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幼馴染が家族になったのだが  作者: あるみホイル
1/6

我が愛しの街、四国中央市!

幼馴染っていいよね!ね!ね!


さて、今回は少し変わったシチュエーションのラブコメです。

思ったことありませんか?幼馴染が家族になるって⁉︎不思議な感覚でしょうね。

暇つぶしに読んでください


相変わらずこの街は臭いな。

大体この街の印象は?と聞くと大抵「あぁ、あの臭いとこ?」と言われる。

くそっ、バカにしてんのかよ。臭いのは工場地帯の道路だけの話だろうが。

その言い方だと街全体が臭いみたいになるだろうが。

それにだこのなんともいえない匂いのおかげでお前らは印刷ができたり本が読めたりティッシュが使えているんだぞ。花粉症の人なんてティッシュが無いと春と秋は大惨事だろ。

まぁだがあのド田舎の村よりはかなり空気が悪いのは認めよう。

しかし!俺はやはりこの街が大好きだ!

この街のシンボルとも言える三本の巨塔。

日本夜景遺産の百景に選ばれた展望台。

天皇様もお口に召された抹茶大福。

一つ山を越えれば秋桜(コスモス)が満開の公園。

そして何よりこの街は映画の舞台にもなったいわばロケ地もある。

……だが、この街にはスタバとセブンイレブンが無い。

俺的にスターバックスとセブンイレブンが無い街は田舎なのだがまさか俺の街も田舎だったとはな。

「やっと帰ってきた〜」

おっと、どうやら脳内で独り言を言っている間に我が家に到着してしまったようだな。

親父は車のエンジンを停止させぐぐっと背を伸ばした。

お疲れ様だな親父、とりあえず酒呑んでゆっくりしとけよな。

「お父さんしんどいとこ悪いけどお土産とバックよろしくね」

おい母さん、そらゃ鬼畜の所業だ。せめてお土産ぐらい持ってやろうぜ!俺は自分のバックで手がいっぱいだから無理だからな!


「始業式、明日か」

まぁそれはさておき田んぼと山と民家しかないド田舎から帰還したし早速……

カリカリカリ。

パソコンの運行音が静かに六畳の部屋で響く。

う〜ん!これ!これだよね、やっぱりうんうん!

なんだかパソコンの起動と同時に俺のアゲアゲなテンションが起動しちゃうぜ!

まぁ変なテンションは終了して真剣にMMORPGの世界にプラグイン!

っと待て、暑いよ。クーラーつけないと頭クラクラ〜!……おっ!一気に空気が冷たくなったぞ!凄いぞ俺のギャグ!


「くっ、中々やりおるな貴様。しかし浅い!隙だらけよ!」

ふっ、敵がまた一人逝ったようだ。南無南無。

ふと俺はパソコンの画面に表示されている時計に目をやると時刻は既に明日と思っていた始業式が当日になっていた時間だった。

うむ、そろそろ寝るか。

パソコンをシャットダウンしてゲームのしすぎでボーとする頭から新品の布団にダイブして目を閉じるとあら

不思議、僕もシャットダウンだ!

× × × × ×



ピピピピ!

うおぉ、暑い……うるさい

目覚まし時計のてっぺんを叩くと電子音が鳴り止む。

まだ完全に目が開かないが転校初日に遅刻とあっては笑いもんだ。

さぁて準備すっか。

俺は素早くベッドから跳ね起きるとクローゼットに仕舞ってある制服を取り出す。

懐かしいな、もう転校した日から一年と半分経ったのか、光陰矢の如しとはまさにこの事だ。

着替えを済ますと部屋を出てツルツルのコーティングを施された廊下を五歩進むとすぐさま階段があり慣れたように軽快に一段一段降りる。

リビングの扉を開け机を見るともう既に先客がいた。

「う〜す」

俺が適当にあいさつすると適当に返される。

「う〜ん」

ちっ、全く俺に似て適当な奴だな。もう少し可愛げがあってもバチは当たらんぞ。

「母さんは?」

「んー?もうお仕事行ったよ」

チラッと時計を見ると俺も悠長に妹と話している時間など無いことに気づきそそくさに朝食を済ます。

「行ってくる」

「はーい」

さて一応俺は転校生だから皆よりやや遅く行かなければならない。そのことを考慮して半分は歩いてそこから自転車に乗るか。

にしても一年やそこらじゃ変わらないもんだな。昔スプレーで落書きしたのまだ残ってるし、あのコンビニの店員まだ居るし、まー俺は変わったがな。

あの事件以来、皆が知る俺はいない。それが幸か不幸かは分からんがある意味では幸だろう。なんせ今の俺はザ・クールだからな!

