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Cace3《変態1人》

※人によっては、不愉快に思われる言葉を使用していますのでご注意下さい。

また、不愉快な喋り方をする人物が登場しますのでご注意下さい。

上記の事を踏まえた上で、お読み下さい。

11/28……一部の文章を削除

 俺達は、ノースブレイ王国から拠点としているノースアルカディア王国に向かっている最中で、現在、朝華連邦のコウカという街にいる。

 エースは、俺よりも先にログインし昨日出来なかった情報収集をしていた様だ。

 昨日は、この街に着くなりすぐに宿屋へ向かいログアウトしたからだ。

 あまり夜更かしし過ぎると会社に遅刻し兼ねないからな。


「良いニュースと悪いニュースあるけど、どっちを先に聞きたい?」

「はぁ?」


 ログインし待ち合わせの酒場で会うなりエースはそう言って来た。


「えーと、じゃぁ良いニュースから……?」


 フフンと鼻息を荒くしながらエースは自信に満ちた顔で話を切り出す。


「聞いて驚け!未発見の遺跡ダンジョンが近くにあるかも知れない」

「!?」

「ふふ、驚いたか」


 正式サービスから二年、cβから数えると三年近くも経つというのに未発見のダンジョンがあるなんて信じられない事だった。

 まぁ、運営もダンジョンの総数を公表している訳ではないから出尽くしたとは思っていないけれど……。

 それでも、発見難易度の低いダンジョンは出尽くしたのは間違いない。


「情報屋様々ってことか?」

「まさにその通りだね。

情報屋の記憶スロット容量じゃないとこの遺跡を発見出来ないと思うよ」


 遺跡発見には、何段階ものプロセスを踏んだ後にやっと発見する為のキーを入手する事が出来る。

 簡単なものなら2ステップほどの情報でキーに辿りつくのだが、今回はどれだけの情報で辿りついたのだろうか。

 ちなみにキーと言っても物理的な鍵の事ではない。

 そのダンジョンへ行く為の場所であったり、入り口の発見方法や開け方などだ。

 勿論、鍵を入手というキーもある。


「って、キーは手に入れたの?」

「いや」


 エースを首を振り否定した。


「実はまだキーに辿りついていない。

でも、もうすぐなのは間違いないと思う。

この街にも情報屋がいるし、そいつと情報を交換するつもりだよ。

運が良ければそれで情報が揃う」

「そか。で、悪いニュースは?」


 並大抵の悪いニュースでは、この良いニュースを帳消しには出来ないだろう。

 俺はこの流れのまま聞く事にした。


「奴が追って来ている……」

「!?」

 

 この一言で俺は全てを理解した。

 賞金首から恐れられている俺(自称)を好き好んで追う奴なんて一人しかいない。


「ま、まさか……あいつが?」

「ああ、残念ながら……」


 自分でもはっきりと分るほどテンションが下がる。

 帳消し所か完全なマイナスだよ……まったく。


「近いのか?」

「多分……、すでにこの街にいると思う」

「……」


 まぁ、街にいる間は奴も手を出して来ないだろうけど、近くにいるんだな。

 あいつに見張られていると思うと鳥肌が立ってしまう。

 といっても、E/Oもそこまでは再現出来ていないから感覚ね。


「と、取り合えず、俺は情報収集を再開するよ。

いくら暇だからって、絶対この街から出たら駄目だからな」

「当たり前だ」


 エースが酒場を出て情報収集しに行った後、奴の事を思い出す。


 奴は、一言で言えば変態だ。

 付け加えるならストーカーだ。

 名前は覚えていない。

 というか、各時代別の名前キャラだった気がする。

 と言うより、近付いた瞬間ぶっ殺していたからだ。

 奴には苦い思い出がある。

 ロールプレイしないと決めていたにも関わらず俺に「キャー」と女の様な 悲鳴を上げさせた唯一の相手だからだ。


 何回も付き纏うので運営にハラスメント行為で訴えた事がある。

 が、奴は開き直り「これが私のロールプレイだ」だと熱く語ったものだから、運営が「ロールプレイなら仕方がない」と納得してしまい運営公認になってしまったので性質が悪い。

