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偵察中……

 エリオットが誕生日だと聞いてもサクッとエリオットが喜ぶものが思い浮かばない。エリオットが好きなんだけど、これで好きと言っていいのだろうか?いや、否だ。

 今までどんな厚かましい顔でエリオットと付き合っていると言っていたのだろうか?恥ずかしくて顔から火がでそうだよ。

 エリオットは優しくって、毛並がもっふもふで気持ち良くて、頬擦りして眠るとかなり良い夢が見られる。それで兎に角恰好良い。地球での俳優なんて目じゃないくらい恰好良い。見ているだけで幸せになれる銀色様。そんなキラキラしい人が私を「美しい」と言って好いてくれている。これ以上の幸せなんてない。

 地球じゃ全くモテなかったし、正直今でも現実味がないっていうか、夢なんじゃないかと思う。地球だと絶対エリオットに振り向いて貰えるなんてなかったと思うし、目にも入れて貰えないようなモブだっただろう。正直騙してる感が否めない。素敵で優しいなんてエリオットは言うけれど、私は絶対そんなんじゃない。むしろその言葉はエリオットに向けられるような言葉だろう。

 しかし、だがしかし!そう思ってくれてるなら、そう思わせるような人間に少しでも近づいて報いたい!自信なんて全然ないけれど少しでも近づける努力ってものをしても良いのではないだろうか!


 そうと決まればエリオットの好きなモノを偵察です!帽子を目深に被り、マントを羽織り、手にはメモ帳。名探偵のような気持ちで挑む。どうせなら内緒で祝ってあげて、驚かせたい。サプライズ精神は大事ですよ~。


「あ、ガレートさん」


 丁度通りかかったのは第三騎士団に所属するイケメン、ガレートさん。ガレートさんは髪を短く刈り込んでいて、くすんだ金色の毛並をしている。彼の変わっている所は、毛皮がこう……斜めになっている所だそうだ。左肩から右斜め下に向かって毛皮があるらしい。見た事がある訳じゃないけど、他の騎士団員の人が言っているのを聞いたのだ。だから、左腕には毛皮があるのに、右腕にはない、という感じになっている。シンメトリーになっていない、というのは非モテ要素らしい。

 彼もエリオットには劣るが、かなりのイケメンである。まぁ、この世界じゃモテない顔らしいけどね。絶対間違ってるよ……。書類を抱えているので、仕事中だろう。第三騎士団は戦う事よりも情報の伝達や書類仕事が多いのだ。だからエリオットは結構な時間机にへばりついている。まぁ、その姿が色っぽくてまた恰好良いんだけどね。戦うエリオットも勿論恰好良いけどね。


「こんにちは、ユリ様」

「こんにちは!仕事頑張ってください」

「はは、有難いです。女神の祝福とはこういう事を言うのですね」

「……」


 ドン引きだよ。素面でそう言う事言わないで貰えるかな。高まったテンションが落ちちゃったよ。皆さらっと褒め言葉言いすぎだよ。どうなってんの。私が女神ってガラじゃないでしょ。しかもイケメンのガレートさんに言われたからダメージでかい。ああ、つらい。イケメンに女神と言われてつらい。

 私のテンションが著しく落ちたのでガレートさんはあたふたしている。


「え、と。その!何か不敬な事でも」

「良いのですよ……」


 ふ、諦めてますよ……この世界の価値観を。いや、そのおかげでエリオットとも付き合えてるから良いんだけどね。


「そだ、ちょっと時間良いですか?」

「はい「異界の君」より高い優先順位などありませんよ」


 おう……ありがと。どうにも「異界の君」というのはこの世界ではかなり優遇されるような存在らしい。「異界の君」の知識もそうだけど、どうやらその子孫がかなり強い子供が生まれるようなのだ。だから私の存在はこの国で手厚く保護されている。

 強い子孫が産めるかどうかはちょっと分からないけど、手厚く受け入れられてる事は分かる。なにせ、何もしなくても給金が貰えるのだ。流石に何もしてないのは心が痛むので、お手伝いをやらせて貰っているけど。


「エリオットの好きなモノって何ですか?」

「ユリ様ですね」


 まぁ!私をプレゼントしちゃう?やだ、もー!……って違う違う。ノリ突っ込みしちゃったよ。

 というかガレートさん即答ですか!なにそれこわい!


