表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【12/1より第二部第五章更新開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜  作者: 逢魔時 夕
第一部第三章「クリフォート魔族王国回遊記」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/238

「無断で生活費(現金十億円)を持ち出したヒロイン達に然るべき報い(石抱)を!!」っていう理解不能な題名がちゃんと物語の展開を端的に表しているという異常事態になっている件について。

 所変わって宿屋『鳩の止まり木亭』の一階、食堂にて……。

 無縫は警戒を解かれた筈の宿屋の利用者やビアンカに向けられる冷たい視線に晒されていた。

 無縫に対する怒りや被害者である二人(・・)に対する哀れみの視線の中でも、無縫は一切動じず【万物創造】を発動し続けた。


 生み出すのは、直方体のコンクリートの塊だ。それを、無縫は躊躇なく正座したヴィオレットとシルフィアの足の上に置いていく。ちなちに、流石に体格が違うのでシルフィアの膝に積まれていくコンクリートは妖精サイズだ。


「……おいおい、無縫さん。流石にやめないか? こんな小さな子達に……見損なったぜ」


 そんな光景を見せたくないビアンカはスノウの目を塞いでいる。

 見兼ねたギミードが無縫を止めるべく声を掛けようとするが、向けられた絶対零度の視線に思わずに思わず息を呑む。

 その目は「部外者が口出しするんじゃねぇぞ」と言いたげであった。


 ちなみに、フィーネリアは素知らぬ顔でダンマリを決め込んでいる。


「……まあ、この状況だと俺が悪者みたいですけど……こいつらがやったことって普通に犯罪ですよ。俺が稼ぎ、生活費として用意しておいた現金十億円……っと、皆様には分かり辛いでしたね。金の価値に換算して計算すると、金貨一枚十万円と計算して、金貨一万枚相当ですね。それをこいつらは俺が異世界召喚されているのをいいことに持ち出し、全額天空カジノで溶かしたんです。その上借金まで拵えて……ああ、勿論、返済のアテなんてありません」


「……はぁ? 金貨一万枚!? それを溶かしたって!? ……まあ、そりゃ確かに嬢ちゃん達が悪いぜ。ってか、なんでそんなことしたんだ?」


「無論、ギャンブルをしたい欲望に逆らえなかったからじゃ!」


「無縫君がいない今こそチャンスと思って!」


「……こいつらにはちゃんと稼げるように機材の準備とか諸々やったのにこのザマだよ。ついでに見ての通り反省もしていないんだ。まさに、人間の……いや、純魔族と妖精の面汚し、クズ以下の存在だよ。スノウさん、こいつらのことは是非反面教師にしてね」


 なんとも反応し辛い無縫の言葉に、ビアンカに目を塞がれて状況がイマイチ分からないスノウは曖昧な表情を浮かべている。


「しかし、痛そうね」


「石抱っていう江戸時代に行われた拷問の一つらしいよ。より正確には、囚衣の裾をはだけて脚部を露出させ、十露盤(そろばん)板と呼ばれる三角形の木を並べた台の上に正座させ、背後の柱にしっかり括り付けて、三角の木材の鋭角の稜線と石の重みで責め立てるというもの。それに比べたら、大分マイルドだと思うよ。……身ぐるみ全部引っぺがして、『私達は罪を犯しました』という札を首から下げさせて、車と鎖で繋いで市中引き回しにしてやろうと一瞬思って寸でのところで留まった俺のことを褒めて欲しいくらいだよ。……まあ、猥褻物陳列とこいつらのお仲間に思われるのが嫌だっていうのが主な理由だけどね」


「うむ、英断じゃな! 流石は無縫!」


「調子に乗るなよ、ヴィオレット。……一応聞いておくが、二人とも余罪は……ないよな?」


「あ、ああ、ある訳ないじゃろ! 無縫、お主、付き合いの長い我らのことを欠片も信用していないのか!?」


「そ、そんな! し、し、しし信じられないよ! 無縫君は私達のことを信用してくれていると思っていたのに!!」


「はぁ……まあ、何かありそうな気がするが、追及はおいおいしていくとして。……ちなみに聞いておくが、ファラリスの雄牛、電気椅子、鉄の処女(アイアン・メイデン)、腰斬、どれがお好みかな?」


