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私こそが、万年レベル1の冒険者  作者: 羽森ハル


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第二話 万年レベル1冒険者、詐欺を阻止する

パーティーから追放され、私は行先もなく冒険者ギルドに入った。

もう夜も遅いのに、いまだにギルドは賑わしい。


と、扉の開いた音に入口付近の冒険者たちが反応し、こちらを見た。ざわりと空気が揺れる。


あの有名な「烈火の如く」のパーティーメンバーが夜、たった一人でギルドに入ってきたら気になるよね。

なにがあったのかなー、パーティー追放されたのかなー? あはは。


こそこそ話こそすれ、だれも私に話しかけてこない。いっそのこと単刀直入に何があったのか聞いてくれたら、こっちも開き直ってパーティー追放されたって堂々と答えてやれるのに。


掲示板には雑用や報酬が低い依頼が余って残っていた。お知らせや広告が、すかすかな依頼の隙間を埋めている。傷を隠すように……。


「畑の収穫を手伝って!」「酒屋の手伝い入ってください」「リピリカ魔石、大幅値上げ!」「土砂を運ぶ仕事です」


自然な動作を心がけて、隅の椅子に座った。ギルドには自由につかえる椅子と机がたくさんあるから、冒険者たちは作戦会議や打ち上げなど、さまざまな目的でギルドにたむろっているのだ。


机の下で拳を握りしめる。爪が指に食い込んで、裂いてしまいそうだった。それだけでは飽き足らず、手の甲を爪で何度も引っ搔いた。

そうでもしないと、机をひっくり返してしまいそうだ。


あんなこと言ってくるパーティー、こっちから願い下げだ。勝手にすればいい。潰れればいい。万年レベル1だからってうがった目で見て、私の貢献にまったく気づかずに。


万年レベル1だからって……。


「はぁ……」


万年レベル1だからって、冒険者を諦めなきゃいけないのかな。


それは、嫌だ。


冒険者ほど活気に溢れ、自由に羽ばたける職業を他に知らない。


昔から憧れていた冒険者を、ここで諦めてやるもんか。


私は確かに弱い。でも、魔物の弱点を調べておいたり、お金勘定をしたりはできる。


最強ドラゴンを一刀両断とかしてみたいけど、でもやっぱりしてみたいな。

冒険者なら一度は見る夢。


「これだけなんです、お願いします!」


隣の机から声が響いて、思わずそちらを見た。頭を下げている若そうな男性と、四人組らしい冒険者たちが向かい合っている。


「一週間前にピリカ魔石を買いましたよね。でも親方にいわれたの、ピリカ魔石じゃなくてリピリカ魔石だったんです……。ピリカ魔石はお返しするので、リピリカ魔石100個、売ってください!」


なーんとなく状況はつかめた。この男性は一週間前、親方から言われてピリカ魔石を100個この冒険者たちから買った。でも親方が欲しいのはリピリカ魔石だったってことか。


「100個か……。わかった、売ってやる」

「ありがとうございます! これがピリカ魔石100個――銀貨5枚分と、銀貨20枚です」


うわ、大量の魔石と金だ。あれって机の上に出すものだっけ? ギルド銀行を介してやり取りすれば簡単だろうに……。


「えーと、ピリカ魔石100個は銀貨5枚分、リピリカ魔石100個はそれの五倍の値段なので銀貨25枚分……。はい、間違いなくお預かりしました」

「それで、リピリカ魔石100個な……。ギルド銀行から降ろしてきていいか?」

「えっと、できればすぐに受け取りたいのですが。」


たしかに、ギルド銀行を介すと一日か二日ほど時間がかかるから、すぐに欲しいときは直接のやり取りをすることもある。親方にきつく言われたのだろうと想像がつくね。


「100個……あるか? 俺は34個だ」

「私23個ある」「私14個」「30。」

「あわせて101……ギリギリ足りるな。ほら、リピリカ魔石100個だ」


リピリカ魔石は、様々な魔法を込められるし万能性が高いから、冒険のときにいくつか持ち運ぶのに不自然はない。

私も20個くらい持っていた。奪われたんで今は0だけど。


「ありがとうございます!」


男性がまたも頭を下げた。取引が上手くいきそうで良かったものだ。


「いや他人よりさ、今日の宿どうしよう……」


今日も明日の仕事も見つかってないやつが、他人の取引見て時間無駄にするな。

こういう取引って面白いから、ついつい眺めてしまう。


明日はソロで雑用系の依頼でも受けとけばいいとして、宿だよな。

お金が全部奪われたから財布からっぽ。今から依頼でも受けるか? あーだめだ、あの掲示板……。


掲示板?


『「畑の収穫を手伝って!」「酒屋の手伝い入ってください」「リピリカ魔石、大幅値上げ!」「土砂を運ぶ仕事です」』


――「リピリカ魔石、大幅値上げ!」


私は立ち上がり、隣の机に乱入する。


「その取引ちょっと待った」


まさに、簡易契約書に記名をしかけていた。


「書くのやめて。詐欺の可能性あるから、ちょっとだけ待ってて」

「え……? は、はい」


四人組のリーダーと思われる男性が筆を置いたのを認めて、私はいったん掲示板に急ぐ。


【リピリカ魔石、大幅値上げ】

リピリカ魔石の買取値段を、従来のピリカ魔石の五倍――4個で銀貨一枚――から、十倍――2個で銀貨一枚――まで大幅値上げ。今すぐ錬林工房へ!

※ピリカ魔石の値段は従来通りです。予定数の買取が終了しますと、従来の値段に戻ります


そして期限は、この紙が張り出された今日の夜から、明日の夕方までか。こりゃ明日はギルドが騒ぎになるよ。

これを読んで、あの男性はなんとか稼ごうと考えたんだ。そして、一週間前の取引を思い出し――いるかも知れない親方のせいにして交換するという名案を思い付いたのだろう。


私は貼り紙を掲示板からはがし、四人組がいる机にたたきつけた。


「これ、読んで」


男性の顔に怯えが走り、四人の顔に驚きが浮かんだ。

三話目まで本日中に投稿いたします。

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