 だから、奴が現れると同時にぶっ殺している。

 と言っても、どんどん奴の手口が巧妙になってきているので面倒くさい所がある。


 さて、奴の事はもう良いだろう。

 もうすぐ、いやでも現時代の奴と会う事になるのだから……。

 エースの情報収集が終わるまで少し寝るとしよう。



◆◆◆


「……ゼ、…ぃ、お…ろ。はぁ~、起きろ!リーゼ!」

「ふぇ?!」

「……あ~、うん。まぁ、ダンジョンのキー手に入れたぞ。

てか、涎垂れてるぜ」


 軽く寝るつもりがすっかり熟睡してた様だ。

 エースは自分の口元を指差し、涎の垂れている箇所を知らせる。

 俺は袖口で涎を拭き、エースを睨む。


「……さっきの間、キモイとか思ったろ?」

「ん?いや、リーゼとしてなら可愛い反応じゃないかな?」

「なっ!?てめぇ」

「その姿で凄んでも全然怖くないし、むしろ、微笑ましい?」

「くっ」


 エースはニヤニヤと笑う。


「さて、冗談はここまで。

この街から半日ほど歩く事になるから、準備は怠るなよ」


 半日と言う事は、砂漠の中を歩くという事か……。

 現実と同じで暑い所へ行けば、汗は流れるし水分を補給しなければならない。

 当然、疲労が溜まるのも早い。

 俺のローブは対寒対熱に優れているとはいえ、完全に防いでいる訳でなく、クソ暑いから若干暑いぐらいに緩和してくれる程度だ。

 まぁ、このぐらい緩和してくれるなら十分と言えるだろうが、長時間歩けば結局は水が必要で準備を怠る訳にもいかない。 


 俺達は、砂漠へ出る前に雑貨屋へ寄り、いつもより多くの水といつも通りの携帯食を買う。

 エースがいうにはいくつかある中で一番近いオアシスとの丁度中間にそのダンジョンはあるらしい。

 キーがないとただの小高い砂丘らしい。


◆◆◆


 砂漠に入りだだっ広い砂海をひたすら歩き続き、いくつものを丘を越え、エースを守りながらMobも適当に狩って行く。

 この間何回か後ろを振り返ったが、俺達を追ってくる様な怪しい奴は一度も見られなかった。

 『気配察知』の上級スキルである『追駆』を駆使しても発見できないけど、確実に奴が俺達を追っているという確信がある。

 スキルではない俺自身の『第六感』をそう告げていた。

 

「んぐんぐっ……っぷは」


 何かのMobの残骸と思われる日陰で休憩し水分を補給しながら辺りを見回す。


「そんなに気になる?」


 エースにとって完全な他人事の為、この一連の騒動?を楽しんでいる節がある。

 そして、このニヤケ面である。

 ちょっとムカつく。


「当たり前だ」


 あいつは何故か俺を執拗に追いかけるのに命を賭けている。

 これは比喩でも何でもなくて本当にキャラの命を賭けている。

 ここで休憩する前に確認したが、ここ以外で休憩出来そうな日陰はなかった。

 という事は、奴はこのくそ暑い砂漠の上で姿を消しながら俺から目を離してはいないのだろう。 


「俺の計算ではもう少しで着く筈だから頑張ろう」

「ああ」

 

 俺達は日陰を出て再び目的地へ向けて歩き出す。

 

 本当に砂以外何もない所だ。

 行けども行けども砂砂砂砂……。

 まだ、日陰を出て一分ほどしか経っていないのにも関わらず俺はすでに飽きていた。

 それに暑い。


 しばらく進むと砂に混じって人工物の跡があちらこちらに垣間見える様になる。

 といっても、半分以上が砂に埋もれ、原型もほとんど留めていない。

 それでも尚これらが人工物だと断言できるのは、周りが砂だらけだからだろう。


 エースは、いきなりしゃがみ人工物らしき上に乗った砂を払いのける。

 

