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幼馴染が家族になったのだが  作者: あるみホイル
3/6

天災再び現る

「失礼しまーす」

「おっ、すまなかった柏田」

職員室に入るとカタカタとキーボードを叩く音と印刷機が稼働している音とでなんとなくうるさいように感じる。

先生に頼まれたアンケート用紙を手渡すと先生を微笑みながら言った。

「柏田、教室に変なやつがいただろう?」

はて、変な奴?……あ、あいつか。

あの小悪魔系読書女の事か。

「まぁ居ましたけど、それがなにか?」

「……どうだ?」

は?どうだ?意味がわからん。

最近の若い奴は抽象的すぎんだよ、もっと分かりやすくかつ簡潔に言えよ。俺、エスパーとか異能はないんだからな。

俺が先生の質問に困惑していると先生は悟ったような口ぶりで言った。

「彼女は結城(ゆうき)美楜(みこ)というのだが基本、放課後の教室でしかも一人で読書している奴は決まって奥手で恥ずかしがり屋が多いが、あいつはどうやら例外らしい」

はぁ……奥手で恥ずかしがり屋ね。

確かに見た目は物静かそうな感じだが、先生の言う通りあの小悪魔系読書女は例外のようだな。

ラノベなどでも読書女は一歩引いた立ち位置なのだがやはりラノベなどはただの妄想や理想を書いただけのようだな。読書女であんな小悪魔系な女、アニメでも観たことない。

「まぁ言いたい事はなんとなく分かります」

そう答えると先生はうんうんと頭を縦に振った。

「私的にあの子はお気に入りなのだがどうも周りの評判は悪いらしい」

「評判ですか」

「そう。あの子は柏田が転校したすぐ後に転校してきたのだが、未だ皆とは打ち解けようとはしていないんだ。この間も男子から話かけられているのにほぼ無視。女子からはそのことで妬みなどから無視されている。私がどうして無視するんだ?と聞いても一向に話す気配はないしどことなく私を毛嫌いしているようにも思える」

さすが小悪魔系読書女。

男の心理を分かっているな。

男は基本追いかけるのが好きだ。ほら、よくテレビでしてるだろ。砂浜でニコニコと楽しげに彼女を追いかける彼氏。あれだ。

だが女は基本受けであるからあの小悪魔系読書女のような態度を男子にしているとそりゃ「なんかさーあの転校生高飛車じゃね?」「あー分かるー」「あんたらみたいな男子は相手にしないよーみたいなさ!」「見ててマジウザい」となる。

あの小悪魔系読書女が何故男子を無視するのかは分からんがあいつは多分敵が多いだろうな。

「まぁ俺が知ったこっちゃありませんがね」

「何を言うか柏田。あの子は同じクラスメイトだろう。助けてあげようとは思わないのか?」

「確かに同じクラスメイトではありますが家族じゃないし親戚でもないし、何よりさっき初めて会話したんですよ言わば俺とあの子は顔見知り程度。そんな顔見知り程度の俺があの子を救うなんておこがましいでしょ」

先生はため息を吐きながらおでこに手を置いている。

「あ、友達待ってるんで帰ります」

「こら柏田逃げるなー!」


ああいうめんどくさい場合は付き合っていたら巻き込まれるから逃げるのが正しい対処法だ。RPGとかでも雑魚敵を相手にするのめんどくさいから逃げるを選択するだろ。あれと一緒だ。

さて帰るか。

「お、待ってたぜ柏田〜」

どうやら先に部活が終わったらしい。

「すまん。少し手間取ってな」

「いいよいいよ、さっ帰ろう」




朝……暑い。

俺は寒いのは大っ嫌いだが暑いのは大丈夫、のばず、なのだが……「暑すぎるだろ!」

あまりの暑さに飛び起きるとクーラーが故障していることに気づく。

「あぁくそ、どうりで部屋がサウナ状態なわけだ。俺、多分痩せたなこりゃ」

汗でビショビショのTシャツとズボンを洗濯籠の中に入れ仕方なしにシャワーを浴びる。

はぁ〜、朝から嫌な事で始まっちまったな。

髪をタオルで拭き、髪を乾かし制服に着替える。

再度、鏡の前に立ち歯を磨く。

いやぁそれにしても俺の顔はそこそこだと思うんだがな。モテる条件として第一に清潔感。第二に容姿。第三に抱擁力。らしい。

まず第一クリア。第二……クリアだよな!第三は正直自分じゃ分からんとこだ。だって自分で「俺抱擁力あるんだぜ」とか言うとおかしいだろ。自分で自分抱けないからな。

うむ、よし!

今日もモテモテになるためにがんばっていきますか!

朝食のパンをそそくさに食べ終えるとその勢いのまま玄関を飛び出した。

自転車を漕ぎ始めると昨日同様、生暖かい風が顔に当たる。

学校に着き自転車を学校が指定している所定の自転車置き場に停める。

「あ!ゆーと!」

俺は一瞬で察した。だからまるで気づいていないような素振りで自転車置き場を後にしようとするが、まぁそれを当然止めるわな、こいつは。

「何逃げてんのよ!」

「別に逃げてる訳じゃない」

キッパリそう言うと怪訝そうな顔で睨む。

「世界では様々な天災が存在する。例えば、地震や暴風に積雪。人々はこの天災から学びそれを予め最低限の被害で抑えようとした。つまり今のは逃げているのではなく回避したんだよ」

「な、何よ!!私を天災って言いたいの⁉︎」

「端的に言えば、そうだ。じゃ」

クルッと反転して歩きだすと物凄い力で右肩を掴まれ、物凄い殺気を感じ振り返るとまた物凄い剣幕で目をしきりにピクピクさせている。

「あ、あんたは絶対……許さん!」

「お、おぉ……ちょ、ちょっと待て、な?話せば分かるはずだ。お前もそこまでバカじゃないはずだろ?」

「はぁ⁉︎私がバカって言いたいわけ⁉︎マジでムカつくんですけど!」

こ、これはもう何を言っても聞かないだろう、な。

「見て見て、またやってるよ」「相変わらず仲良いよね、あの二人」

少し離れた場所から俺達のケンカを見ていた二人組みの女子が笑いながら言った。するとこいつは物凄い形相でその女子達を睨み言った。

「あぁ⁉︎何か言った⁉︎」

お前は田舎のヤンキーか。もう少し優しく言いなさい。「あら、あなた達一体何を言ってるの?殺しますわよ?」みたいに言えば優しく感じるだろ。ん?最後のいらないか。

「「す、すいませんでしたー!」」

気迫に押された二人組みはアタフタしながらその場を走り去って行った。てか助けてよ!

「さぁこれでじっくりお話できるわねー」

ははっ……あーマジで今日は厄日だわ。ははっ……


「痛つつ、全く手加減しろよな」

「あんたが余計な事言うからでしょ?」

まぁ確かにそうかもな。だが、だからこそお前は天災なんだよ。

「お〜い!沙羅〜!」

廊下を歩いていると後ろから隣の天災を呼ぶ声が聞こえた。

「もう、峯岸さん困るでしょー」

こうゆう場合は変に気を遣われては嫌なんで退散するべし!だな。

「じゃー俺先行くから」

とりあえず言うと天災こと峯岸(みねぎし)沙羅(さら)は手を適当に振った。

ちっ、可愛くねーな。もう少し残念そうな顔とかしてみろよ。ラノベじゃ需要あんだぞ!ちょっと切なそうな表情!

まだ暑さの余韻を残している九月の廊下を一人歩く。


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