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その後の話……

主人公視点です。

主人公情報:坂巻さかまき百合ゆり。19歳就職組。彼氏いない歴=年齢だった。両親は15歳の時に他界。16歳の弟を養っていた。

 このエルトリアの世界には、獣の容姿をした者しか存在しない。その認識は、当然であったために不思議にも思われていなかった。

 だが、この世界に落ちてきた「異界の君」による認識で違う世界もあるのだと考えさせられる事になる。

 「異界の君」それは極稀にこの世界に落ちてくる異世界の住人だった。彼らは毛皮を持たず、耳もあまり発達していない。尻尾は退化したとはその「異界の君」の主張だった。

 「異界の君」の知識はこの世界に衝撃を齎す。「異界の君」の御蔭でこの世界は発達した。「異界の君」によると、私たちのいる北に位置するエルトリア国が「狼の国」。東に位置するメルリット国が「うさぎの国」。南に位置するニャリン国が「猫の国」。西に位置するレッゾショット国が「パンダの国」。中央の位置するサファイ国が「リスの国」。と呼んだという。

 この世界の主な人種はその5種だった。ただ多いというだけで、その5種族しかいないという訳ではない。こまごまとした別の種族も存在する。


 そして、私が落ちたのはエルトリア国の「狼の国」とメルリット国の「うさぎの国」と呼ばれる国の間の森。レファードの森、通称「死の森」と呼ばれる非常に危険な森だった。実際あの時は3回ほど死を覚悟しましたよ、ええ。あの短時間で3回も死ねると思えるなんて。

 エリオットに出会えたのは僥倖と言って良い。なんて言ったって団長で騎士!もうなんか狙ってるよね!いや、うん、ごめん。

 それに、先日はエリオットにちょめちょめされちゃったし……きゃー!おおお、落ち着こう、私!冷静になって対処するのよ。表現もちょっと古いし。


「今日は随分と機嫌が良いですね?」

「ふあっ!?」


 私の身支度を整えてくれるフレアさんがニコニコと笑いかけてくる。ケモ耳メイドのフレアさんの髪は亜麻色。尻尾も同色で、とても……萌える。おぱーいもおっきいし羨ましいのう……でもあまり大きなおぱーいはモテないらしいんだよね。なんでだろう?やっぱり違和感あるよ。

 こんなに巨乳でかわいこちゃんが頬を染めて「美しいです、ユリ様」なんて言った日にゃ、恥ずかしさで悶える自信がある。というか、5回ぐらいやりましたよ。お願いだから美しいって言わないで!と何度も懇願してようやくやめてくれた。ただ、なんだか不満そうだけど……。


「ですがそんなお姿も……おっと、言ってはいけないんでしたね」

「あぶねぇ」


 怖いよフレアさん。自然な流れで私の精神にダイレクトに攻撃をしかけようとは。「美しい」なんてフレアさんに言われたらその日一日使い物にならなくなる程度には恥ずかしい。


「ところでどうして機嫌が良いのですか?」

「えっと……ふふ!実はエリオットと付き合う事になりました!」


 自慢げに言い切ると、フレアさんの機嫌は急転直下した。むっと唇を尖らせる姿が凄く可愛らしい。


「むぅ、やはりユリ様は変わっておられますね。何故第三団長なのですか……カルロ様の方が余程魅力的ですのに」


 赤色のゴリマッチョであるカルロを想像してげんなりする。嫌な奴ではない。嫌な奴ではないんだけれど……いや、むしろ良い人で紳士的なんだけど。どうにも濃過ぎるんですよ。良い人ですよ。私には勿体ないくらい良い人です。なんで私が良いのかさっぱり意味不明ですが……私はやっぱりエリオットが好きなのだ。

 後はあの外国的なノリについていけないのですよ。おう!いえす!みたいなテンションの高さ。ノリでなんとか食らいついてますけど、エリオットの落ち着き具合が日本っぽくていいよね。何に対してもオーバーリアクションを求められるなんて、なんて基準の高さ。ちょっと黙ってたら「怒っているのかい?」って言われる。やめてくれ。頷く位で許してくれ。


「でもそんなユリ様だから憎めないのですのよね……はい、出来ましたよ」

「ふふ、有難うございます」


 髪を結われて、服を綺麗に整えて貰った。浮かれる気持ちでエリオットの元へ向かう。

 今の時間は書類仕事中で、恐らく何回か挟む休憩に近い。その隙を狙って会いに行く。

 軽い足取りでエリオットの仕事場へ向かう。コンコンとノックすると、「どうぞ」という美声が聞こえてくる。うああ、何その声。恰好良い。あの声だけで耳が満足してしまうよ。


「失礼しまー……っなん……だと!?」

「えっ……どうかされましたか?」


 私のオーバーな驚きに、エリオットが眉を下げて首を傾げる。オーバーリアクションがちょっと癖になりつつある今日この頃。慣れって恐ろしい。首を傾げた際、後ろに結わえた髪がサラサラ零れる。銀髪騎士が……ポニーテール……だと!?


