意外な応援
翌日、レベッカは久しぶりに家族達と朝食を取った。
ロレーナ以外の家族は、そっと見守るつもりらしく、昨夜のアーノルドとレベッカのダンスには触れなかった。
その代わり、ロレーナとリーガンのダンスについてで大いに盛り上がった。
朝食を終えた後、レベッカは魔界へ戻ろうと準備を進める。
「もう魔界へ戻るのですか?」
「もう一日ぐらい泊まっていったらどうだい?」
リーガンとコルトレーン公爵が引き止める。しかし、レベッカは今日中に帰ると決めていた。
「我が家はやっぱり落ち着くわ。でも、魔界の大使として頑張ると決めたから。」
今、レベッカがアーノルドのために出来る事は、魔界の大使としてアデレーに利益をもたらす事だ。
レベッカは、好きだと自覚したアーノルドの力になりたいと張り切っていた。
そんなレベッカのもとに、客人が二名訪れる。
「レベッカ嬢、お久しぶりです。」
マルクスが、和かに挨拶する。その一方、ハロルドは黙って手を上げる事で挨拶を済ます。
レベッカは、ハロルドの様子に急に来て何なのと眉を顰める。
マルクスは、不穏なレベッカの様子に気づき、彼女の機嫌を損ねてしまう前にと話をする。
「私達、レベッカ嬢とアーノルド王子が踊っているところを見ていました。やはり、レベッカ嬢は踊りがお上手ですね。」
「マルクス様、ありがとうございます。」
レベッカは、丁寧に礼を言う。それには、彼はアーノルドの親友だから少しでも好感を持ってもらっといた方が得だという考えがあった。
そんなレベッカの考えを勘づいたのか、ハロルドは敵でも見るような目で、レベッカの事を観察してくる。
しばらくは、マルクスと日常会話を交わす事で耐えていたが、我慢できなくなったレベッカは叫ぶ。
「何なの!何故、貴方は私を睨んでくるのよ。私が気に食わないなら来なければ良かったでしょう?」
叫んだレベッカを見て、ハロルドはほっとした顔をする。
「淑女みたいな様子でマルクスと話しているから偽物かと思ったぜ」
「私みたいな美人が何人もいるわけないでしょう!」
ハロルドはかなり失礼だが、レベッカ嬢もなかなか凄い事を平然と言っていると、マルクスはくすくすと笑う。
「この鼻につく感じ、間違いなくレベッカ嬢だな。」
「この人、失礼すぎるわ!」
「すみません、レベッカ嬢。ハロルド殿は誰に対してもこんな感じです。」
マルクスに頭を下げられ、レベッカは何とか怒りを収めた。
「それで、ハロルド様はなぜ来たのですか?マルクス様の付き添いですか?」
ぶっきらぼうに話すレベッカをハロルドは面白そうに見る。
「何で来たかって言うと、レベッカ嬢はアーノルド王子の事をどう思っているのか聞きたくてな。」
ロレーナだけでなく、ハロルドにまで聞かれるのかとレベッカは驚く。
しかし、直接聞いてきた者がロレーナとハロルドなだけであって、多くの者がレベッカとアーノルドの事を気にしている事だろう。
「アーノルド王子は、失礼を働いた私にも寛容で素晴らしい人です。」
「そんな事は分かりきった事だろう。恋愛感情があるのかどうか、それを聞いている。」
ハロルドに誤魔化しは通用しないようだ。レベッカは、溜め息を吐き正直に話す。
「アーノルド王子ほど素敵な人はいないわ。そんな彼の告白を断って侮辱をしたレベッカ・コルトレーンは大馬鹿者よ!」
マルクスは、レベッカがアーノルドに恋愛感情を抱いていた事に驚いた。さらに、プライドの高い彼女が自分の事を大馬鹿者だと言った事は衝撃的だ。
ハロルドは、腕を組み満足そうに頷いた。
「レベッカ嬢、俺はレベッカ嬢の事をよく思ってはいなかったが、今の叫びでかなり印象が変わったぜ。アーノルドとの事、応援するぜ!」
まさかアーノルドとの事を応援すると言われるとは思わず、レベッカは目を丸くする。
マルクスは、やっぱりハロルドとレベッカが直接話す機会を作って正解だったと満足げに笑った。




