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悪役令嬢には異世界がお似合い  作者: 瀬名 冬乃
レベッカ、悪役令嬢となる
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傲慢な公爵令嬢

 レベッカ・コルトレーンは、公爵家に生まれ、高い地位と莫大な財産を生まれながらにして持っていた。

 また、レベッカは光輝く金髪にエメラルド色の美しい瞳をした絶世の美女であった。多くの男性を虜にしてしまう彼女は、傲慢な態度を取るようになってしまった。

 そして、愚かにも自国の王子から告白された時にも、その傲慢な態度を改めなかった。



 その時レベッカは、コルトレーン公爵邸の豪華な庭園の一角にある薔薇園で、取り巻き達と優雅にお茶会を楽しんでいた。

 そこに、慌てた様子の執事がやって来て、アーノルド王子が訪れたと告げる。

 レベッカは、怪訝そうな顔をしたが王子の来訪を受け入れた。

 王子とは舞踏会などで度々会ってきたが、レベッカの周りには常に彼女とお近づきになろうと若い男性貴族や他国の王族が群がる。

 レベッカにとってアーノルド王子は自国の王子ではあるが、全く興味を惹かれない相手であったため、いつも軽く挨拶をするのみだった。


 そんな相手であるアーノルド王子が、レベッカに告白してきた。

 

「レベッカ嬢、私とお付き合いしてくれませんか?」


 彼女と一緒にいた取り巻き達は、王子の言葉を聞き、キャー、キャーと騒ぎ立てる。


「レベッカ様なら将来の王妃にぴったりですわ!」


「さすがレベッカ様です。王子様まで虜になさいましたね!」


 彼女達は、口々にレベッカを褒め称え、祝福した。

 しかし、当のレベッカは澄ました顔をしていた。そして、その綺麗な形をした唇から発せられた言葉は、その場に居た誰もが想像できないものだった。


「王族という地位は素敵だわ。でも、アーノルド王子、貴方は太りすぎよ。美しい私とは不釣り合いだわ。」


 まさか公爵令嬢であるレベッカが、王族である自分を見下しているとは思わなかったので、王子は恋の駆け引きのつもりかと思い笑顔で応じた。

 

「アハハッ、確かに肥えている私と絶世の美女であるレベッカ嬢とでは、不釣り合いだ。貴方のためにダイエットをしようか。」


 しかし、傲慢なレベッカは王子の顔をじっと見つめた後、鼻で笑い言った。


「体型をどうにかしても、その顔じゃあね。私は他国の王族からもモテるのよ。王族だからって、私と付き合う事ができると思わないでちょうだい。」


 彼女の態度や言葉が、恋の駆け引きなどではないと気づけば、王子は顔を顰めた。


「レベッカ嬢、君がそんな傲慢な人だとは思わなかった。コルトレーン公爵から聞く君は賢くて、才能豊かな女性だと……それは本当の事なのだろう。しかし、君の性格は最悪だ。」


 アーノルドは、父の親友であるコルトレーン公爵をとても尊敬していた。

 その自慢の娘であるレベッカの事は、コルトレーン公爵が自慢しているのをよく聞いていた。

 また、昔の思い出だが彼女に対して良い印象を持つ出来事もあった。しかし、もっと彼女の人となりを知るべきだったと後悔した。

 アーノルドは、コルトレーン公爵夫婦が超がつくほどの親バカで、レベッカを甘やかして育ててきたであろう事が想像できた。


「レベッカ、君は才色兼備という言葉がピッタリの人なのだろう。しかし、君のその傲慢な性格はその素晴らしい長所を帳消しにする程の酷さだ。」


 アーノルドは、大きく溜息を吐いた後、レベッカに向かい言った。

 レベッカは、その美しい金髪を指で弄びながらつまらなそうにしている。

 その王子に対する酷い態度に、今まで彼女をちやほやしてきた取り巻き達でさえ眉を顰めた。

 レベッカはその事に全く気づいていないが、アーノルドの方は気づいた。


「レベッカ嬢、忠告しておこう。君は他国の王族も君の虜だと言ったが、彼らは愚かではない。君の性格を知れば、離れていくだろう。」


 アーノルドの忠告をレベッカは鼻で笑ったが、その後に起こる事を知れば、さすがのレベッカも考えを改めたであろう。



 

 

 翌日、レベッカは父であるコルトレーン公爵から呼び出された。レベッカは、いつも優しい笑顔で自分を迎えてくれる父の表情が険しい事に気づき、動揺した。


「お、お父様、私に何のご用かしら?」


コルトレーン公爵は、黙ってレベッカをじっと見つめた後、重々しく溜息を吐いた。


「レベッカ、昨日、アーノルド王子からの告白を断ったそうだね。」


「はい。いくら王子でも、私にあの方は相応しくないわ。」


「レベッカ、断るにしても丁寧に断るべきではないか?それなのに、アーノルド王子を馬鹿にするような事を言ったそうだな。」


 始めて父から向けられる冷たい目線に、レベッカは体を震わせ、必死に言い訳をする。


「だって、私はとても美しいのにアーノルド王子は美しくないわ!不釣り合いなのは事実じゃない。」


 この時やっとコルトレーン公爵は、自分の娘がとても傲慢に育ってしまった事に気づいた。

 

「ああ、レベッカ。弟や妹にはとても優しいのに、どうしてその優しさを王子にも向けられなかったのだ?」


「私の可愛い弟や妹達と王子は明らかに違うではありませんか!私の弟や妹達は目に入れても痛くないほど可愛らしく……」


 愛らしい弟や妹の事を思い浮かべ、レベッカは柔らかな表情を浮かべる。アーノルド王子に見せた傲慢な態度は幻かと思うほどだ。

 しかし、コルトレーン公爵は娘の話を遮り、厳しく質問した。


「それでは、リーガンやロレーナが可愛い容姿をしていなければ、弟や妹でも優しく接さないのか?」


「それは……」


 レベッカは、考えた事のなかった事を問われて口篭ってしまった。

 コルトレーン公爵は、深い溜息を吐いた後、レベッカに部屋を出て行くように言った。

 レベッカは公爵の部屋から出た後、公爵家の長い廊下で一人立ちすくみ、呟いた。


「例え容姿が優れてなくても、リーガンとロレーナが私の愛する弟と妹である事に変わりはないわ。」


 その言葉を公爵の前で言う事が出来ていたのなら、娘が可愛くて仕方のないコルトレーン公爵は彼女に謹慎処分を下さなかっただろう。

 しかし、謹慎処分を受けといて良かったと思うほど、彼女への世間の目は冷たかった。

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