騎士視点プラスあるふぁ
エリオット視点と、第三騎士団副団長イリアス視点が入ります。
私はユリ様と付き合うようになりました。まるで夢のようだと思う。顔を赤らめて私に微笑む彼女は、とても可愛らしい。
そんな彼女は、私の事を美しいと誉めそやす。彼女は私の事をどういう風に見ているのだろう。分からない、彼女の美的感覚は変わっているのかもしれない。
カルロ殿を見ても褒める事はしないのに、本当に変わっている。女性に人気の第一騎士団と第二騎士団が苦手らしい。最も不人気だとされる第三騎士団が最も落ち着く、と彼女は言う。……やはり変わっている。でもだからこそ私にも目を向けてくれたんだと思うと、嬉しくなってしまう。
しかし最近ユリ様の様子が可笑しい。
妙にそわそわしていて、私と目が合うと逸らす。それに避けられている気がする。
「あ」
第三騎士団に所属する副団長、イリアス殿と楽しそうに会話しているユリ様を見かけてしまった。思わず隠れてしまった。ドキドキと心臓が妙な音を立てる。
イリアス殿は、私よりも少しスピードが落ちるものの、力が少し強い。第三騎士団の中では、割とモテるタイプだと言って良い。そのイリアス殿と楽しそうにしているという事は、つまり。
……ああ、やはり。私ではダメでしたか。納得してしまう所もある。どう見ても私と彼女では不釣り合いなのだ。誰がどう見ても。
彼女を見たなら、男は10人中10人が好きだと答えるだろう。コンラド殿でさえ、俺がもう少し若ければクドイてた、などと言う位だ。
「盗み聞きですか?団長」
「あ……」
苦笑を浮かべたイリアス殿に見つかってしまった。私は何も言えず、ただ俯く事しかできない。首のあたりまである毛皮はとても綺麗に整えられている。色は灰色で、どこにでもあるような色合いだが、彼にはとても似合っている。どうやらユリ様とは話が終ったらしく、ユリ様は見当たらない。
息をはいて、イリアス殿に向き直る。
「いえ、聞いてはいません……」
「そうでしたか?なら、良かった」
ニヤニヤしながら肩を竦めるイリアス殿に、イラつく。もやもやと胸の内にドス黒い感情が生まれるのが分かった。正直、殴りたいと思った。最近ユリ様には避けられているのに、イリアス殿はあんなに楽しそうに話していた。
でも、そうか。こんな事でイライラしている私になど、彼女が愛想を尽かすのも当然なのだろう。やはり、私ではダメだった。
どんどんと落ち込んでいく私を見かねたイリアス殿がバンバンと背中を叩いてくる。
「そう落ち込みなさんなって!団長!そんなんだから根暗って言われるんですよ!」
「……」
反論のしようもなく、私の気分はさらに落ち込む事になった。イリアス殿はちょっと困ったように笑う。イリアス殿がモテるのはその明るさもある。
ユリ様は別に暗くないと励ましてくれるが、そうは思わない。やはり私は暗い。私ではダメだ。彼女をもっと幸せに出来る方がいいだろう。他の誰かが……そう考えただけで、胸の奥が苦しくなる。嫌です……他の誰かのものになるだなんて。でも、私では釣り合わない、幸せにしてやれない、どうしようもない。
「あーもー!」
イリアス殿がわしわしと頭を掻き毟る。イライラしているのだろう、私の根暗な考えを察して。咳払いをしてから、イリアス殿が喋る。
「えーと、その!なんといったらいいか!俺の嫉妬は置いといてですね……とにかく!団長はもっとユリ様を信じた方が良いですよ!」
そう言ってバンと背中を叩いてくる。そう何度も叩かれると痛くなってくる。イリアス殿の力は結構強いのだ。
イリアス殿の言葉を咀嚼する。ユリ様を信じる?……私はユリ様を全面的に信頼している。何を疑う事があるというのだろう?
