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縄に絡まる 【翠2】  作者: 國村城太郎


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4話 縄に背かれ

 そして、祭日、みどりの縄会の日。

 最寄駅でキョウスケと待ち合わせして、2人で縄会に向かう。

 

「いらっしゃい、ユキちゃんと・・・こちらは初めての方ね、初めまして店主の抄妓しょうこです。どうぞ入ってね」いつものように抄妓しょうこさんが迎え入れてくれる。

 

 いつも縄会は竜さんの側に座るけど、今日はキョウスケさんと並んで離れて座る。

 

 抄妓しょうこさんが城先生を連れて挨拶に来た。

 

「こちら、縄会の主催してくださってる、國村城先生」と抄妓しょうこさんが紹介する。

 

「はじめまして、みどり縄会の主催をしてる國村城です。よろしくお願いしますね。ここでのお名前と、縄は縛るのか縛られるのか、どのくらいやってるのか教えていただけると嬉しいですね」

 

「初めまして、キョウスケといいます。縛る方で経験は3年くらいのまだまだ未熟者です。縄は転勤前に関東の方で習ってました。よろしくお願いします」と、キョウスケさんが挨拶をする。

 そうか、引越して来たと言ってたけど、関東から来てるんだ、そう思った。

 

 竜さんのがこちらを、チラチラ見ていたので、私はこれ見よがしにキョウスケさんの腕を取り、「後で縛ってくださいね」とお願いして、どうだとばかりに、竜さんに視線を送る。

 

 私と竜さんの二人の様子を見て、あらあらと呆れたように抄妓しょうこさんが見ていたが、私と竜さんは気付くこともなく。おかしな風に意地を張り合っていた。

 

「縄床あいてるから、やっちゃいませんか?」私からキョウスケさんを縄に誘う。

 

「じゃ、いこうか。格好はどうする?」と訪ねられた。

 

「どうしよう・・・いつもは襦袢なんだけど・・・」と悩んでいるとキョウスケさんが提案してくる。

 

「縄を楽しむなら、なるだけ薄着がいいけれどね・・・どうする?襦袢にする?」と聞かれた。

 

 下着で縛られる女性もいるけど、私はまだやったことがない・・・でもせっかくさそってくれたんだし・・・竜さんの顔がちらっと浮かんで、私は思いきって服を脱ぐ。下着姿になって、「いこっか?」といって縄床に向かう。竜さんが驚いたように見てくる。なんだか意地になって私は縄床にすわって、キョウスケさんを待つ。

 

 手首をつかまれて、後ろに手を回される。

 確かに肌に直接触れる縄って、気持ちいい。

 珍しい縄筋(縄の縛るルート、型のこと)に、周りの参加者が興味深げにみてくる。視線が気になる。竜さんも見ている。なんだか集中できない。

 

 上手だけど、先生達のやっている縄とは違う、縄筋が違うってのもあるけどそれ以上に、わかりやすい性感帯への縄をつかった接触がとても多い。もちろん気持ちいいのは間違いないんだけれど・・・。と思ってると、竜さんが席を外した、どうしたんだろう、私の事なんか見たくないのかな?と思うとなんだか哀しくなってくる。他の人に縛られながらそんな事を考えるなんて、馬鹿だな私・・・そう思った。

 

 股縄がいれられて、声が漏れる。気持ちいいのは、気持ちいいのだ。でも、心が入り切れてはいない。刺激をしようという気持ちしか見えなくて、こちらの気持ちを受け取ってもらえないのが寂しいと思った。

 

 ふと抄妓しょうこさんと目があう。しょうがないなぁというような優しい目でこっちを見守ってくれているような気がする。

 

 そこに竜さんが戻ってきて、何か抄妓しょうこさんと話をしている。何を話しているのか気になる。

 

 股縄に連動する形で吊り縄がいれられる。気持ちが入りきれない今の私には、気持ちいいより、痛いが勝ってしまい。思わず「痛い」と口から出てしまう。

 

 キョウスケさんを見ると、残念そうな表情を一瞬浮かべたけれど、すぐに吊り縄をはずしてくれた。

 

「ごめんなさい、ありがとう」と話すと、「気にしないで」と言って、そのまま解き縄へと入っていく。

 