「苦しんで死にたくはないのじゃ。ということで、ギロチン一択じゃな」


「まあ、でも、無縫君ってなんだかんだ優しいし、絶対にそんなことしないけどね」


「……はぁ。全く……とりあえず、メープルさんに祝勝パーティのお誘いを受けている。お前らも参加するんだよな? あっ、よろしければ皆様もご参加ください。メープルさんが、『是非ご友人も呼んでください』と言ってくださったので、ご都合が合えば是非」


 無縫とヴィオレット、シルフィアのぶっ飛んだやり取りについていけない一同は、「これがコイツらの日常なんだなぁ」とほとんど思考停止するように納得し、無縫の提案をありがたく受け取ることにしたのだった。



 翌日、無縫はヴィオレット、シルフィア、フィーネリアと宿屋『鳩の止まり木亭』の面々と共に『Boulangerie et Pâtissière 千枚の葉(ミルフィーユ)』に赴いた。


「お待ちしていましたぁ。皆様、どうぞこちらへぇ」


「……本当にすみません。こんな大勢で押しかけてしまって」


「いえいえ、楽しいことはみんなで分かち合った方がいいですからねぇ〜。さあさあ、皆さ〜ん、今日はいっぱい楽しんでくださいねぇ〜」


 『Boulangerie et Pâtissière 千枚の葉(ミルフィーユ)』に併設された、普段は開放されていない食事スペースに案内されると、焼きたてのパンの美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐった。

 今回のお祝いのために沢山のパンやお菓子を用意したらしく、『Boulangerie et Pâtissière 千枚の葉(ミルフィーユ)』で販売されている全種類のお菓子やパンがテーブルに並べられていた。


 『Boulangerie et Pâtissière 千枚の葉(ミルフィーユ)』の従業員が用意してくれた美味しい紅茶を飲みつつ、洋菓子やパンに舌鼓を打つ。

 幸せでゆったりとした時間が流れた。ちなみに一番パンやお菓子を食べていたのは無縫とメープルの戦いを全く観戦していないヴィオレットとシルフィアだったりする。遠慮の欠片もない二人に無縫は終始冷ややかな視線を向けていた。


「それでぇ、無縫さんはこれからどうするのかしらぁ?」


「そうですね……とりあえず、クリフォート魔族王国を一通り巡っておこうと思います。時空の門穴ウルトラ・ワープゲートは一度その場に行って座標を取得してしまえば、いつでも目的地に開けますからね。挑戦順は……難易度が高いアィーアツブス区画から挑戦していこうと思います。キムラヌート区画は後回しにした方が良さそうな雰囲気なので、まずは情報を集めつつ挑戦のタイミングを探るという感じですね」


「なるほどぉなるほどぉ、やっぱりぃ、全部の幹部を巡るつもりなんですねぇ。皆さん、私よりも遥かにビターですからぁ、気を引き締めてくださいねぇ〜。後、アィーアツブス区画は寒いですからぁ、防寒対策をおすすめしますよぉ」


「かなり寒いんですね。……まあ、でもその前にちょっと賽子が足りなくなってきたので補充のために異世界アムズガルドに行こうかと思っていますが」


「異世界アムズガルドですかぁ?」


「そこにいるヴィオレットの出身世界ですね。俺が最初に召喚された異世界でもあります。……って、メープルさん、どうかしましたか?」


「……うーん、どうしましょうかぁ? 滅多にない機会だしぃ、異世界に行くことができるなら行ってみたいのよねぇ。もしかしたらぁ、新しいパンのアイディアが湧いてくるかもしれないしぃ。でもぉ、流石に長期間留守にする訳にもいかないのよねぇ」


「まあ、俺は悪魔の賽子(デーモン・ダイス)天使の賽子(エンジェル・ダイス)を調達しに行くだけですし、そんな長期間滞在するつもりはありませんが、しばらく行っていないし情勢を確認しておきたいというのもあるので二日三日滞在してもいいかもしれませんね。魔王軍幹部の立場だとなかなか出歩けないかもしれませんが、時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを使えばいつでも戻ってくることができますよ。幸い、異世界でも活動できるように異なる世界でも連絡を取ることができる装置もありますし、もし、興味があるのでしたら今回パーティに招いてくださったお礼として細やかな旅をプレゼントさせて頂けないでしょうか?」