「うっ!ぐはっ……!?」

「ユリ様っ!?」


 思わず膝を付いてしまった。やべぇ、何それ可愛いの。狙ってるの?やだ、可愛い。慌てて私の元に寄ってくる姿がもう、もう……萌えるしかないだろぉおおお!?


「くぅう!」

「ど、どうされたのですか?救護班を呼びましょうか!?」

「大丈夫です!」


 グッと親指を立てて、反対の手でエリオットの腕を掴んで引き留める。私の異様な悶え方に心配してくれているのは分かっている。だが、その心配する姿もジャスティス!

 大好きなエリオットのポニーテール姿でこの有様。その清楚なうなじが萌えを誘ったんですよ、きっと。


「髪、素敵です」

「え……髪?……ちょっと暑くなってきたので、束ねたのです」


 困惑しつつ自分の髪をいじるエリオット。ああ、なにそれ、可愛い。恰好良いのに。やだこの人、もう……。


「そういう所も好きです」

「えっ……あ……」


 真顔で告白してみたら、顔を真っ赤にさせたエリオット。ああ、なんて可愛い反応しやがるんですか。


「ユリ様……」


 そっと私の肩に手を置き、熱に浮かされたようなエリオットの顔が近づいてくる。う、うわ。き、キスですか。やばい待って。準備出来てないよ!心の準備が!ドッドッドと速まる心音。キラキラした美しいお顔がぁああっ!


「仕事中になにやってんですかっ!」


 その言葉に2人でバッと離れる。声のした方を見ると、顔を赤くさせたイリアスさん。イリアスさんは第三騎士団の副団長を務めている人で、首まで毛皮になっている。ちょっと腕を触らせて頂いたけど、ごわっとしてた。これがモテる要素。なんてもったいない。もっと良いトリートメント使った方が良いよ!


「ユリ様!団長を誘惑しに来ないでください!」

「ゆ、ゆ、誘惑ぅっ!?」


 ば、馬鹿な!私は無罪だ!事実無根、冤罪被害者。誘惑してきたのは間違いなくエリオットの方だというのに。恥ずかしそうに髪を整えている姿は半端ない。


「団長も気を確かに」

「……申し訳ありません」


 副団長に怒られてシュンと耳としっぽが項垂れる。くうう!可愛い。「狼の国」に拾われて良かった!私がエリオットをうっとり見つめていると、イリアスさんが溜息をはいて首を振る。


「はいはい!休憩も終わりです!さっさと仕事に戻りますよ団長!」


 イリアスさんにグイグイ押されて仕事場から追い出される。あー……ポニーテール騎士様が遠のく……。まぁ、お仕事の邪魔しちゃ悪いよね。とてとてと来た道を引き返す。


「あっ、こんにちは」

「どうも、ユリ様。ご機嫌麗しゅう」


 対面から来たのは顔まで狼の顔になっているくすんだ青のような灰色のような方。第一騎士団長のコンラドさんだ。むっきむきで背も高いので、目の前に立たれるとかなり圧倒される。

 コンラドさんは私を口説いたりしない。ってなんかこの言い方嫌だな……。と、とにかく。コンラドさんは奥様にデレデレなのだ。長毛の毛並を毎朝ブラッシングして貰えているのだそう。羨ましい事で。私もあの綺麗な銀髪を触り放題してみたい。


「そういえば聞きましたかな?」

「え、なんですか?」


 狼の口をニッと笑わせるコンラドさん。この笑顔が分からなくてしばらく怯えたのは良い思い出。今ならちょっと分かるよ。このワイルド感が、ね……。いや今でもちょっと怖いけど。犬歯が半端ないんだもの。ギラついているんだもの……。

 少し屈んで私と顔の距離を近くさせるコンラドさん。うっ……目の前にこの顔は怖いっす。私が怯んでいると、コンラドさんは苦笑を浮かべる(推測)。

 何度も泣いて逃げたからな……でも今なら耐えられる!さ、さぁ!用事は何ですか?ファイティングポーズをしたまま言葉を待つ。


「もうすぐエリオットの誕生日ですぞ?」

「え!」


 そういうの、あるのか!この世界にも!いやそりゃそうか。ちょっと混乱してきた。私が喜色を示すと、コンラドさんも嬉しそうに微笑んだ(推測)。


「ユリ様に祝って貰えるとさぞ嬉しいだろう。エリオットは頑張り屋だから、喜ばせてやってくれないか?」

「もっちろんです!」


 誕生日かぁ。何がいいかな?何が……何……なん……だと。

 私はあまりの事に絶望した。


 そういや私、エリオットの事あんまり知らない。

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