私が首を捻っているのを見て、イリアス殿が大げさに溜息を零す。
「だー!団長は全く!いいですか!?とにかく信用してあげて下さい!自信を持てとまでは言いませんから!ユリ様の事を信用してください!」
……イリアス視点……
情報や避難誘導など速さを求められる機動騎士、それが第三騎士団だ。その騎士団長、エリオット・アルファ・ブランシュは20歳という驚異の若さでその地位に上り詰めている。
性格や、容姿はともかく、その速さは折り紙付き。第一団長コンラド、第二団長カルロを同時に相手してもかすり傷を負わせる事もままならない。通称「逃げのエリー」とも言われている。それだけ素早いのだ。故に団長にもなっている。その実力だけは認めても良いのだが、どうにも彼は暗い。「逃げのエリー」と揶揄されても反撃すらしない。実力で騎士団長の座に就いたのだから、もっと自信をもっても良いと言うのに。その態度がさらに他の騎士の反感を買う事もある。
しかも最近じゃユリ様の事もあるから尚更だ。誰が見ても美しいと思う彼女と、根暗で逃げる事が取り柄の団長では、まるで釣り合いが取れていない。
「エリオットの好きなモノはなんですか?誕生日なんですけど」
キラキラとした瞳で聞いてくるユリ様に溜息が出そうになる。どうやら、もうすぐ団長の誕生日が近いと聞いたらしく、こそこそと団長の事を嗅ぎまわっているらしい。
彼女は団長の事を盲目的と言って良い程好いている。
投げやりな返事をして、むぅっと頬を膨らませている姿が死ぬほど可愛い。なんだって団長なんだ。羨ましい。俺もその日に「異界の君」が来ると分かっていれば助けに行ったのに。
タシタシと鳩尾を殴ってくる姿が死ぬほど可愛い。なんなんですかね、この方は。しかも全然痛くないですし、正直団長をブチ殺したいほど羨ましいですよ。まぁ団長に攻撃が当たらないので、無理ですが。なんなんですかね、あの人。
速すぎなんですよ。馬鹿なんですか。
ユリ様の質問は全て団長の事ばかりだ。はいはい、ご馳走様です。投げやりに質問に答えていく。筋肉が付きにくい事がコンプレックスなので、トレーニンググッズだとか、プロテインが好き。あと髪が長いので、シャンプーだとか、ブラシとか毎日使える。
ちなみにブラッシングを俺は毎日している。短毛なので、コンラドさんみたいに毎日絡まる様な事はない。あの人も毎日苦労してるみたいだ。長毛じゃなくて良かった。まぁ、あの人の場合、奥さんが毎日やってくれていると惚気てたけど。はいはい、ご馳走様です。
必死になってメモしているユリ様を眺めていると、チラリと陰鬱な空気をまとった銀色様が見えた。……団長、なんだってそんなに暗いんですか。
「ありがとう!ふっふっふ!ようし!これで行ける!」
嬉しそうに微笑みながら、団長に気付かないまま歩き去るユリ様。それを見送ってから、陰鬱な団長の所に行く。
「うあ~……」
思わず天を仰いで溜息をはいた。なんだかもうキノコが生えて来そうなくらい暗い。あれだけ好かれているのに、全く自信がないみたいなのだ、団長は。
「盗み聞きですか?団長」
「あ……」
俺に気付いた団長はまた俯く。……暗い!なんでそんな暗いんですか!俺とユリ様が喋ってたのがそんなに嫌だったんですか、そうですか。でもね、俺はあんたの惚気話を聞いただけなんだよっ!ちくしょうめ!
団長はキョロキョロと辺りを見回す。恐らくユリ様がいないか探しているのだろう。団長も大概盲目的にユリ様を好いている。そりゃもうあれだけ綺麗な人に好かれるだなんて、この先の人生に有り得ないだろうから仕方ないだろう。
「いえ、聞いてはいません……」
「そうでしたか?なら、良かった」
わざと厭味ったらしく言う。あれだけ好かれているんだ。ちょっとくらい嫌がらせしてもいいだろう。誕生日祝いの相談だったしな!しかも内緒でやるとか張り切っていたから、聞かれたらまずい。くそぉ、なんで団長なんだ。こんな暗いのに!俺の方がまだ団長よりも恰好良いのに。カルロさんも滅茶苦茶悔しいだろうな!
「そう落ち込みなさんなって!団長!そんなんだから根暗って言われるんですよ!」
「……」
バシバシ叩いてちょっと嫌味を言う。すると、どんどん団長が暗くなっていく。じめじめして、目に潤いが……団長、ちょっと嫌味言ったからって泣きそうにならないで下さいよ。
なんだか、嫌味を言った俺の方が悪者みたいになってるじゃないですか。
「あーもー!」
わしわしと頭を掻き毟る。なんだってそんな自信がないんですか!ちょっと可哀想になってきちゃったじゃないですか!
「えーと、その!なんといったらいいか!俺の嫉妬は置いといてですね……とにかく!団長はもっとユリ様を信じた方が良いですよ!」
あれだけ団長しか見ていないのだ。そこはもっと信用してあげても良いんじゃないだろうか。そりゃもう……団長のどこがいいんだっていつも思ってますけども!ことスピードに関しては右に出る者はいませんし!取りあえず団長にもなれる位なんだからもっと自信をもって欲しいですよ!
そうなんですよもう!この俺を抜いて団長やってるんだ。もっと自信持って貰わなきゃ困るんですよ。ああもう、この人は全く!俺が支えてやんないと情けなくってやってられねぇよ。
つーか!何きょとんとしてるんですか!?俺が言った意味分かってないんですか!ああ、もうこの人は全く。
「だー!団長は全く!いいですか!?とにかく信用してあげて下さい!自信を持てとまでは言いませんから!ユリ様の事を信用してください!」
ユリが見たイケメンランキング
1位エリオット
2位ガレート
3位イリアス
4位カルロ
ランキング除外……コンラド←こわい
エルトリアの価値観での騎士団のモテ度
1位第二騎士団
2位第一騎士団
超えられない壁
3位第三騎士団
人物別ランキング
1位カルロ
2位コンラド
超えられない壁
3位イリアス
4位ガレート
超えられない壁
5位エリオット