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Case2《不運な犯罪者クラン》

08/05…サムライソード→古刀に変更

「おまたせ」

「俺も今来たとこ……」


 今日はバイトが休みだったので、珍しくエースよりも先にログインできた。

 現在、俺達二人はユライト王国を出て華朝連邦・ハイランド王国を経由し、ノースブレイ王国の傭兵都市ヴェユスに来ている。

 ここに来た理由は、俺の愛銃であるハルトとマロートのメンテナスをする為だ。

 この銃を造って貰った際に機密保持という理由でメンテナンスの一切をに任せる事を条件としたからだ。

 彼曰くやっている事は大した事ではないけれど、裏技みたいなものだから広く知られるまでは秘密にしておきたいらしい。


 事、エルネス=ワークナーさんは、職人と傭兵を兼業しており、現在(傭兵の時代)の初め頃に一緒にクエストを一緒にする機会があった。

 それ以来の知り合いなのだが、今日で会うのは六回目になる。

 ちなみに、ハルトとマロートを造って貰ったのは二回目の時だ。


 彼の種族はヒューマなので当然、世代交代によりステータスのほとんどが初期化されている。

 それにも関わらず世代交代していないのではないかと錯覚するほどの腕前を持っていた。

 単に流派と才能スキルそして(歴代キャラからの)継承スキルのお陰との事らしいが、余程計算して育成していないとここまでにはならないだろう。

 それにプレイヤースキルも伴っていないと幾ら良いスキルがあっても宝の持ち腐れに過ぎないだろう。

 

 まぁ、それは置いておいて確かプレイヤー居住区の一角に確か自宅があった筈だ。


「こっちで良かったっけ?」

「ああ、こっちで間違いないよ」


 違う様な気がする。

 以前来た時は、こんなに集合住宅が並んではいなかった。


「……そうなのか?」

「エルネスさんの自宅のある区画とは反対側から入っているからね」

「!?」


 それを早く言え。

 そりゃ、知らない筈だよ。

 反対側からなんて入った事なんてないからな。

 確か、プレイヤー居住区は3つの区画に分かれている。

 豪邸及び高層邸宅区画、一般区画、賃貸区画の三つだ。

 これは、ほとんどの街に当てはまる。

 ノースブレイ王国では、居住区を三分割しているが街によっては居住区が三箇所に分かれている所もある。

 大小様々な建物を乱立していては景観が宜しくないからという理由らしい。

 とはいえ、わざと乱立させている街もある事も事実だ。

 そういった街は、治安が悪く本拠地にするには少し躊躇する様な場所だったりする。


 しばらく、歩いているといよいよ豪邸区画周辺に近づいて来た様だ。

 一般区画から一本大きな道を境に奥の方には高層邸宅と豪邸が立ち並んでいるが見える。

 豪邸区画の大体真ん中辺りにエルネスの住居があり、向かいが高層邸宅だったのを覚えている。

 普通、高層邸宅は複数プレイヤーが階層毎に住んでいるのが特徴的なのだが、エルネスさんの向かいにある邸宅は一人のプレイヤーが占有している。

 何でもノースブレイ王国では指折りの商人クランのクランマスターの住居らしい。


「ここ……だな」

「ああ」


 それにしても、エルネスさんのプレイ時間帯が俺達とほぼ同じで助かった。

 俺達との差異は精々ゲーム内時間一日と半日ほどなのだが、プレイ地域によっては全くの正反対なんて事もありえるからな。

 直接聞く事はマナー違反になるので聞かないが、恐らくはアジア圏……もしかしたら俺達と同じ日本人プレイヤーなのだろう。


 コンコンと軽く玄関の扉を叩くと、しばらくして家主……エルネスさんが出てきた。


「「ご無沙汰しています」」

「やぁ、久しぶりだな」


 エルネスさんは気さくに挨拶を返す。

 いつも尋ねた際は先客がいるのだが、今回はいない様だ。 

 エースとエルネスさんを含め三人しかフレンド登録していない俺と違い、エルネスさんには親しい友人がたくさんいる。

 それこそ、傭兵ランキングで上位にいる人や百ちゃんねるの有名人などだ。

 四回目にエルネスさんを尋ねた時、今は後人に譲ったらしいが、あの”深緑”のクランマスターと会う事が出来たのはラッキーだった。

 そして、その交友関係の中に俺も含まれていると思うと、少し天狗になってしまうのも仕方がないと思わないか?


