カポネ公爵と二人きり
カポネ公爵が差し出した手にレベッカは自然と自分の手を重ねた。
カポネ公爵に導かれるまま、レベッカは舞踏会ホールから出て部屋に通される。
ダミアンとアーノルドから忠告を受けていたにも関わらず、レベッカはカポネ公爵と二人きりになってしまっていた。
「レベッカ嬢、実は私はこの前開かれたアデレー城での舞踏会に参加していました。」
「そうだったのですか。」
「あの時は貴女とお話しする事ができませんでしたが、ぜひお話ししてみたいと思っていました。」
レベッカの頭は、もやもやと靄がかかったような状態だった。
ぼうっとした顔で、レベッカはカポネ公爵を見つめる。
「レベッカ嬢は、コルトレーン公爵家ですから、貴女もドラゴンに好かれる血が流れているのですよね?」
「そうらしいですね。」
「そうですか……実に美味しそうだ。」
そう言い、カポネ公爵はゆっくりとレベッカの首を噛もうと近づく。
首に唇が触れる寸前のところで、レベッカは正気に戻りカポネ公爵を突き飛ばす。
「貴方、私に何をしたの?頭が痛いわ……」
「私の洗脳を自力で解くなんて……ますます興味深い。」
ドンドンと扉を叩く音がしたかと思うと、バキリと鍵を壊す音がしてダミアンが部屋に入ってくる。
「レベッカ嬢!大丈夫ですか?」
「彼女は無事だよ。私の洗脳を自力で説いたからね。」
カポネ公爵は、顔に張りついた金髪をかきあげる。そのような姿、一つもキザだが絵になる。
「カポネ公爵の洗脳を自力で説いたとは、さすがレベッカ嬢ですね!」
「ずっと頭がぼうっとしてたのだけど、自分が洗脳されかけている事は分かってたのよ。」
レベッカは、ぼうっとする頭の片隅で、洗脳を解かなければと必死に考えていた。
カポネ公爵にばかり意識が向きそうだったので、アーノルドの事を考えた。
アーノルドの顔を思い浮かべる事に成功した時に洗脳が解けた。危機一髪だった。
「洗脳されていると気づいてはいても抗えないほど強力なはずなのだけど、何を考えて洗脳を解いたのかな?」
カポネ公爵が、レベッカに近づき問いかける。レベッカに触れそうなほど近づけば、ダミアンがすかさず間に入ってカポネ公爵を遠ざける。
「レベッカ嬢に近づくな!」
「近づいても洗脳できないですから、何もできませんよ。」
カポネ公爵は、両手を上げて降参のポーズをして見せる。
「でも、レベッカ嬢。貴女の事はますます興味を持ちました。私は貴女の事を諦めませんよ。」
「諦めろ!」
ダミアンとカポネ公爵が騒いでいるのを呆れてみながら、レベッカは溜息を吐く。
ダミアンだけでなくカポネ公爵の事まで考えないといけないかもしれない。
面倒くさい事になったと思うレベッカだった。