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プロローグ

 20年前のその日、全人類のおよそ20%が異能と呼ばれる特殊能力に目覚めた。

 ダンジョンやモンスターなどのファンタジーなものが現れた訳ではなく、異世界からの侵略があったなんてこともない。

 ただただ、異能に目覚めた人類が現れたのである。

 そして、その日以降、生まれてくる子供に一定確率で異能が発現するようになった。


 異能を持った人、異能者に各国は様々な対応を行った。

 ある国は軍隊として、ある国は監視付きで隔離、ある国は放置など様々であった。

 異能者への対応と同時に、対異能者世界共通法という各国の代表によって世界で共通の法律が作られた。

 この法律、各国代表の思惑が混ざり合い、最悪の法律となる。


 対異能者世界共通法、通称対異法の制定により、異能者達は人体実験の被検体や軍事兵器のような扱いになった。

 そして、これが切っ掛けとなり、異能者による国内テロ活動や国外逃亡、異能者集団による周辺国への軍事侵略などが各国で巻き起こった。


 数年の時を経て、対異法は撤廃され、異能者による異能者の為の法が改めて作られた。

 多少の制限や強要されることはあるが、それでも対異法よりは異能者に寄り添ったものであり、一時的な世界規模の動乱は収まったとみなされた。



 15年前、異能者が自分の異能を鍛えたり、能力詳細の確認など、多岐に渡る能力者の為の人工島が作られた。

 異能者であれば誰でもがこの島への上陸が許されており、非異能者は如何なる理由であろうと許可されない。その為、この島にある全ての区画には異能者が関わっている。


 この島が作られた時期に、この島の内側以外での異能の使用は殆ど禁止となった。

 ただ、異能犯罪に対する異能犯罪対策課、各国公認の元の異能研究所、突発的な異能の発現時に起こる制御の外れたの異能に対する防衛行為など、いくつかの例外も存在する。



 例えば、今目の前の状況が例外に当たるだろう。

 5歳ぐらいの男の子が2人。

 片方の男の子の両親が、もう片方の男の子が起こした制御の外れた異能によって、ぱっと見でも分かるぐらいの重症を負っている。

 このまま放っておけば、死ぬのは確実であろう。

 怪我を治す異能者は比較的居るが、間に合わないだろうな。


 未だに異能が制御されていない気がする。

 こちらも放置してれば、どんどん被害者が増えるだろう。


 さて、この場で必要とされるのは、人命の延命と制御の離れた異能の対応。

 普通なら2人以上の異能者が必要である。



「暴走異能対策課です。皆さん離れてください。危険ですので離れてください」



 おや、いつの間にやら男女二人組の異能警察さんが到着しているようだが、延命対処が出来てないっぽいか。

 あくまで止血やら簡易の救命処置だろうが、あまりにも傷が深すぎる。


 ところで、あの男の子、異能の才能が高いんだろな。

 制御されていないというのは、その人の異能が極限まで出力されることになる。だから、異能の才能が高ければ高いほど制御されていない時、暴走時の被害は拡大する。

 常日頃から鍛えられている異能者が、押されているどころか防ぐことで精一杯といったところだ。

 どうやら、風を使う異能なんだろうが、シンプルで異能者の数も多いから対策も立てられている筈だが、出力が桁違いといったとこか。


 うーむ、この2人が悪いわけではないのだが、この2人じゃどうしようも出来ないのは明確だ。

 あの男の子の両親は死ぬし、異能暴走が止まる前に追加で被害が出る。



 あっ、男性が吹き飛ばされた。



「ひ、柊さん!」

「大丈夫だ。相良(さがら)、3人を連れて離れろ。離れたら応援が来るまでバリア張ってくれ」

「分かりました」



 意外と現場慣れしている感じか。

 柊と呼ばれた男性も防御に徹すれば死にはしないだろうし、バリアって言っていた感じからして、相良という女性の方はバリアを張る異能なんだろうな。

 異能の相性も良く、普通に優秀なんだろうな。



「すみません、近くに回復系の異能者はいませんか! 出力が低くても構いません! いませんか!」



 周辺から声が上がることはない。



「だれか、お父さんとお母さんを助けてください」



 ほぼ泣きながら男の子が叫ぶように助けを呼んでいるが、やはり声が上がることはない。


 回復系異能者はいないのは確実か。

 となると、俺が異能使って良いと思ってよいな。


 人込みをかき分け、相良と呼ばれた女性と男の子の近くに行く。

 気が付いた相良さんがこちらに話しかけてくる。



「もしかして、回復系異能の方ですか」

「そうとも言えるし、違うとも言えるし」

「どういうことですか」

「今はそれどころではないでしょ。まぁ、簡単に言うならそこの男の子次第で助かるかどうか決まる異能なんだよ」

「僕がなんとか出来るの? 僕、異能ないよ」



 俺はポケットからコインを1枚取り出す。



「チャンスは1度。コインの表か裏かを当てるだけ。当たれば助かる。外せば死ぬ。やるか?」

「ま、待ってください。こんな小さい子に」

「決めるのはこの子だ。相良さんは黙ってろ」

「ど、どうして私の名前を。じゃない、君、その男の異能に答えないで。絶対お母さん達は助けるから」


「僕なんとなく分かるんだ。助けるなら答えないといけないって。おじさん、おもてで」

「まだ19だよ。まぁいいか。鳥の絵が描いてある方が表だ。いいな?」

「いいよ。だから早く」

「いい覚悟だ。異能発動」


 コインを上に向かって指ではじく。

 弾いたコインは僅かに輝き、回転しながら手の甲へと落ちていくのであった。

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