「情報どおりだな……」


 そう呟くと、周りをキョロキョロと見渡す。


「あっちか……」


 エースは何やら見付けた様だが、俺にはさっぱり分らなかった。


「この辺だな」


 そして、三十メートルほど歩いた後、突然止まり俺の方へ振り返る。


「ここからはリーゼの力も必要だ。

俺の持っている『情報』を教えるよ。

リーゼの情報スロットを空にしてくれないか?」


 情報スロットとは、つまり、ダンジョンなどを発見する為のキーワードを格納しておく場所だ。

 一般プレイヤーは、精々一つの街の通常会話で入手する事が出来る情報分しかない。

 少ないように思えるが、これが案外多い。

 というか、通常会話で入手する事が出来る情報というのは、未整理の状態でそれが何に関連した情報なのかさっぱり分らない。

 つまり、いくつもの情報の一部を乱雑に格納している状態という所だ。

 ゴールに到達出来る情報は、あらゆる所から入手した膨大な量の情報を必要な分だけ抽出し、適切な順番で並びなおす事でやっと入手出来る訳だ。

 簡単に言えばパズルだろうか。

 最初に戻るが、一般プレイヤーは、膨大な量の情報を格納する事が出来ない為、当然抽出する事も出来ない。

 だから、情報屋プレイヤーからヒントもしくは答えを取引する事で入手するという事だ。


「ん」


 俺は脳内でメニューを開き、コミュニケーションから情報スロットを開く。

前に立ち寄った街とコウカの街で入手した情報が乱雑に入っているのを確認すると躊躇なく『全消去』し情報スロットを閉じる。


「OK」

「では、言うぞ。

今から『約三百年前』この界隈を荒らし回っていた『大盗賊団』『狐狼団』が、拠点としていた『地下遺跡』。

『頭領・キム=シュウペー』率いる彼らは、各地から集めた『金銀財宝』を一点に集結させたのが、この『元共山党広州支部ビル』。

『入り口は、遺跡最上部にあり』。

つまりだ。唯一地表に出ているビル屋上の非常口を見付ければ言い訳だ」

「八ワードか……。全消去しろとか言うからもっと多いのかと思った」

「念の為だよ。それにたった八ワードと言うがな。

ここまでどれだけの情報を「はいはい、わかったわかった。ご苦労様」……まぁ、良い」


 単純に八ワードと言ったが実際は、これらのワードを導き出す為の細かいワードなどが複数ある。

 というか、偽情報やらひっかけの様なワードも含まれている為、それを吟味しなければならないらしい。

 それを情報スロット内で削除や合成して新たなワードを組み合わせて行くらしいが、流石に俺はやった事がないので割愛する。


「じゃあ、俺はあっちを探索するからリーゼはあっちな」


 向かって右をエースは、左を俺が探索する様に指示をする。

 俺は、キーを入手したのでダンジョンの入り口または手掛かりを見る事が出来る筈だ。

 周囲三百六十度見渡しながら先を進む。

 遺跡っぽい残骸が転がっているが、入り口っぽい人工物は一向に見付からない。


「実は、こういう砂山に埋まっていたりするのかな?」


 適当に砂山の表面を掻き分ける。

 上から無限大に砂が落ちて来ており、例えあったとしても見付ける事は出来ないな……と、判断し手を止める。

 そして、少し高い所から眺めようと俺はその砂山の上へ昇る。 

 砂が崩れて昇り難いが何とか上まで辿りつく事が出来た。


「けど……、どこを見ても砂しかないね」


――ハァ、ハァ、ハァ――


「!?」


 俺以外誰かの息遣いが足元で聞こえ、咄嗟にその方向を凝視するが誰もいない。

 しかし、嫌な予感が脳裏に横切る。

 俺は、砂山から飛び降りる。


 飛び降りると、ダンッという硬い感触が足に伝わった。


「え?」


 砂山なのにこの感触はおかしい。

 俺は地面の砂を手で掻き分けるとどう見ても人工物としか思えないタイルの床が見えた。

 タイルの形から予想して全体像を頭の中で思い浮かべる。

 俺は強い足踏みで人口の床の場所を確かめながら歩いて行く。

 

「これは結構広いかもしれない」

 

 一人で探すには、少しばかり広すぎるな。


「おーい、エース。こっちにそれらしいのがあるから、手伝って~!!」

「……分った。そっちへ行く~」


 しばらくした後、エースの声が返って来た。

 大体、非常口っていうのは、端か真ん中が定説だろう。

 エースと合流し、俺達は手分けしてそれらしい砂山を崩して入り口を探す。

 探している中で気付いたのだが、この遺跡てかビルは、若干傾いている様に思える。


 探す事十五分ほどで目的の入り口が見付かったかもしれない。

 いや、多分間違いなく入り口なんだけど、砂が積もっているのでこれを掻き出さないといけないな。

 恐らくだが、金属製もしくはプラスチック製の扉は、朽ちてなくなってしまったのだろう。

 そこからは、エースと二人での共同作業だ。

 俺が入り口付近の砂を掻き出し、エースがそれを外へ排出する。


◆◆◆

 