「まぁ、二人とも入りな」


 エルネスさんに招かれ邸宅に足を踏み入れる。

 邸宅は豪華なのだが、いざ中に入るとそれほど豪華という印象を受けない。

 どちらかというと普通の調度品ばかりだ。

 恐らくは、調度品にあまり興味がないのだろう。

 基本的な物は揃えましたって感じの内装だ。

 強いて言うならば、キッチンとリビングは力を入れているのかな。

 現代風に言えばシステムキッチンという感じで、リビングには十人ほど余裕を持って食事出来るほど長大な机が真ん中にドンッと置かれている。


「取り合えず、ハルトとマロートを預かるよ」

 

 エルネスさんに俺の愛銃を預ける。

 渡した銃をあらゆる角度から眺め、目立った傷がないか歪みなどはないかと簡単にチェックをする。


「うん。丁寧に扱っているみたいだね」


 この銃を造って貰った際の約束事には、手荒に扱わない事という条件もあった。

 まぁ、簡潔に言えば手荒に扱うとアイテムとしての寿命が短くなるのと、一度壊れてしまうと直す事も出来ないし二度と同じ様な物を造る事が出来ない、

「面倒なので、もうお前には造ってやんねーよ」と見限られてしまう訳だ。 

 普通に使っている分には大して耐久値が減る事はない。


「じゃ、俺は工房に引き篭もるから二人は……二階の客室で適当に寛いでな。

ま、時間はそんなに掛からないと思うけど、腹が減ったら食料庫漁って良いよ」


 エルネスさんはそう言い銃を持って地下にある工房へ下りて行った。

 取り合えず、銃が戻ってくるまでする事もないし、エースと別れ客室へ向かう。

 エースの方は、情報収集してくると言って玄関から出て行った。


◆◆◆


 何時の間にか寝ていた様でエルネスさんが起こしに来てくれた。

 起こされた後は,エルネスさんの後を着いて行き工房内へと入る。

 工房内には鍛冶に必要な道具が揃っているのは勿論、歴代の収集品や作品が無造作に置かれていた。

 何気に床で転がっている剣や刀が、実はユニーク級のアイテムだったりするから注意が必要だ。

 うっかり、踏んで壊しましたとかになったら大変だ。

 とはいえ、ユニーク級以上が踏んで壊れるなんて事はないだろうけどな。 


「問題なく調整出来たと思うけど、試し撃ちで変な所が有ったら言ってくれ」

「はい」


 エルネスさんからハルトとマロートを受け取ると工房の隣にある修練場へ向かう。

 修練場は、城や公共施設ほど大きくはないが試し斬りや試し撃ちするぐらいなら余裕なほどのスペースがある。


「あれ?」


 その途中、同じ武器ばかり何本も置かれた木箱を発見する。

 他のアイテムと違いしっかりと入っていたので違和感を覚え二度見してしまった。


「ん?ああ……これか」


 エルネスさんは俺の視線に気付く。


「ここにあるのは、全て変哲もないどこにでもあるイスカ刀さ」


 木箱から一振りのイスカ刀を取り出し、俺へ放り投げた。


「うわっ」


 いきなり投げられたので落としてしまいそうになる。

 イスカ刀をしっかりと右手に持ち『鑑定』してみると、本当に変哲もないイスカ刀なのが分かる。

 ま、扱いからして貴重なものではないのは分かっていた。

 これは、古刀の次に買える低レベル帯のイスカ刀だ。

 勿論、イスカ王国以外の国だと中々手に入らない代物だけど……。

 それが二十本近く置かれているのだから違和感がありまくりだ。

 それだけでなくフレイムロッドが同じ数ほど木箱に詰められていた。

 こちらは、大体の国で扱っており魔術師志望のプレイヤーが、初期武器を卒業した後にお世話になる武器だ。

 ロッド系特有の魔力と魔法力(MP)の増大と火属性が付与されている。

 弱いMobは火に弱いという傾向にある為、魔術師でもないプレイヤーが鈍器として使う場合もある。


「今、こいつとこいつを組み合わせた武器を作ろうとしている所だよ」


 エルネスさんはそう言うと次にフレイムロッドを渡された。

 見た目はただのフレイムロッドに間違いないが、少々重く感じる。


「こう……、引き抜いてみな」

 

 先端部分から柄を抜く様なジェスチャーをしていたので、素直に従うとカチャと軽い音と共に柄が抜ける。

 なるほど、そういう事か。

 中に刀が仕込まれている為、見た目以上の重量があったんだな。


「ちなみにこれは、魔杖ファイアブランド……試作二十一号だ。

もう三十本近く造ってるんだが、これが一番よく出来ている」

「それにしても、それ以外見当たらないですけど……」


 試作二十一号と言いながらもこれ以外の完成品がどこにも見当たらなかった。

 

「複数あっても仕方ないからな。

知り合いの商会へ格安で卸しているんだよ」


 ああ、あの人か……。

 向かいの高層邸宅にいる人だろう。

 エルネスさんとは長い付き合いらしく、恐らくはイスカ刀とフレイムロッドもそこから仕入れているのだと思う。

 