とそろそろ自転車乗るか。

自転車に跨りペダルを漕ぎ始めると顔に蒸し暑い風が当たり涼しのか暑いのか分からなくなる。まぁだがこの風は嫌いじゃない。

程なくしてついに辿り着いてしまった。

「うむ、三島高校か……」

まさか再びこの正門を通る時が来ようとはな、人生って何があるか分からないもんだな。

自転車から降り自転車を押し歩いていると見慣れた人影がこちらに向いて歩いてくる。

「やぁ柏木」

くそっ、転校初日に始めて見た人がまさかあんたとはな、懐かしいようで憎たらしい顔してるよ相変わらず。

「おはようございます先生」

ぶっきらぼうに目を逸らしてあいさつすると先生は満面の笑みで俺の肩に手を置いた。

「柏木、私はお前が居なくてどれだけ悲しんだことやら」

先生はうっうっ、とわざとらしく泣く真似をして肩に置いている手にどんどん力が入っている。

はぁめんどくさいんだよなこの先生。

「ちょっ、痛いっすよ」

俺は肩に置いている手を払うと先生は目を見開き驚愕しているようだった。

無理もない、何せこのくだりがきたら俺はいつも「俺もさみしかったよ先生」なんて言ってたからな。

だがそれは過去の話だ。

現在の俺はザ・クールを極め、悟りを開いた高校生なのだ。

さぁどんどん驚き、驚嘆しろ。

「か、柏木、あんた……」

そうそう、その顔だよ!いい顔してるよ先生!

「なるほど、私は知っているぞ。その冷たい態度は好きな人には逆に冷たく接しあえて好感を下げるようにするあれだ。そうか柏木、私が好きなのか……だが私も一教師として生徒と付き合うわけにはいかんのだよ、堪忍してくれ」

