忘れていたカポネの舞踏会
レベッカは魔界へ戻るため、黒いペガサスが引く馬車に乗り込み出発する。
家族以外にハロルドとマルクスが見送ってくれる事になるとは思わなかった。
ハロルドだけでなく、マルクスもアーノルドとレベッカの恋愛を応援すると言ってくれた。
彼らはアーノルドの友達だから、応援してもらえるなら心強い。
レベッカは、初めて人を好きになりそれを応援してもらえた事で浮かれていた。そのため、彼との約束をすっかり忘れていた。
「レベッカ様、お帰りなさい!」
魔王城の前に馬車が降り立つと、城からアナベルが飛び出して来た。
勢い良く抱きついてくるアナベルを、レベッカは優しく受け止めて抱きしめ返す。
「アナベル姫、私を待っていてくれたのですね。ありがとうございます。」
アナベルの後から、ダミアンもレベッカを出迎えてくれる。
「レベッカ嬢、舞踏会はどうでしたか?」
「ロレーナとリーガンのダンスを見る事ができてとても良かったわ。」
「……レベッカ嬢は、どなたかとダンスを踊られたのですか?」
「……一回だけ踊ったわ。」
レベッカは、ダミアンから思いを寄せられており告白された事を思い出す。
ダミアンが恋敵についてどう考えるか分からないが、何となくアーノルドの名前は出さない方が良い気がした。
「レベッカ嬢と踊れた幸運な方はどなたでしょうか?」
「付き合いで踊っただけよ。」
「私もレベッカ嬢と早くダンスを踊りたいです。カポネの舞踏会が待ち遠しいですね。」
「カポネの舞踏会……」
レベッカは、アーノルドを好きだと自覚してしまったため、ダミアンにエスコートされて舞踏会に参加する事が少し後ろめたく感じた。
そして、後ろめたく感じてしまう自分に苦笑する。アーノルドと婚約したわけでもないのに、本当は気にする必要がないからだ。
本当は、後ろめたく感じるべき相手はダミアンだ。彼の思いを知っていながら、他の人を好きでいるのだから。
好きな人ができたと伝えるべきかしら、でも、そうなると相手は誰か聞かれるわよね……
ダミアンはレベッカに対しては非常に紳士的で優しい。
しかし、彼も魔族だ。恋敵と分かればアーノルドに何をするか分からない。
「オホホ、カポネの舞踏会が楽しみだわ。どのドレスを着ようかしら。」
レベッカは、好きな人ができた事はしばらく秘密にしようと決めた。
自室に入り一人になったレベッカは、アーノルドに魔界の舞踏会に参加する事を伝えるかどうか迷った。
魔界の舞踏会に出る事になれば、魔界でさらにレベッカの名は広まるだろう。魔界の大使として報告義務もあるため、アーノルドに話すべきだ。
しかし、舞踏会に出る話をするとなれば、ダミアンにエスコートされる事も話す事になる。レベッカは、アーノルドがどんな反応をするか想像してみた。
「ダミアン王子がエスコートしてくれるなら良かったじゃないか!」
心の底から嬉しそうに笑い話すアーノルドの顔が頭の中に浮かぶ。
「全然、良くないわよ!」
レベッカが、自分の妄想上のアーノルド王子に突っ込んだところで手鏡に映るレベッカがぼやけてきて、アーノルドの顔に変わっていく。
「レベッカ嬢、何が全然良くないのかな?」
「あっ……何でもありません。」
レベッカは、羞恥で顔を赤くした。




