劇でヒロイン役の人が熱で寝込んでるらしんだよ。でな、誰か代わりの人すぐ探さないと結構ヤバいんだわ。つーわけで誰かいねぇ?あっ!違うクラスの奴でもいいぜ!』

こ、このタイミングで熱ですか!マジかよ、結構相性良かったからポンポンと進んでたんだけどなぁ。しかも文化祭まであと二日だぜ?無理だろ、さすがにこの究極的に短い時間で役を覚えるなんざぁ到底出来ない。

「さすがに無理があるんじゃないのか?代役が見つかったとして、今から始めて本番までに間に合わすなんて」

『……分かってるさ。でもやっぱり諦めきれないっつーか、諦めるのが嫌っつーか。なんか皆の雰囲気悪いのは分かってるけど、それでも皆本番迎えたいんだよ』

仕方ない、な。極めて遺憾であるし不本意だし癪に障るが致し方ない。あいつに頼むか。

「分かった。一人心当たりがあるからそいつに聞いてみるわ」

『マジ?助かるわ!じゃあまた後で電話してくれよな!』

ガチャ……

(きびす)を返すと自室に向かいスマートフォンの電話帳からあいつの電話番号を捜す。

「……あった」

画面に表示されているのは峯岸沙羅の電話番号。俺は迷わず発信ボタンを押した。

短い呼び出し音の後、電話越しに不貞腐れているのような声で沙羅は電話をとった。

『あー?何よ?』

「普通はまず、はいもしもし。から始めるだろ」

『はぁ?別に、はいもしもしって言わなくてもいいじゃん。てか何よ?』

「お前演劇習ってるよな?」

『習ってるけど?』

「お前に頼みがあるんだが」

『……まぁ聞くぐらいいいわよ』

「俺らのクラスは演劇やるんだけどヒロイン役の人が熱で寝込んでるらしんだ。そこで本業つーか、得意分野が演劇のお前に代役を頼みたい」

正直沙羅が代役してくれると凄く助かる。あんまり話したことない奴とは中々上手くいかない。沙羅とはもう長い付き合いだからそれなりに出来るはずだ。

『ふーん……嫌』

は?嫌?待て待て。俺が頼んでるんだぞ、多分沙羅にお願いするのは初めてだ。俺の初めてのお願いが、嫌?こいつ、マジで性格ひん曲がってんな。

「んでだよ、頼むって!」

『だって文化祭まであと二日しかないんだよ?中途半端な仕上がりとか絶対いやよ』

「まぁ本気でやってる奴からしたら中途半端なのは我慢出来んのは分かるが、そこを頼む」

『……はぁ、分かったわよ』

「すまん」

『そんかわし、今度クレープ奢りなさいよ』

「おうおう、クレープぐらい買ってやるよ」

『で、練習はどうすんのよ?』

今、ちょうど昼か。さすがに明日かはじゃ間に合わなん。

「今からするぞ。時間がない。とりあえず台本持ってお前ん家行くから待っとけ」

『え?ちょっ、今から?私の部屋汚いしもう少し後……』

「時間がない。それにお前がガサツなのは知ってるし俺は綺麗好きでもないから心配すんな」

『え、でも準備とかが……』

「じゃあ行くからな!」

『ま、待ちなさ……』

ガチャ!

あいつの家まで走って数十分。自転車なら数分ありゃ着く。

よし、行くか。

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