 隣の修練所は、様々な武器を試すエルネスさんに最適化されており広く浅くといった感じで色々詰め込まれている。

 射撃場は、幅1m長さ5mほどしかなく、はっきり言って狭い。


 俺はハルト&マロートを二挺持ちし構える。

 まずは、一発ずつ撃つ。

 慣れ親しんだ反動と音と共に寸分狂う事なく的の中央を撃ち抜く。


 次は体を九十度回転させ、左手が前、右手が後ろにして構え撃つ。

 次も同じ様に回転させ的とは正反対である真後ろを見て肩越しに撃つ。

 最後にまた九十度回転させ右手が前、左手が後ろにして構え撃つ。

 体勢を変えた所で正面に撃ったのと同じ様に的の中央を撃ち抜いているのを確認した。


 流石、オートエイム……違った、流石『第六感』だな。

 ジャンプして様が月面宙返りして様が、『第六感』は的を外す事はない。

 ま、流石にこんな狭い所ではしないけどな。


 『第六感』とは、視線で標的を決めている訳ではなく、意識を向けた標的に対して自動的に照準が向く。

 つまり、真後ろだろうと気配(存在)を感じ取り意識を向けるだけで良いのだ。

 たったそれだけで構える・狙うの二つの肯定が完了し後は撃つだけとなる。

 ただし、銃が正常な状態に限るが……。


「うん。完璧」


 まぁ、5mの距離だから問題ないのかも知れないので実践する必要があるな。


「では、外へ行くか?」


 俺の心情を察したのかエルネスさんから狩りのお誘いを貰う。


「そうですね」

「そう言えば、エース君の姿が見えないが?」

「情報収集らしいです」

「なるほど。では、行くか」


 俺は地下を抜けエルネス邸から出て玄関先で待つ。

 エルネスさんは工房の片付けをした後、すぐに来ると言っていた。

 実際、五分ほどでエルネスさんが玄関から出てきた。


「あれ?それって……」


 エルネスさんの手には、試作二十一号が握られていた。


「最近、体が鈍っているからな……」


◆◆◆


 エルネス邸を出てそのまま傭兵ギルドへ向かったのだが、手頃なクエストは残念ながら無かった。

 その代わり、最近この辺で荒らしまわっている犯罪者クランで済ませてしまおうという話になった。

 現在、ヴェユス近郊北方で確認されている犯罪者クランは二つあり、縄張り争いで小競り合いが尽きないらしい。

 ただし、クランマスターを含んでも小者しか居らず、個人ではなくクランとして手配されている。

 そして、複数相手と面倒な上に賞金額も低い為、積極的に討伐されず今尚残っている。

 とはいえ、そんな小者でも戦闘手段を持っていない者にとっては脅威でしかない。

 実際、護衛を雇う事が出来ない個人の行商プレイヤーなどは被害にあっている様だ。


 目的の場所は、今いるヴェユスからオルドランへ伸びる街道を少し行った所にある。

 見晴らしが良い所なのだが、死角があるらしくそこによく潜伏しているらしい。

 しばらく進むと街道の真ん中で荷馬車が立ち往生していた。


 「エルネスさん」

 「ああ」


 荷馬車を挟む様に二つの野盗クランが睨み合いをしている。

 まだ、気づかれない内に俺とエルネスさんは、二手に分かれてそれぞれの野盗クランの背後を取るように向かう。

 エルネスさんの方は、背の高い農作物のお陰で身を隠すにはもって来いなのだが、俺の方は大きな岩が点在しているだけである。

