卒業まで、あと少し
アタシと、さーやは大の仲良し。
いつも一緒にいるの。
何故ならアタシ達は、恋人だから。
周りは知らない。秘密の関係。
二人でいられたら、それだけで幸せなの。
当然、高校も一緒に行くものだと思っていた。
中学3年のある日ー…。
*登場人物***
二宮 杏菜・ニックネーム・ニノ
望月 紗綾・ニックネーム・さーや
今回、登場人物に関しては特にビジュアル表記していません。
ご自由にご想像下さいませ☆
では、どうぞ。
>>>
*
「望月ー、望月!」
「吉岡先生」
担任の吉岡先生が、さーやを呼びに来た。
名前を呼ばれ、顔を上げると給食を食べるのを止めて教室を出て行った。
目で追うと、吉岡先生と何やら難しそうな顔で話している。
「どーしたのかな?」
「ニノが知らないなら、アタシ達も知らないよー」
一緒に食べていた子達も揃って首を傾げる。
少しして、さーやは帰ってきた。
「どしたの?」
「うん、ちょっとね」
それだけ言うと、さーやはソソクサと先生から渡されたプリントを机にしまった。
「さー…」
「ゴメン、トイレ行ってくる」
まるで逃げる様に、教室を出ていった。
**
それから数日後。
朝、教室に入ると異変に気付く。
「さーや!転校するってホント?」
(ー…え?)
「転校は、しないよ」
「でも、職員室で聞いたって、ミカが…!」
「…。転校はしないよ。卒業式はこっちでする。でも、高校は…」
言いかけていた口が止まる。
視線の先には、当然アタシがいて。
「あん…」
「さーや、どういう事?この間の吉岡先生との話って、まさか…」
逸らされた視線が、無言の肯定を現していた。
次の瞬間、アタシは踵を返し教室を飛び出していた。
「杏菜!」
背後から、さーやの声が響いても、足は止まらなかった。
***
「ー…」
(さーやが引っ越す。…それも、遠くに…)
具体的にどこへ引っ越すとは聞いていない。
でも、きっと遠い。
涙が溢れても、止められなかった。
(アタシ達、もうダメかな…)
屋上の柵にもたれ掛かり、ショボくれていると、さーやが近付いてきた。
「杏菜…。ゴメンね?」
「…遠距離になっちゃうよ。さーやが遠くに行くなんて…」
「ホントは、寮とか一人暮らしとか考えた。でも、高校生で一人暮らしは出来ないし…」
「…うん、わかってる」
「杏菜、大学では一緒に住もう?」
「へ…。大学?」
「そ。高校はお互い好きな事しよう。夏休みとかは、デートして。電話も、するよ。3年間だけは、…ごめんなさい…」
「うん…。さーや、浮気しないでね?」
「杏菜の、方こそ!杏菜モテるし…」
「さーやのがモテるし!」
「浮気」のワードにビックリしつつ、さーやのアタシがモテるとか言い出したのは、もっとビックリした。
暫く、どっちがモテるか言い合いした後、クスクス笑い合い、どちらかともなく「ちゅ」と短いキスをした。
「好きよ、杏菜」
「アタシも好き。大好き!3年間なんて、あっという間だよね!寂しくなんか…。無い。…うそ!ホントは、凄く寂しいよ~!さーやのバカー!」
ギュウギュウと抱き合っていると、校内放送が聞こえてきた。
『3年2組、二宮杏菜!至急職員室まで来なさい』
「吉岡先生?」
「杏菜、何かした?」
さーやの質問にプルプル首を振る。
その後、二人手を繋いで職員室に。
「吉岡先生」
「おお、来たか。二宮」
呼ばれた理由は、何と推薦入試が通ったとの事。
だけど…。
「二宮、正直に言うと、かなりギリギリだったらしい。高校に行ってからの事もあるから、次の試験はとにかく頑張れ」
「はい!ありがとうございます!」
「望月も。・・・あぁ、望月は心配要らないな。だが、入試が終わるまでは、気を抜くなよ?」
「はい、先生」
「じゃあ、戻りなさい」
****
「おめでとう、杏菜」
「えへへ、ありがとう」
恥ずかしそうに笑うアタシを、さーやが見つめる。
「教室、行こう?」
「うん」
指を絡めて歩き出す。
卒業まで、あと少し。
二人の想い出を、少しでも増やせます様にー…。