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私こそが、万年レベル1の冒険者  作者: 羽森ハル


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第一話 万年レベル1冒険者、パーティーから追放される

私たちパーティー「烈火の如く」がAランクに昇格した、記念すべき日。

祝賀会の食事を終えた私は、リーダー・ヴィルギンの部屋に呼び出された。


重厚な長椅子には、彼、魔術師シャルゲ、奇術師ルレイカの三人がゆったりと腰かけていた。私は椅子を勧められもせず、向いの床に突っ立たされる。


長椅子の真ん中に堂々と座っていたヴィルギン。彼は深く足を組みなおした。悪いことを企んでいるときの、ヴィルギンの癖。


「ジオラ――お前を、このパーティーから追放する」


私に向かって、ヴィルギンは冷たく言い放った。


信じられない。冗談だと笑い飛ばそうとしたが、唇は震えるだけだった。


彼らは私の一挙手一投足を、睨み、嘲り、嘗め回す。その視線に射抜かれ、私の体は金縛りになったかのように言うことを聞かない。


「現実逃避するのはやめてもらっていいかな? 君、顔が真っ白だよ」

「追放くらい当然でしょう。私たちAランクパーティーに、『足手まとい』の居場所なんてありませんもの」


Aランクパーティー。冒険者の最高峰。


わかっていた。

わかっていたんだ。


出会いはC級ダンジョンの入口だった。中に出入りしている冒険者たちを憧れの目で眺めているだけだった。五人で、雑用みたいな依頼をこなした日々。笑い合っていたあの頃。――遠い昔の、過去の思い出だ。


めきめきと強くなっていく三人に引き離され、ひとたび戦闘が始まれば私は蚊帳の外。報酬はわずか一割で、それも宿代食事代で消えて無くなる。


それでも、いつか昔のように戻れると信じて、いままで必死でかじりついていた。


「なんでしたっけ、あなたの職業は……。弓使い、でしたっけ?」

「なんの強化もされてない弓と矢バンバン打っても、攻撃の意味ないからね。矢の無駄遣いだよ」


ヴィルギンが私に、短剣から弓へ移行するよう命じたんじゃないか。稽古にも通わせてくれなかったくせに、よく言えたものだ。


「俺の様に敵を叩き潰すとか、」

「僕のように魔法を使ったり?」

「私のように技の一つでも身に着ければ良かったのでは?」


リーダーのヴィルギンは大剣を自在に振り回し、超高威力の攻撃を炸裂させる。しかし勝手に突っ走ってしまうことが多く、私は毎回、なんとか連携を促してきた。


魔法使いのシャルゲは得意の爆炎魔法で、広範囲の敵を一網打尽にする。しかし無計画に魔法を連発するので、私は毎回、シャルゲの体力を管理してきた。


奇術師のルレイカは多種多様な武器で敵の隙をつき、致命的な攻撃を当てる。しかしその技を使うのは敵を殺れるときだけなので、私は毎回、敵の軌道修正に徹してきた。


「私はレベル1なんだから、そんなことできる訳がないでしょ」


ヴィルギンが大げさに溜息をつく。


「あーそっかお前、『自称万年レベル1』だっけ?」

「その言い訳はもう聞き飽きました」

「努力もできない無能なだけーだ!」


涙が……。こぼれた涙摘が床に染みをつくる。

池に突き落とされても、手を魔物に食われても我慢できたのに。今は、胸が潰れそうだ。


レベルは、魔物を倒したり鍛錬をしたりすると上がる。レベルを上げることで、通常の人間の限界を超えた能力が得られるのだ。レベルを上げないと、冒険者は魔物に太刀打ちできない。


いま、「烈火の如く」のみんなのレベルは50くらいだろうか。

その中で、私はいまだレベル1。


どれほど鍛錬しても、どれほど死線をくぐっても、私のレベルは上がらないのだ。

たしかに理由は全く分からないけど……決して言い訳なんかじゃない。私の努力も知らないでそう断定されるのが、たまらなく悔しい。


なぜ弱いんだと聞かれたとき「ずっとレベル1のままで上がらないからだ」と答えてしまってから、私は「自称万年レベル1」と呼ばれるようになった。軽蔑を込めて。


「やれやれ……。役立たずに足を引っ張られたせいで、Aランク昇格がこんなに遅くなっちまった」

「あなたを追放するという決断が遅れたことだけが、私たち唯一の過ちでしょうね」

「レベル999にでもなったら、戻ってくるのを許してあげなくもないけどね?」


みんな私をあざ笑う。未練なんて少しも残っていないみたいだ。


「……でも。」


誰が、適性難易度の依頼を選ぶの? 誰が、攻撃しかしないパーティーの防御面を気に掛けるの? 誰が、喧嘩ばっかりしてる険悪な空気を仲裁するの?


私は「万年レベル1」だけど、それでも、私がいなければこのパーティーは崩壊する。


「いい加減だまれよ。さっさと消え失せろ」

「あ、服と肩掛けかばん以外はぜーんぶ僕たちのだから、置いてってよね」

「身一つで何日生きられるか、見ものなものですね」


何を言っても彼らには届かないだろう。私は服と鞄を残して、すべてその場に投げ捨てた。

扉の取っ手に手をかけ、廊下へと出る。背中に浴びせられた嘲笑から逃げるように、私は宿屋を後にした。


私はパーティーから追放された。Aランクパーティー「烈火の如く」から。

『技』の説明については少しお待ちを。

三話目まで本日中に投稿いたします。

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