何言ってんだこの腐れ教師。

あ、待てこの展開はめんどくさいあれだ。

……よし、逃げよう。この人といたら昔に戻ってしまいそうだ。

「じゃ俺、教室行くんで失礼します」

「待て柏木」

行こうとする俺を引き止め先生は言った。

「私はお前の担任だ。一緒に行こう」

おっとマジか……これは非常に危ない予感がするぞ。

またこの先生に引っ張り回されるんだろうな、ハァ……

× × × × ×


「よし柏木ここで待ってろ」

そう言い先生は教室に入っていった。

教室からは様々な話し声が交じって聞こえる。

「お前ら席に着けー」

その一言で騒がしかった教室は暫くして静かに落ち着いた。

「よーしホームルーム始めるぞ」

そして先生は一人一人生徒の名前を読み上げそれに皆は応えた。

今日の予定をダラダラと話し先生は本題に移行した。

「実はだな、今日は転校生が来ている。お〜い入ってこい」

転校生が来た!ということで教室は再びざわつき始めた。

「おい転校生だってよ!」「男かな女子かな⁉︎」「どこ出身だろ!東京?」

皆、悪いがその期待は大ハズレだ。

俺はクールにズボンのポケットに手を入れ期待に沸いている教室に足を踏み入れた。

するとどうだろう。一気に教室が静寂に包まれる。

「柏木、一応自己紹介な」

俺は首を縦に振ると教室全体を見渡しながら自己紹介を始めた。

柏木(かしわぎ)湧斗(ゆうと)です。趣味は散歩、特技はかくれんぼ。将来の夢は無い、以上」

シーンとする教室。

すると一人が小さな声で言った。

「か、柏木……柏木‼︎」

その一声がきっかけとなり教室は俺が帰ってきたことで祭り状態だ。

「おお柏木‼︎」「何で帰ってくるなら連絡してこなかったんだよ!」「つーか先生知ってたの⁉︎」

この空気、皆の声。懐かしいな。

危うくこの空気に飲み込まれそうだ。

盛大に盛り上がる空気を裂いたのは先生の一声によるものだった。

「はいはい、静かにー!では柏木、あの席に座ってくれ」

先生は中庭を眺めれる教室の一番隅の窓側の席を指差した。

さすがだ先生。

俺があの席が好きってこと憶えてるなんてあんた最高だよ。惚れちゃいそう!冗談だが……

皆の視線をヒシヒシと感じながら自分の席に座るとまるで何事もなかったように先生はホームルームの終了を告げた。

よし、ここまでは順調だ。

後は素が出ないようにザ・クールを執行していく。

完璧だ。さぁ驚き驚嘆しろ古き友よ。

ホームルームが終了してほんの少し時が過ぎると校内に響き渡る懐かしい鐘の音が黒板のやや上に設けられた二つスピーカーから鳴り響いた。

そしてチャイムの音が鳴ると同時に数人の見慣れた顔が現れた。

「おぉ!柏木だ!」「なんかお前老けたな」「あっちの学校どうだったよ⁉︎」

数人からの質問などが重なり一つ一つ返していくには少々難しい。

「お前ら、いっぺんに声を出すな。何言ってるか分からんだろ」

そう言うと奴らは少し怪訝そうに俺を見て暫くして一人が聞いた。

「お、お前ホントに柏木か?」

何言ってるんだ。俺は柏木湧斗に決まってるだろ。

まぁ無理もない。ザ・クールを極めた俺を過去の俺と同一人物にするとあまりにも違いすぎる。

よし、さらにここでもう一枚カードを出そう。

「当たり前だろ。それよりすまないが俺読書したいんだ悪いな」

バッグの中からスイフト作のガリバー旅行記を取り出し枝折(しおり)で挟んでいたページを開ける。

「か、柏木が読書だと……」「あっちで一体何があったんだ……」「柏木が柏木じゃ、ない……」

ふっ、どうだ。驚愕のあまり失禁しそうだろ。いやそれは言い過ぎだな。

だがこれで過去の俺の印象は崩れ去っただろう。後は新しいザ・クールな俺の印象をこいつらに植え付けてやるだけだ。

そして俺は辿り着いてやる。叡智(えいち)にあふれ動揺の一端をも見せず究極のクールを追求しモテモテな学園生活を毎日毎日……

「ゆーと‼︎‼︎」

怒声にも近い叫び声がした方向を見ると鬼の形相をした腐れ縁とも言っていい奴が教室の入り口にいた。

俺が唖然としていると奴はドカドカと音が鳴りそうな勢いで俺に向かって歩いてくる。

そして奴が俺の前で止まると右手を机に叩きつけた。

「ゆーと!あんたいつ帰ってきたのよ⁉︎」

ザ・クール、ザ・クールに、だ。

「よう、久方ぶりだな」

よしザ・クールだ。

「んな挨拶はいいのよ!なんで連絡ぐらいしてこないのよ‼︎」

おお、相変わらずうるさい奴だな。もう少し感情を抑えられないかいね。俺を見習え俺を!

「まぁなんだ。色々やってたら連絡できなかった」

「色々って何よ!色々って!」

顔が近いよ!もう少し離れろよ!動揺するだろ!

俺は背を反らしながら顔を遠ざけた。が奴の追及は終わらない。

「私に何も言わないで突然転校はするし突然帰ってくるし勝手すぎるでしょ⁉︎」

言い終えると俺は間髪入れずに反論した。

「いや何でお前にいちいち連絡しなきゃいけないんだよ。お前は俺の母さんか?」

そう言うとぐうの音も出ないのか黙り込んでしまった。

もう少し静かになっているのかと思えばお前は何にも変わってないみたいだな。

こいつ顔はかわいいんだがな……いやぁ残念系だ。

「もういい!知らない!」

そうそう。それでいいぞ。静かに去ってくれ、お前がいると色々大変だからな。


とりあえず始業式を終わらし後はもう帰宅するだけみたいだ。

へっ!作戦は良好だ!このままキャラを維持していけば学園生活を最大に楽しめるはず!

この状態を維持していくと段階は第二フェイズに移行する。だがまだ第二フェイズは早い、時を待つべし。

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