 作業開始からどのくらい経ったのだろう。

 すっかり、日は落ち砂漠の地平線へ今にも沈みかけている。

 俺達は、何とか階下へ繋がる階段を発見する所まで砂を掻き出していた。


「ふぅ」

「終わったぁぁぁ~」


 俺は出てもいない汗を拭い、エースは疲れたとその場に座り込む。


「ほら、そんな所に座り込まないで中に入ろ?」

「ぁ、ああ」


 エースは、俺に手を引かれながらゆっくりとした速度で歩く。

 そして、砂で滑りやすくなった階段をゆっくり確実に降りていく。

 降りたすぐ下の階は、非常に薄暗く当然ながら電気が通ってはいない。

 その代わり、松明が一定感覚で壁に設置されていた。

 恐らくだが、『狐狼団』が設置したのだろう。

 俺はその内の一つで火を点けて見た。

 流石、砂漠の中のビルで特に上層階という事もあってか、松明は乾燥しておりすぐに火が点いた。

 そして、その松明近くの部屋に入り、適当に燃える物を掻き集め燃え移らない様、工夫した後に焚き火をした。

 

 今日は、ここで一晩過ごそう……。


◆◆◆


 目覚ましをかけた時間より大分早い。

 ブラックアウトした画面に耳障りな音と共に警告文が流れている。


『強制起床発動中!~敵性プレイヤー、接近および接触の可能性大~強制起床発動中!』


 意識する事でキャラクターを再起動し、一気に意識を覚醒させる。

 スキル『サバイバル』の機能の一つで、ダンジョンなどでキャンプする際に便利だ。

 敵性プレイヤーやMobが近付いてきた際、アラートを鳴らしてくれる。


 HPにダメージなどはなく、Mobに襲われた訳ではない。 

 しかし、全く身動きが出来ない。 

 いや、何かに拘束されているといった方が良いか……。

 俺は唯一動く首で必死に辺りを見回すと、火の向こうで縄で縛られたエースの姿がチラリと見えた。


「エース!!」

「ん”っ、ん”ん”、ん”ん”ん”!」


 見事な亀甲縛りで拘束されたエースを見た視界に、俺を拘束している”誰か”がチラリと見えた。

 つまり、縄などで拘束されている訳ではなく、手足でガッチリとホールドされた状態だという事だ。

 昨日は、早く休みたい事から、こいつに追跡されていた事をすっぽりと頭から抜け落ちていた。

 結局、便利なアラートも活かせなければ意味はないという事だな。


「くんか、くんか。はぁ~良い匂いだぉ」

「ヒィッ!?」


 俺の耳元で見知らぬ声がした。

 いや、知らないのは知らないけど、このイラつく喋り方は、間違いなく現時代の奴に違いない。


「お早よう、だぉ。リーゼちゃん」

「くっ、放せ!この変態!!」

「ふひひ、変態とは、お褒めに頂き光栄の極みだぉ」


 気持ち悪い。

 首下の匂いを嗅がれ、拘束しながらもローブの上から手で俺の胸が揉まれる。


「ふひひ、暴れても無駄無駄」


 くそっ、拘束されているから銃に手が届かない。

 何とか脱出しないと……。


「ん、チュ~」


 首下の匂いを嗅いでいた奴の顔が俺の顔に近付いてくる。


「な、何を!?」


 するつもりだ。この変態が!!


「ぉ、おおおおお、眼たんしてるぉ~。

隻眼良いぉ、良いぉ~。ふひひひ」


 前時代でこいつと遭遇した時は、まだ呪術を施していなかった為、両目健在だった。

 しかし、今は隻眼かつ眼たんをしていた為、何故か変態のテンションがさらに上がる。


 そう言えば、初めて遭遇した時は、「金髪碧眼俺っ娘キターーー」などと叫んでいた気が……。

 