 解き縄も、先生や竜さんのと比べてしまう。刺激が優先で、心が気持ちいいことを受け入れる準備の出来ていない今の私の状態では、ただの刺激以上のものではなかった。

 

 縄が終わって、「ありがとうございました」と言って抄妓しょうこさんのそばに行く。

 

「大丈夫?」と小声で聞いてくれたので、「ちょっと縄に入りきれなくて、でも大丈夫です」そう抄妓しょうこさんに言って、明るく振る舞おうとする。

 

 キョウスケさんも戻ってきて、先生と竜さん、抄妓しょうこさん、私の5人で歓談する。

 その流れの中でふとしたように抄妓しょうこさんが訪ねる。

 

「キョウスケさんは、○○先生のところで縄を習ったのかしら?」

 

「見ただけでわかるんですか?」とキョウスケさんが答える。

 

「○○先生の縄が特徴的なのもあるけれど、大体どこの流れの縄かくらいは見れば大体わかるね」と城先生が言う。

 

「はじめて3年って聞いてますけれど、お上手ですね」と竜さん。珍しく人を褒めてる。生徒の縛り手さんは滅多に褒めないのに珍しいこともあるものねと思った。

 

「いえ、まだまだ、もっとうまくなりたいですよ」とキョウスケさん。

 

「そうなのね。ところで、キョウスケさんってご結婚はされてらっしゃるの?」とすっと抄妓しょうこさんが割り込んで聞く。

 

「いえ、なかなか縁がなくて」とリョウスケさんが話す。

 

 その時、抄妓しょうこさんが城先生と竜さんを見ると、二人がうなずく。

 

「ササガワキョウジさん、申し訳ないですが、うちのお店と縄会は、婚姻や恋人、パートナーの有無について虚偽のお話をされる方は、出禁とさせていただいています。参加料は結構ですので、このままお帰りください」と冷たい声で抄妓しょうこさんが言う。

 

「え?どうしてその名前が・・・」と震えながらリョウスケさんが言う。

 

「○○先生に、ちょっと連絡をとってね、最近こちらに転勤した、これこれこういう顔で、キャリア3年のお弟子さんがいないか、聞いてみたんだよ。よく目立つ顔立ちだしね、すぐに教えてくれたよ」と竜さんが話す。

 

「し、失礼しました」リョウスケさんは荷物をまとめて、逃げるように帰って行った。

 

 呆然として、成り行きを見守るしかなかった私に抄妓しょうこさんが話かけてくる。

 

「あの人、向こうで結婚しているのを隠したまま、何人ものM女さんとつきあって、一人を妊娠させてその後結婚してるのが周りにばれて、大騒ぎになって、流派を破門になってる人なのよ。遠くだから、ばれないと思ってたんでしょうね」

 

「え・・・」と話を聞いて愕然としている私に、明るい声で抄妓しょうこさんが話しかけてくる。

 

「ユキちゃん、もうあの馬鹿男とやっちゃった?」と抄妓しょうこさんが聞いてきた。気をつかいすぎないあっけらかんとした口調にかえって救われる気がする。

 

「いえ、あの、まだキスだけで・・・」

 

「そう、よかったわね、そのくらいですんで。馬鹿はもうここにはこれないから、安心してね。別にいいのよ、結婚してようが何してようが、でもそれを隠して、人を口説くような馬鹿はね、私は許せないのよ」と抄妓しょうこさんが言う。

 

「寂しい、縄・・・でした。でも、たしかに、おととい誘われて、ホテルいかなくてよかったな・・・。飲んだら縄はするなって、先生に強く言われてたの、まもってよかった・・・」と私はいよいよ落ち込んでしまう。

 

「こんな時にはよい縄を受けるのが一番よ。この後、先生の縄受けるといいわ」と抄妓しょうこさん。

 

「おいおい、私かい?」と城先生が言う。

 

「リセットするのに先生の縄ほどいいものはないわよ。ね、おねがい。ユキちゃんもいいわよね?」と抄妓しょうこさんは積極的に私たちにいってくる。

 

「ユキちゃんが受けたいなら、私はいつでもやるよ、どうする?」と言ってくれる城先生に、私は「お願いします」と頭をさげて、縄をお願いしたのでした。


完結まで毎日0時ちょうどに更新します。

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