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私を愛した人達とスローライフゲームで!  作者: さもはさうえい


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1/1

目が覚めたらどこかの牧場にいた

異世界モノです。恋愛はのんびり。

私はスローライフゲームが好きだ。牧場主になって野菜を育てて動物を育てて釣りして、お洒落して野山を駆け回り、時に恋や結婚もする。こんなオーバーワークもこなす人間に私はなりたかった。


大好きすぎて、その名を聞けば何も調べずに購入するくらいには大好きだ。高校でのいじめのせいで人と関わるのが嫌だったが、ゲームを買う為に頑張って働くくらいいには大好きだった。


一人で暮すようになってからはそれはもう数多くのスローライフゲームをやった。中にはハズレが多く、何故かバグに当たる回数も多くて困った事もあったけど、スローライフゲームは私の人生。私の生きる意味だ。


なので目を開けば目の前が古びた牧場と何かの文字だった時。夢の中でもやってるのかと呆れてしまった。目を凝らすと出て来る文字はゲームのタイトル。私はそれを空から見ている。


「『わたしが大好きなわたしだけの庭?』」


何だかふんわりした名前。もしかして何処かの日本ではない国の翻訳のゲームなのかな?スタートを押せばお決まりの性別や容姿を決めるモードになる筈なのにもう直ぐに牧場の名前を決めろと出て来てしまう。


「なるほど、最初から容姿が決まってるタイプね」


牧場の名前はもう何十回も打ち込んで慣れてる名前。今度はどんな始まりだろう。おばあちゃんから牧場を譲り受けた?都会に疲れて牧場主の募集にくいついたとか?


「『かこにわ』と……」


自分の香子の庭だから「かこ庭」いつもこの名前で牧場を初めていた。名前の決定ボタンを押せば「ようこそあなたを愛する庭に」とノイズと共に現れる。何だ夢の中でもバグなのか?と笑ってしまう。


ぷつんと画面が真っ暗になったと思えば空から見ていた牧場が目の前に現れた。そう、目の前に現れたのだ。パステルカラーの優しい色の世界。それがVRのように立体に見える。牧場はボロボロで草も生え、家と思われる物もボロボロ。


「こうでなくっちゃね!」


上を見れば体力ゲージとスタミナ?と思われるゲージ。現実もこうやって出てたのなら体力不足で倒れたり無理しないのに……さて!道具は何かあるかな?そんな事を考えながら、いつの間にか肩にかけてた鞄を見れば小さなベルだけ。動物を呼び寄せたり牧場内に戻したり庭に出したりするベルみたいだ。


「何だ。これだけか……誰かがくれるとかもないよね?周りに私しかいないんだもん」


見渡したが誰も居ない。誰もいないので何となくこのベルを鳴らしたくなった。何故かそうしたいとうずうずしたのだ。こんなベル。現実ではくじを引かせる側くらいしか鳴らせないもんね?


「こんな感じ?」


ベルを空に掲げ思い切り振ってみれば思ったよりも大きな音で音は広がった。いや、見た目でも音が広がるのが見える。キラキラ私を囲む光は範囲を広げ牧場や牧場の外まで広がっていく。驚きで手を止めれば何かが私にぶつかって来た。


「わ……な……に??」


牛だ。デフォルメでゆるくされた牛やニワトリや羊にアルパカまでいる。ぐいぐいとすりすりと私の体にすり寄る、その姿に見覚えがあった。


「プリン!てりたま!めーちゃんにパカ埼!」


口々に返事をしてすりすりとぺろぺろする彼等は私がゲーム内で育て、プラチナランクブランドにまで育て上げた品質の子達だ。生で見ても可愛い。ブラシをかけてあげたいと、鞄を見ると先程無かったはずのブラシやハンマー、オノ、クワ、鎌、つるはし、釣り具まであった。しかも最高品質だ。


「さっきまで何もなかったの……に?」


そうさっきまで何もなかった。無かったのにボロボロの飼育小屋は最大サイズ。家も三階建。種を作る種マシンなどの採取マシンや倉庫があった。色々、見て回りたいと駆けだそうとして思い出して彼らをブラシがけしてやる。ついでに卵やミルクなどの毛皮を取ってみれば鞄に吸い込まれていく。鞄も最大収納レベルらしい。


「私の理想のゲームってこと?」


家を見に行けばお風呂や大きな冷蔵庫。ワイン収納庫。春夏秋冬対応の温室まである。まさに理想だ。タンスには好みで作った記憶のある服。家具も自分が過去にゲーム内で作った自分の理想。


「天国か!……いや、可能性はある」


夢にしては長いのだ。ふむと考えていると、ちゃっちゃと爪が床に当たる音。


「ロウ!」


私の呼び声に元気よく返事する声は老衰で亡くなった子。私の大好きな家族。犬のロウ。って事はやはりここは天国だろう。


「死んだのか……私」


ゲーム内では上手くいた人生。リアルではいじめで壊れた人間関係しかない。いじめられ、両親には憐れまれ避けられたし母の再婚後に出来た可愛い弟には「早く忘れろ」と言われていた。


親友は自分もいじめられるからと避け卒業後も助けられなかったからと連絡も無い。私をいじめてた男はしつこく、教えても無い連絡先に連絡もしてきたのにね?


無視してたのに仕事先まで来てた。そういえば逃げ帰った以降の記憶が無い。昔から体力の限界を自分で計れない所があったから、過労で死んだりしたのかな。そんな事を考えてると頬を舐められる。


「まあ、ロウに会えたからいいか!」


慰めてくれたロウの為に倉庫を見れば99個ストックがあった。これは私のプレイの癖でクリア後に物を大量にストックしてしまうからある個数である。つまりこれはクリア後の牧場。作物は無いが物はある。拡張されて最大であり物が腐りにくい倉庫や冷蔵庫。


餌は減ったので無限では無い。外に出れば売りたい物を出せばお金にしてくれる出荷箱もあった。調べれば夕方五時に回収しますの文字が見えた。


色んなゲームの良い所が集まったゲームらしい。家の窓が改装されてそこからバザーが開けるようにもなっていた。バザーを開けば出荷箱よりも高い値段で売れるのだ。


歩き回るくらいでは時間は過ぎるが体力は無くならない。なので牧場から出ようとつい先日までやってた指笛を鳴らしてみる。が、馬はまだいないみたいだ。まあ、少し怖いかなって思ってたからいいか。だったらと家に戻って冷蔵庫の中身を見れば走るのが早くなるレモンドリンクがあった。


クリア後は効率よくする為にスタミナ回復と体力と幸運。収穫量アップや品質アップの物を作ってストックしておく。案の定、他のもあったので何個か鞄に入れて牧場から出て行く。


牧場の外は家は無い。ただ広い土地があるだけだ。海や川は見れるけど何もない。寂しい場所。私以外はいないのかと踵を返そうとすれば聞こえる足音。


「あら、カコちゃんじゃない。お久しぶりね」


声は聞いた事無い。だって、あの頃は音声は無かった。だけど、想像通りの声。


「カコ!見てくれ!ばあさんが帰って来てくれたんだ!」


大好きだったのにゲーム内ではクリア後にもう一つの畑を渡すと託して亡くなってしまう、おばあさん。


「ノラばあちゃん!ストじいちゃん!」


そんなおばあさん亡き後に寂しそうだったおじいさん。大好きなキャラ。


「あらあら、泣き虫さんね。お茶を……あら。お家がなかったわ」


「お前さんは相変らず、のんびりじゃな」


あの鐘は私の大好きを連れて来てくれたのだ。

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