 身を隠すには良いのだが、身を隠しながら進むのは結構気を使う。

 まぁ、野盗共の視線は、対立クランの方へ向いているのでバレる事はないだろう。

 

 無事見付かる事なく野盗共の背後を取るのに成功する。

 エルネスさんの方も問題なく事を進んだ様だ。

 さて、どのタイミング行く……。

 しばらく様子を見よう。


「いい加減手を引け。バグス!!」

「ああ!?てめぇらが手を引けや!」

「俺達が放った矢が先に当たっただろうが!」

「何言ってやがる。護衛を仕留めたのは俺達の矢の方だ」

「ああ!?どの矢の事を言ってるんだぁ!?」

「ほら、そこだろ」

「そこってどこだよ。俺達の矢しか見えねぇなぁ!」


 ……と、不毛な言い争いが続いているが戦闘が始まりそうにもない。

 そう言えば、護衛だった傭兵達は大丈夫だろうか。

 後部の荷馬車の方へ目を向けると、馬車の近くで五名の傭兵が矢に討たれ倒れているのが見える。

 ゴーストはいない様なので死んではいないだろう。

 

 まぁ、本来なら戦闘不能になった時点で復活地点へ飛ぶ筈なのだけど、戦闘が続行している為飛ぶことが出来ないようだ。


 プレイヤーは、戦闘不能後に止めを刺されると死亡状態キャラロストになる。

 その際、死体の上にゴーストとして一定時間だけ復活のチャンスを得る事が出来る。

 お互いゴーストだった場合に限りプレイヤーのゴーストを見る事が出来るのだが、例外としてエルフ系の種族スキル『霊視』でゴーストを視認する事もできる。

 これは副次効果で本来は、精霊を視認する為のスキルだ。

 視認出来ない事には契約出来ないからな。

 とはいえ、魔法と縁のない俺には関係のない話ではあるが……。


 ま、無事の様だし急ぐ事もないか……。

 あ……、こっちのコソ泥?の一人が荷馬車に近付こうとしているな。

 このタイミングで良いか……。


 俺は、コートの裏側に手を突っ込みスタングレネードを取り出す。

 手持ちがあまりないので使いたくはないが、これ以外だと俺の居場所がばれてしまう。

 フラッシュグレネードでも良いと言えば良いのだが、こっちの方が手持ちが少ない。

 アンダースローで奴の足元へ落ちる様に調整して投げる。

 相変わらず睨み合い中なので投げたグレネードには気付かれていない。

 見付かったとしてもグレネードとは思わないだろう。


 コッと軽い音と共にコソ泥の足元へピンポイントで落ちる。


 「あん!?」


 バンッと一回の爆発と共に凄まじい音と閃光が辺り一面に広がる。

 それと同時にホルスターから二挺の銃を取り出しながら手頃な所にいる野盗へ向けて発砲した。

 発砲と同時に体を反転させ、正反対の所で耳を押さえていた野盗へ撃つ。

 そして、岩を飛び越えながら左右にいた野盗二人へ向けて同時発砲、着地後に正面二人へ向けて発砲する。

 この一連の動作だけで俺が担当した野盗共の半数が倒れた。

 腐ってもクランだ。

 パーティと違い人数もそう簡単に減らせそうにない。


 チラッとエルネスさんの方を見る。


「……」


 とんでもない光景が広がっていた。

 エルネスさんが一薙ぎする毎に炎波(仮)がニメートルほど前方に広がっていく。

 どういう事だ?

