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幼馴染が家族になったのだが  作者: あるみホイル
2/6

暑いね、四国中央市

放課後。

それは人生の分岐点と言ってもいい。

ある者は部活で汗を流し、またある者は楽器を鳴らしたり風景を写生したり読書をしたりと自分の選んだ部活を授業で疲れた頭の次に身体を疲れさせて青春を楽しむ。

そして部活で成績がいい者は大学などに勧誘され色々な、主に金銭面だが家族の負担が軽くなりなおかつそのまま行けばプロになることだってできる。

部活はそうゆう意味で人生の分岐点と言ってもいい。

では部活をしていない者は負け組か?と聞かれれば実際そんなことはない。

部活をしていない者でも将来を約束される者も存在するのは事実だ。

今の奴らは何かあればすぐに個性個性と言うがそんなに個性が欲しいなら部活をしていない奴の方が少ない帰宅部の方が個性あるぞ。

「お前部活は?」と聞かれれば「部活?やってねーよ」の方がなんか余裕ありそうでかっこいいしよ。

「てなわけで俺、部活はしませんから」

そう言うと先生は呆れた顔で額に手を当てている。

「なぁ柏木、前はもっと活気に溢れて元気がコップからジャバジャバこぼれるほどあったのに一体どうしたんだ?」

「……一言で言えば人と違う青春をしていきたい、と考えてます」

「で、その結果がそれか」

例えばサッカー、野球、バスケなど身体を動かし進行していくスポーツ部活は暑苦しい。

集団意識やチームワークとか言うがそもそも一人でどうにかしようなんて考えてる奴なんて何人いるんだ?

失敗しても誰かがカバーしてくれる。ミスをしても誰かが慰めてくれる。そんな考えでやってるからチームワークチームワークと集団でしか何も出来なくなるんだよ。

テニスやバドミントンとか見てみろよ責任を全て自分一人で背追い込みプレッシャーに倒されまいと奮闘している(さま)はマジ一匹狼!かっこいい!

「部活をする青春があるなら部活をしない青春もありかと」

先生は椅子に背を預け腕を組んでうーんと何か考えている。

いや、何も考えないでいいんですよ先生!

「そうだな!それもありだな!」

よっしゃー!先生がバカでよかった!

「じゃあ俺はこれで失礼します」

「おう!気を付けて帰れよ!」

へっ、ちょろいな先生。

一番の理由はめんどくさいからなんだよ!

さぁ帰ってネトゲを……

「あっ、少し待て柏木」

ま、まさかバレたか⁉︎

俺は恐る恐る後ろを振り返ると先生が深妙そうな顔でこちらを見ていた。

なにその顔!こっちが心配になるからやめてよね!

「実はだな……」

先生が一息おくものだからついつい喉を鳴らしてしまった。

「教室にアンケート用紙を忘れてきてしまった。取ってきてはくれないか?」

んだよ!そんなことかよ!寿命縮まるだろ!

「あーはい。了解です」

「ありがとうな柏木」

引きつった顔のまま相談室を出るとシャツと肌をまとわりつく汗が体中から溢れ出していくのが分かる。

八月を過ぎ九月になると何故か暑さがより一層増しているような感じがしているのだが、こうも暑すぎるとインドアな奴らはそれを口実に遊びに行かなくなる。

確かに暑い。しかしだ、暑いのがなにも悪いわけではない。

暑ければ当然汗が出る。

汗が出る理由は暑すぎる体温を汗で冷ますためだ。それと冬によくトイレが近くなる人が大勢いるが、あれは寒いと汗が出ず塩分やらアンモニアなどが汗として排出できないからトイレが近くなる。つまり夏はトイレが遠くなる季節である。

まっ、俺は家でクーラーで部屋を冷やし過ぎて一日に何回もトイレに行くがな。

「っと、もう教室か」

ドアを開き教室に入ると俺の席の前に女生徒が椅子に座り読書をしている人がいた。

俺は存在に気づきながらもアンケート用紙探すため教卓の中を見たが何も入っておらず困惑しているとパタッと本を閉じる音がしてそちらを見た。

「君が探しているのはこれかな?」

彼女は自分の机の中からプリントを取り出し俺に見えるようにプリントを持った手を突き出した。

「あ、それは」

「ふふっ、先生忘れてたから後から持って行こうかなって思ってたんだ」

なんだそうなのか、なら俺は用無しだな。彼女に持って行ってもらおう。

「んじゃそれ先生に渡しておいてくれ」

「女の子に持っていかすんだ〜ふ〜んそうなんだ〜」

チッ、めんどくせーな。それにそんなニコニコしながら言うんじゃねーよ。なんか怖いだろ。

「あー、じゃ俺が持ってくよ」

彼女が持っていたプリントを受け取ると彼女はありがとうと言った。

俺はプリントを受け取りそのまま教室を出て職員室に向かった。

う〜む、あんな奴いたっけな?

顔はまぁかわいい、性格はやや小悪魔的。

にしても放課後の教室で一人読書なんてボッチか?つか家で読めよな。わざわざ学校で読書する必要あるか?家で一人静かな部屋で誰にも邪魔されないように読んでるほうが集中できると思うんだがな。やっぱ人それぞれなのか?俺は本は読まないがソシャゲとかしてる時外の音が入ってくるの大っ嫌いなもんで他人に邪魔をされようものなら即刻部屋から退場させれる自信があるぜ。

それにしても何にも変わってない皆見たらなんだか凄く落ち着いた。皆だけじゃない。校庭、階段、グラウンド、廊下。何にも変わっちゃいない。

変わったのは俺だけ。

自分で言うのもあれだが俺は変わった。自分でも分かるぐらいに。

「キャラを維持していくのは案外しんど…って、なんだあれ?」

俺の視線の向こうにまるで戦車のキャタピラーに似せて作ったダンボール製の物体が廊下の向こうから物凄い勢いで近づいてくる。

「相変わらずこの学校は変人の集まりだな」

物凄い勢いですれ違ったダンボール製キャタピラーはピタッと止まり不自然な動きでゆっくりバックし始め、俺の横で止まるとキャタピラーの中から荒い息で汗だくの奴が出てきた。

「よ、よぉ〜柏田〜」

「お…おお、久しぶりだな」

キャタピラー変人は小学校からずっと一緒だった同級生だった。

「か、柏田…はぁはぁ今、帰りか?」

とりあえず一旦息を整えろ!そんなに息が荒いとなんか気持ち悪いだろ!

「まぁ先生に頼まれたこのプリント渡したら帰る」

「そ、そうか…なら少し待ってくれ、お…俺もあと一往復したら帰れるから」

「わ、分かった」

あまりの迫力についつい返事をしてしまい一緒に帰る約束をこぎつけられた。

別に一緒に帰りたくないというわけではない。

動物の話で狼は基本群れで行動し、単独で狩りなどはあまりしない。しかしごく稀に単独で行動する狼が存在する。

これが《一匹狼》の言葉の由来だ。

人間も基本は群れで行動する。

だが、例えば十人集まった集団がいたとする。他人からしたらその中の一人は集団の中の一人だが一匹狼、つまり一人で行動していれば集団ではなく一人だけだからそいつだけに目がいく。が、リスクもある。

それは「あいついつも一人だよな」「友達いないんじゃね?」「ボッチ?マジか〜」となってしまう。だから程よくクラスメイトに話しかけよう。そうすれば「あいつボッチじゃね?」がなくなる。

「うおぉぉぉー!!」

迸る覇気でキャタピラー(ダンボール製)を動かし去っていった友をしばし暖かい目で見送り、自分に課せられたお遣いの任務を再度実行する。

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