鬼ごっこ
いつもとは毛色の違うジャンルでの投稿です。
気が向けば、彼らの別のお話も書きたいと思います。
氷雨は、とーん、と後ろ足を思い切り蹴りました。
それだけでもう、森を抜けてしまいました。
次のひと蹴りで川を跳び越してしまいます。
雪うさぎの氷雨が通ると、さあっと冷たいつむじ風が起こり、粉雪がきらきらと光りました。
とーん、ともうひと蹴りしたところで、友達の真っ白な雪狼に声をかけられました。
「ちっちゃな、ちっちゃな雪うさぎ。そんなに急いでどこに行くんだい?」
「なんだ。吹雪じゃないか。ぼくはお遣いの途中だよ。この手紙を持って姫さまのところに戻るんだ」
「お前の足じゃひと月かかったって、姫さまのところに戻れないぞ。おれの背中に乗せてってやろうか?」
「ぼくが君より速く走れるのを知らないのかい?」
いつもの悪ふざけからすぐに鬼ごっこが始まりました。
「へへん。そんなに言うならぼくを捕まえてごらん」
回れ右をして氷雨が逃げ出すと、吹雪が後を追います。
さあ、雪うさぎと雪狼がそんな風に走り回ったから大変です。
二匹の通った後にはつむじ風がぴゅーぴゅー。
粉雪がきらきら。
雪がざんざん。
吹雪がごうごう。
冬も終わるというのに、こちらの村もあちらの山もあっという間に雪に埋まってしまいました。
それを見て驚いたのは人間たちだけではありません。
二匹のご主人である姫さまは、すぐさま二匹を捕まえると、こっぴどく叱りつけました。
「氷雨。お前に頼んだ手紙の返事はどうしたのじゃ」
「それが……、どこかに落としちゃったみたいで……」
「この、大馬鹿者が!」
罰として二匹はまず落とした手紙を探し、その後、夏の暑い間中、山のてっぺんの木に縛り付けられることになりました。
雪うさぎと雪狼にとって、これは何より辛いことです。
そのせいかどうか分かりませんが、次の冬は雪がずいぶん少なかったということです。
とてもとても、短いお話でしたが、読んでいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただければ幸いです。