 当然、野盗などエルネスさんの攻撃に耐えうる筈もなく一刀両断なのだが、さらに炎で焼き払っている。

 確か、エルネスさんの流派には鎌鼬かまいたちを発生する効果があったのは知っている。

 まさか、属性によって鎌鼬の性質が変わるとは……。

 恐ろしい……。

 この前、まだまだ自流派は未完成と言っていたが、これを見る限り完成で良いんじゃないかと思う。


 それよりも、誰の農場か知らないが焼け野原になっているけど良いのかな。

 どこかの掲示板に「収穫に行ったら農場がなくなっていた件」っていうスレが立たない事を祈ろう。


 それは良いとしてスタングレネードの影響がなくなる前に片を付けなければな。

 ま、色々考えながらちゃんと野盗は始末している。

 後はクランマスター(お頭)を入れて残り三名、余裕だな。

 

 お頭の手前にいる二人に加速しながら接近する。

 まだ、目は見えていない様だ。

 一人は接近して銃剣で急所へ攻撃、無論無防備なのでクリティカルが入る。

 前のめりに倒れたので体を捻って避け、後ろにいた二人目の眉間へ銃を突きつけトリガーを引く。

 脳をぶち撒きながら後ろに倒れていく。



「くっ、何だ?

さっきの閃光と音は!?」


 こちら側のお頭が辺りを見回しながら仲間の無事を確かめる。


「……っておい、おめぇらどこだ?」


 しかし、俺が奴以外全員を倒していたので返事が返ってくる筈がない。

 そして、ほとんどが岩陰で倒れているのでお頭の位置からは無事確かめる事が出来ない。


「チェックメイト……」

「はぁ!?」


 俺は、奴の背後から銃を心臓の辺りに突き付けて言った。

 身体をそのままに頭だけこちらに振り返り視線を漂わせる。


 「???」


 というか、俺の姿が見えていない?


 「下……」

 「あん!?」

 「もっと!!」

 「……嬢ちゃん、何の真似だ?」


 俺の姿を確認した奴は、身体を反転させてこちらに振り向く。

 何故か銃を突き付けられているのに余裕の態度だ。

 

 「そんなおもちゃは仕舞って、どこか行ってろ」


 ごつい右手を俺の頭に持っていきワシャワシャと乱暴に撫でる。

 

 正式サービスから二年過ぎたと言うのに、まだ銃を”当たらない”と思っているのだろうか。

 確かに、βテストや正式サービス当初はまだ『第六感』持ちなんて稀な存在だったが、今は大分環境が変わっている。

 別に仕様が当時より変わった訳ではない。

 E/Oの根幹システムである『血の記憶』による因子の蓄積で『第六感』を開花させたプレイヤーが大分多くなって来ている現状なのだ。

 特に、一度『第六感』に目覚めると以降のキャラも開花する確率が高くなる。

 増える事があっても減る事はほとんどない。

 そりゃ……、他のスキルに比べレアなのは間違いないが、目の前の人物が銃を構えていたら”最悪”を想定するべきだ。

 クランマスターなら尚更だろう。


 そして、何より目の前の少女がハーフエルフだと気づくべきだ。

 俺の知る限りハーフエルフの銃使いは、俺しかいない筈なのだ。


 いい加減鬱陶しくなって来たので、突き付けていない左の銃剣で奴の右手首を切り裂く。


「っああ!!?」


 奴は切り裂かれた右手首を押さえながら俺を睨む。


「はっ!!??」


 そこでやっと俺が誰なのか気づいた様だ。

 あ、いや、別に驕っている訳ではないから悪しからず。

 これでも犯罪者どもには、結構評判なんだよね。

 悪い意味で……。

 