「そ、そういうのじゃなくってぇ……えーと誕生日にプレゼント送りたいんだけど」

「ユリ様で良いんじゃないですか?」


 おっとセクハラ?セクハラなのですか!?私みたいな人間にセクハラしてもノーダメージだよ。私が胡乱な目でガレートさんを見つめると、ハッとしたガレートさんが真っ赤になった。そして先程よりもあたふたし出した。


「や!ち!違いますよ!?そういう意味でなくってですねぇ!団長はユリ様さえ笑ってくれれば幸せになるだろーって意味で!け、決してやましい意味では!!」


 慌てたせいで書類が幾つか落ちてしまった。私はそれを拾ってガレートさんに戻すだけの簡単な作業をしてみる。拾いあげる度に申し訳なさそうにシュンとする耳が物凄く可愛い。ま、エリオットには敵わないけどね!とかって惚気てみる。

 いやぁ、でも邪推してしまって申し訳なかったかな?純粋にエリオットが私を好きだと伝えてくれたんだよね……。

 そりゃ嬉しいんだけど……私は誕生日プレゼントをあげたいんだよねー。やっぱり本人に聞くしかないのかな?でも感づかれないかな?


「そーいえば、この世界だと誕生日って何するのが主流なの?」

「そうですねぇ」


 ガレートさん曰く。相手が女性だと、狩猟する所を見せて惚れ直させたりするらしい。そして獲った獲物を女性にプレゼント。

 相手が男性の場合だと、手作り料理をプレゼント。

 男同士だと共に狩猟しまくってみんなで楽しみ、女同士だとお菓子を作り合う。

 ケーキ囲んで蝋燭の火を消す……的なのはないらしい。言ったらガレットさんに「蝋燭勿体なくないですか?」と言われた。確かにそうだ。発展している国だとはいえ、無駄に蝋燭使っちゃ勿体ない。でもまぁ、ケーキを手作りでプレゼント……というのもあるらしい。まぁ、好みによるって事なのかな?

 むーん、そんな風に言われてもな。料理は得意だけど、ここの世界の材料で……

と言われたら自信はない。


 次に通りかかったのはイリアスさんだ。仕事は終わったのかな?


「イリアスさんイリアスさん。エリオットの好きなモノはなんですか?誕生日なんですけど」

「……ユリ様なんじゃないですか?」


 ムッとしたイリアスさんが投げやりに答える。というか、ガレートさんと同じ答えですよそれ。ムッとされたので思わず私もムッとしてみる。なげやりな言い方もちょっとむかついたのもある。


「……そんな顔しても可愛いだけですよ」

「うおー!なんだとー!」


 フッと若干馬鹿にしたようなモノ言いだったので、腹筋を殴ってみる。書類メインなのに固いですよ。流石第三騎士団と呼ばれるだけあります。てしてし叩いてもビクともしねぇ、どういう鍛え方してやがる。

 無念だ……あまりダメージが与えらんない。力なく腕を下げて上を見上げると、イリアスさんが顔に手を当ててプルプルしてた。なにごと?


「可愛過ぎる……」

「なん……だと」


 あんまりなセリフに呆然としてしまう。馬鹿な……私が可愛過ぎる?やっぱりこの世界の美的感覚は間違っている。

 馬鹿なやりとりをやったけど、イリアスさんはちゃんと教えてくれた。

 筋肉が付きにくいタイプなので、筋トレのグッズとか大好き。プロテイン(この世界にもあるんですね)とかも好んで飲んでいる。髪が長いのでブラシも良い。後は髪を洗うシャンプーだとか。私と恋人なので、手作り料理も喜ばれるそうだ。

 イリアスさんってグチグチ文句言いつつ結局は色々世話を焼いてくれるんだよね。ちょっと馬鹿にしてくるのがムッとするけど、基本的に優しいんですよ。


 でもこれで買い物するモノも分かったって事だね!よーし、城下で買い物するぞー!

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