「うひょひょひょひょ」


 奴の有頂天とは逆にテンションがだだ下がりな俺だったが、ここで奴の拘束が少しだけ弱まった気がした。

 少しだけ自由が利いた右腕の肘を奴の脇腹付近目掛けて思いっきり突く。


「こんの!!」

「ぐひょっ!?」


 銃使いといえど、重い装備を持ち歩く為に腕力・脚力ともに鍛えている。

 勿論、カンストまでは上げていない。


 拘束が完全に緩まった事を確認すると、俺は拘束を振りほどきながら、勢いを付けて立ち上がる。

 立ち上がりついでに、脇腹を押さえて身悶えている変態に足蹴を追加する。


「うげっ!! ふひひ、もっと~もっと~~!!」

「っ、この変態!!」

「ふひひ」


 至福の笑みを浮かべながら変態はもっと蹴ってくれと懇願してくる。

 こいつの喜びそうな事はしたくないな。

 さて、どうしよう。

 俺は、変態が起き上がらない様に足で奴の腹を抑えながら、処遇を考える。

 ……うん、やっぱ、思いつかないな。


「仕方ない。殺すか……」


 俺は、ローブの内側に固定した二挺の銃を取り出し、変態に照準を合わせる。


「ふひひ」


 今から殺そうかというのに、奴の表情は恍惚としている。

 むかついたので左手に構えた銃を変態の右手へ撃つ。


「ぷぎゃ!? ひひひ」


 一瞬痛がったが、恍惚とした表情は変わらない。

 試しにもう一発、右手の銃で変態の左手を撃つ。


「ぎゃっ!? ふひひひ。

これだけですか? 足らない、足らない、全然足らない!

前時代のリーゼちゃんならもっと撃ったぉ。

さぁ、遠慮はいらないぉ。もっと撃つのだ、ぉ」


 むっかっ!


 左と右の銃を構え、変態の心が屈する様、死なない程度に急所を外して交互に撃つ。


「ふぎっ! ぴぎゃ!? ほげぇ!! ぎゃひぃ!! ひぎゃ!? うげぇっ!!」


 右肩・左肩・右膝・左膝・右耳・左耳の順に撃つ。

 銃弾が体内に残る事はないので、持続ダメージを与える事は出来ない。

 強力な銃故そこは我慢するしかないだろう。


「ふひひ。嗚呼、良いぉ良いぉ……。

でも、まだ足らないぉ。

さぁ、遠慮なく。さぁ……さぁ、さぁ、さぁ、さぁ、さぁっ!!」


 屈するどころか、表情がどんどんヤバイ方向へ行っている様に感じる。


「ふひひひゃひゃひゃ」


 変態は、膝を撃ち抜いたというのにそれを物ともせず涎を垂らし笑いながらゆらりと立ち上がる。

 あらゆる所から出血している事から、まるでゾンビの様に思えなくもない。


「くっ、毎度毎度、俺をストーカーした挙句、撃ち殺されてお前は何がしたいんだよっ!!」

「ふひゃひゃ、愚問だぉ。

リーゼちゃんをストークする事は、生甲斐いやジャスティスだぉ。

ついでに、その可愛いお口にキスするまで止めないぉ」

「…………ぷっち~ん。誰がさせるかボケッ!!」


 自分勝手かつ自己中心的で喋り方による苛立ちが俺の中で限界を超えた。


◆◆◆

 

 頭に血が上った後の事は、よく覚えていない。

 ただ、気付いた時には、無数の弾痕が付いた変態の死体と無数の薬莢とマガジンが地面に落ちていた。

 完全にキレていたとは言え、何と言う弾の無駄使いだ。


「嗚呼、やっちゃったぁ~……」


 って、何か忘れている気が……しないでもない。

 俺は周囲を見渡すと、焚き火の向こうで見事な亀甲縛りと猿轡で涙目になっているエースが目に入った。


「……ぁ」


「なぁ、酷くね?

忘れているとか有り得ないよな?」

「はは、ごめん。

ほんと、それどころじゃなくてさ……」


 亀甲縛りを解くのに大分時間が掛かったが、何とか解く事に成功し猿轡を取るとエースの第一声がそれだった。

 

 まだ、活動するには早い時間帯ではあるが、目が覚めてしまったのだから仕方がないと俺達は探索の準備をする。

 と言っても、実際に潜るのは俺だけで、エースはここで留守番だ。

 あの変態の様にプレイヤーキャラだと意味を成さないが、Mob相手だと焚き火の炎で近付いて来る事はない。

 それは、動物だろうが魔獣だろうが同じでシステム的な保護がされている。


 で、今からダンジョン探索となるのだが、先ほどの銃乱射によって弾数に不安が出てしまった。

 普段なら引き返して街で補充するのだが、ここが未発見のダンジョンだったという事もあり、先を越されない為に潜る事を決意した。

 まぁ、最悪、銃剣で戦えば良いので問題ないといえば問題はない。


「じゃ、行ってくる」

「ああ、期待しているぜ」

ダンジョンのお宝内容は次話辺りに記述する……かもしれません。


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