表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

20.運と特技

「そういえば君、知ってるかい?」

「何をですか?」

「彼女はとても運が悪いんだ。それも周りに影響を及ぼす程ね」

「でも、僕には何も起きていませんよ」

「そりゃそうさ。僕たちは他人(ひと)より少しばかり運が良い。だから彼女の影響を受けていないだけ。まぁ、彼女自身の努力もあるけどね」


 ベリルさんがニヤッと笑う。僕は少し疑問を持ちながらも、ベリルさんの話に耳を傾ける。


「彼女は運を上回るほどの勢いで頭を回転させてる。だから、影響を受ける前に回避出来てるんだ。でも、彼女が未熟だった頃は、組んだパートナーが毎日怪我をしていた程だよ」

「そんな凄いことを」

「それを僕たちは『最適解』って呼んでる。数ある未来の中から最も起こる確率の高い未来を予測し、その未来から近い良い未来を掴む。それこそが、彼女が生み出した特技だ」


 なんだか凄いことを話しているのだろうが、僕には何1つ理解することが出来なかった。だが、ベリルさんが発した『最適解』はセラサイトの口からも聞いたことがある。確か、『最適解には運も必要』だったか。


「僕たちの運は自分の身を守ると共に、彼女の最適解を手伝っているんだ。()しくもね」

「なんだか、僕には難しい話です」


 ベリルさんはハハハと笑うと、雲が横切る空を見上げた。そして、独り言を言うようにしみじみとした声で言った。


「彼女は『天才』だ。あの知識量に人ならざる特技も持ってる。でも、彼女だけはそれを認めない。何故だか、君には分かるかい?」

「皆と同じが良い。とかでしょうか?」

「ハハハ。それも理由かもしれないね。でも、本当の理由は彼女にしか分からない。だって彼女と親しいと思ってる僕でさえ、その理由を知らないんだから」


 ベリルさんがその場に座り込む。生き生きとした芝生がベリルさんの重みにクシャッと潰れていく。


「でも、凡人でいなくてはいけない理由なんて、本当にあるのかな?天才になれると言うなら、誰だってその道を進もうとするはずだと思ってたんだけどな」


 ベリルさんが芝生を撫でる。その目にはセラサイトを思ってか、苦悩の色が浮かんでいた。

 凡人でいなくてはいけない理由。そんなものないと僕は思いたい。ベリルさんが言ったように、天才という道があるのなら進みたいと思うのが普通だと思うから。

 そんなことを思っていると後ろから足音が聞こえ、音の主は僕たちに声を掛けてきた。


「どこで何をしているのかと思ったら、こんなところで駄弁っていたんですか?面白い話でも?」

「いや、ただなんで、空は青いのだろうなって話してただけだよ」


 セラサイトの問いにベリルさんが笑ってそう言う。彼女の前では天才と凡人の話はNGということなのだろう。

 僕が2人の方を交互に見ていると、セラサイトはため息をついて、ベリルさんに向かって手を差し伸べる。それをベリルさんは掴むとスッと立ち上がった。


「光の屈折、そのせいで青だけが目に入るようになっている。ただそれだけ」


 セラサイトがつまらなさそうに空が青い理由を端的に話す。僕がこれまで見た中で、今のセラサイトが最も退屈そうだ。

 ベリルさんはそんなセラサイトを見て微笑むと、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でた。驚いているセラサイトの方を見て、ベリルさんは無邪気に笑う。


「それよりも、言いたいことがあって僕達を探していたんじゃないのかい?」

「書店なんかを巡ろうと思ってて。来たいって言ってたから、一応声掛けた方がいいのかと思って探してたの」

「そうか。じゃあ、行こう。今すぐ行こう」


 ベリルさんはセラサイトの身体を街の方に向けると、背中を押して歩いていく。セラサイトは何かを感じたのかムッとした表情をしたが、大人しくベリルさんの押す方向へと歩を進めている。


「あ、待ってください」


 そう言って僕も2人の後を追いかけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