「そこまでお膳立てされてしまったらぁ、興味を優先させたくなるわぁ。折角だしぃ、お言葉に甘えさせてもらおうかしらぁ?」


「む、無縫さん! 良かったら私も連れて行ってくれませんか!! お話を聞いて私も面白そうだと思って! ……あっ、勿論、迷惑であれば大丈夫です」


 ここで意外な提案をしてきたのはスノウだった。

 どうやら話を聞いていて他の世界に興味を持ったらしい。


「……流石に親御さんの許可がないと決められませんね」


「まだ小さいし本当は心配だけど、でも、スノウが見てみたいというなら、その気持ちを尊重するのが親だと思うわ。それに、いつも宿の仕事を手伝わせてしまっていて申し訳なく思っているの。文句の一つも言わずに手伝ってくれているけど、本当は同い年の子達みたいに外で遊びたいんじゃないかって思っていたわ。あんまり自分の願いを口にしない子だけど、そんなスノウが初めて自分がやりたいことを口にしたのよ。叶えられることなら、是非叶えてあげたいわ。無縫さん、皆さん、どうか娘のことをお願いします」


「まあ、フィーネリアさんもいるし、メープルさんもいますし、大丈夫だと思いますよ。割と治安も安定している世界ですし。……って、フィーネリアさんも行くんだよね?」


「そうね。基本、無縫君の旅に同行しているだけだからこっちに一人残ってもやることはないし」


「……話が纏まりそうなところ本当に申し訳ないのじゃが……本当に行くつもりなのか?」


「ん? 何か問題でもあるのか? ヴィオレット?」


「まっ、まままさか!! いや、その、特に理由はないんじゃが……」


 明らかに異世界アムズガルドに帰郷したくなさそうな態度を取る挙動不審なヴィオレットに嫌な予感を覚える無縫だった。

◆ネタ等解説・八十二話

石抱

 江戸時代に行われた拷問の一つ。笞打に屈しない未決囚に施された拷問。牢問と呼ばれて正規の拷問の前段階として行われた。

 まず囚人は後手に緊縛される。囚衣の裾をはだけて脚部を露出させ、十露盤板と呼ばれる三角形の木を並べた台の上に正座させ、背後の柱にしっかり括り付ける。この時、僅かに後ろに仰け反るように縛り付ける。三角の木材の鋭角の稜線が体重で脛に食い込んで苦痛を与える仕組みとなっている。

 更にその太腿の上に石を載せる。石の重みで脛の部分に三角木材の稜線が更に食い込み、非常な苦痛を味わせることになる。


ファラリスの雄牛

 古代ギリシアで設計されたという処刑のための装置。

 真鍮で鋳造された中が空洞の雄牛の像であり、胴体には人間を中に入れるための扉がついている。

 受刑者となったものは、雄牛の中に閉じ込められ、牛の腹の下で火が焚かれる。

 真鍮は黄金色になるまで熱せられ、中の人間を炙り殺す。雄牛の頭部は複雑な筒と栓からなっており、苦悶する犠牲者の叫び声が、仕掛けを通して本物の牛のうなり声のような音へと変調されるようだ。

 参照しているWikipedia曰く、実際に用いられた記録はなく、模倣品さえ残されていないらしい。


電気椅子

 死刑執行具の一つであり、死刑における執行形態の一つ。被執行者に高電圧を加え感電死に至らしめる。

 現在使用されている地域はアメリカ合衆国の数州のみである。


鉄の処女(アイアン・メイデン)

 中世ヨーロッパで刑罰や拷問に用いられたとされる、女性の形をしていて中に人間を入れることのできる空洞がある像。

 「空想上の拷問具の再現」とする説も強いようだ。

 前面は左右に開くようになっており、中の空洞に人間を入れて扉や入れ物内部に突き出すように張り付けられた無数の棘で処刑者を突き刺すという処刑方法であると思われる。


腰斬

 古代から中世において中国で行われていた死刑執行の方法。

 罪人の胴体を腰の部分で切断することで死に至らしめる。胴体を切断された罪人は即死することはなく、執行後十分から数十分後に出血多量やショック状態で死に至る。その間の苦痛が絶大であるため特に重罪人に対して執行される処刑法とされた。


ギロチン

 最近は餅月望氏のライトノベル『ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜』において主人公ミーア・ルーナ・ティアムーンが恐れるものとしても有名か。

 二本の柱の間に吊るした刃を落とし、柱の間にうつ伏せ状態にさせた被処刑人の首を切断する斬首刑の執行装置である。フランス革命において受刑者の苦痛を和らげる人道目的で採用され、以後フランスでは一七九二年から一九八一年まで使用された。

 他の処刑方法よりも苦痛が少ないため、ヴィオレットはかなり太々しい提案をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