「ぉ、おま、お前は!?」


 下っ端はともかくクランマスターをやっているプレイヤーなら自分達の天敵である傭兵の有名人所は、知っておかないと今回みたいに全滅になる可能性がある。

 出来るだけ戦わない方向で持っていくか、不意打ちなど有利な条件の下で戦う様にしなければ、犯罪者として生きて行くのは不可能だ。


「きょ、狂弾のリー「はい、正解」ぜブしャ!?」


 俺は奴が言い切る前に問答無用で銃のトリガーを引く。

 正面からハートヒットさせたが、着用していた革鎧によってダメージが減衰し即死にはならなかった。


「くっ……はっ」


 虫の息なので放って置いても出血で戦闘不能にはなるが、一々待っていられないのでもう一度同じ所を撃ち戦闘不能にさせる。

 クランマスターの奴だけは、他の野盗どもと違い生死を問われていないのでヘッドショットで止めを刺した。

 犯罪フラグの重い軽いの判定の為に、死亡状態にさせるには二段階の工程を踏まないといけないのは面倒なところである。

 一段階で死亡状態にする事も可能なのだが、その為には木っ端微塵にしなければならなくリーゼの銃では不可能に近い。

 まぁ、グレネードランチャーや手榴弾でなら可能なのだが、たかが野盗クランの為に使う訳にもいかない。

 マネーという意味で……。


 さてと、奴を始末した事だしエルネスさんの方はどうなっただろう。

 俺は、銃をホルスターに仕舞いあっちへ向かう為に街道方面を見る。

 丁度、エルネスさんの方も終わった様で、仕込み刀を鞘という名のフレイムロッドへ戻しながらこちらへ向かって来ていた。


「エルネスさん、終わりました?」

「ああ。物足りないぐらいだ」


 と、言いながらエルネスさんは先ほどまでいた場所を見る。

 俺もそれに釣られた見てみると、農場が延焼しまくって隣の農場まで燃え出している所だった。


「……大丈夫なんですか?あれ……」

「あれか……。ふむ、野盗が苦し紛れに燃やした事にするか?」


◆◆◆


 商隊の護衛をしていた傭兵達が死に戻りした事を確認し、掠り傷程度で済んでいる商人プレイヤー数名と共に彼らの目的地『要塞都市オルドラン』へ向かった。

○死に戻り

 戦闘不能であって死んでいない為、正確には死に戻りではない。

 戦闘不能からの復帰は、回復魔法(法術か神術)となっている。

 魔法を習得していないリーゼとエルネスでは回復させる手段がないので彼らの仕事を引き継いで本拠地へ戻らせた形となる。

 このクエストの報酬が前払いだった為、リーゼ達には報酬が発生しない。

 後払いだった場合は、リーゼ達に報酬が支払われただろう。


○フレンド登録

 世代交代をしても歴代キャラのフレンドリストが消える事はない。

 ただし、直接会わないとフレンド機能を使用する事は出来ない。

 また、登録した相手が世代交代した場合は、自動で現キャラに名前が変更される。



《Name》魔杖ファイアブランド

《User》エルネス=ワークナー

《Rank》Rare

《Level》刀修練Lv5、 魔術修練Lv5 ※どちらかが達成していれば装備可能

《Base》ロッド、打刀

《Effect》抜刀術攻撃速度+50%、火属性付加エフェクトなし、魔力+5、MP+20

《Detail》製作者、エルネス=ワークナー。

 二つの武器を組み合わせて新たな武器を創造する特殊な製法で作られた武器。

 完成品のフレイムロッドと無銘(イスカ刀)を組み合わせており、納刀時 はフレイムロッドとして抜刀時は無銘として使用出来る。

 また、両モードに共通して火属性が付加されている。

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