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サタン・カップのシステムがどこかの某有名ゲームのシステムにあまりにも酷似していた件について。

「『頂点への挑戦(サタン・カップ)』とは四代目の魔王に当たる現魔王テオドア=レーヴァテイン陛下が確立した魔王襲名の手順を指す言葉です。それ以前、魔王軍四天王や魔王軍幹部の立ち位置は曖昧でした。また、いつでも魔王に挑戦できるという状況だったため、日々魔王の座を狙う野心ある魔族が魔王城に襲撃を仕掛けてきました。仮に玉座を奪えたとしても、今度はその玉座を簒奪した者が次の簒奪者に怯えることになります。そのような状況下では当然、国の政治などままなりません。このいつでも玉座を簒奪できるという状況がクリフォート魔族王国の悩みの種でした」


「……そんな状況下でよく四代目までで止まっているわね。もっと代替わりしても良さそうなものだけど」


「初代魔王陛下を含め、いずれの代の魔王陛下も無類の強さを誇っていました。それ故に、魔族の頂点、魔王として認められていたということですね。初代魔王陛下は諸国乱立していた魔族を圧倒的武力で制圧して初代魔王となりました。その初代魔王陛下に半ば押し付けられる形で魔王となった二代目魔王陛下も、三代目魔王陛下を輩出した黄金の世代と呼ばれる世代の台頭まで無敗を誇りました。その黄金の世代出身の三代目魔王陛下を倒したのですから、今代の魔王陛下も魔族の頂点に君臨するだけの強さがあるということになります。……話がかなり逸れてしまいました。その肝心の『頂点への挑戦(サタン・カップ)』ですが、年に一度開催される巨大な催し物となります。『頂点への挑戦(サタン・カップ)』の本戦は前哨戦である幹部巡りで資格を得た者達が四つのブロックに分かれ、トーナメント形式で戦います。そして、ブロックごとに生き残った各一名が決勝戦を行って挑戦者を決め、その挑戦者が魔王陛下に挑戦できるという形です」


「……確かに、それなら魔王の負担はかなり減るわね」


「ちなみに、魔王軍幹部と魔王軍四天王にはトーナメントに無条件で進出できるという権利があります。前哨戦を戦い抜く必要がないシード枠ですね」


「……でも、そうなると魔王軍幹部と魔王軍四天王の違いは何かしら?」


「魔王軍四天王と魔王軍幹部の最大の違いは領主の役割があるかないかです。バチカル区画、エーイーリー区画、シェリダー区画、アディシェス区画、アクゼリュス区画、カイツール区画、ツァーカブ区画、ケムダー区画、アィーアツブス区画、キムラヌート区画――それぞれの担当する区画を管理して税金の徴収や地方自治、魔国政府との橋渡し役などの仕事に従事することになります。後は『頂点への挑戦(サタン・カップ)』の前哨戦となる幹部巡りの試験官としの役割もありますね。魔王を目指す魔族達の挑戦を一手に引きつける立場ですから、ごく一部の方を除いてかなり過酷な業務となっています」


「……少し言い方が気になりますね」


「魔王軍幹部が出す試練には簡単なものから難しいものまであります。魔王軍から試練の内容を簡単にするように言われている幹部もいますので、どうしても挑戦者数に差ができてしまうのです」


「……なるほど、魔王軍幹部ごとに難易度が設定されているのか?」


「基本的に人間の国側に近い方が弱め、逆に魔王城に近い方に強い方々が集まっています。一方、魔王軍四天王ですがこちらは領主などの役割は持たず、完全に国を守護する戦力としてのみ期待されています。……ただし、魔王軍幹部・魔王軍四天王問わず副業についている方が多いです。専任は確か、魔王軍四天王のあの方だけだったような……。話が長くなってしまいました。最後に幹部巡りですが、各区画を回って魔王軍幹部と戦い、勝利することで得られるスタンプ、これを八つ集めることが条件となります」


「……八つですか? 十個じゃなくて?」


「全部集める必要はありません。なので、誰と戦って誰と戦わないか、それを見極めるのも試練の一つであるということになります。魔王軍幹部と戦うためには魔王軍幹部が用意した試練をクリアする必要があります。その試練の大半はただ腕っぷしがあればクリアできるというものではありません。知識、知力、品格、運動神経……様々な能力が求められることになるでしょう」


「……なんというか、某ガラルのジムチャレンジとチャンピオンカップ、そこに某パルデアのチャンピオンロードを合わせなような内容だな」


「ごめん、何を言っているかさっぱりだわ」


「『頂点への挑戦(サタン・カップ)』の期間中は必ず今からお渡しする手帳をお持ちください。規則で期間中の再発行はできませんので、紛失した場合は次回の『頂点への挑戦(サタン・カップ)』に改めて挑戦して頂くことになります。また、手帳及びスタンプの効力は今回の『頂点への挑戦(サタン・カップ)』が終わるまでとなります。次回の『頂点への挑戦(サタン・カップ)』に持ち越しはできませんのでご注意ください」


「なるほど……なかなか良いゲームバランスですね」


「私ができる説明はここまでとなります。後は情報収集を含めてご自身で頑張ってください。情報を収集して対策を練るところを含めて幹部巡りですので。……ああ、そうでした、肝心なことをすっかりお話しし忘れていました。幹部巡りの幹部チャレンジはこちらの魔王軍幹部巡り総合事務局及び最寄りの区画の領主公館にて行えます。必ず挑戦される際は受付をして予約をとってください。……早速ですが、最速の挑戦になりますとバチカル区画になりますが、いかがなされますか?」


「そうですね……まあ、結局全部攻略するつもりなのでどこからでも良いですが、まずは最弱というものがどれほどのものか確認する意味も込めてバチカル区画に挑戦してみましょうか? 明日は空いていますか?」


「えっ……はっ、すみません。明日ですね、すぐお知らせします」


「なんか変なこと言ったかな?」


「……まあ、正直十個全てクリアしてってのは前例がないからな。特にキムラヌート区画の幹部様は片手で数えられるくらいしか突破した者はいない。全問正解者もいないみたいだからな……元々は序盤の区画を担当していたが、手加減できないせいでキムラヌート区画に配置換えされちまったっていうなかなかの変わり者だぜ。アィーアツブス区画の幹部様も大概難易度が高いが、それと比べても攻略者数が段違いに少ない。俺なら、この二つはまず避ける」


「……そうやって言われると逆に燃え上がるんだよなぁ」


勝負師(ギャンブラー)の性って奴ね。私には理解できないわ」


「かっ、確認終わりました! ……すみません、あまりにもびっくりしてしまったので取り乱してしまいました。バチカル区画の幹部様ですが、明日の昼頃からでしたら大丈夫とのことですので、こちらから挑戦者がいる旨は連絡しておきます。場所の地図とお店(・・)の名前をメモに書いておきますので、当日は直接試練の会場に向かってください。こちらに足をお運び頂く必要はありませんので」


「分かりました」


 無縫は受付嬢からメモを受け取るとフィーネリアとオズワルドと共に魔王軍幹部巡り総合事務局を後にした。



 魔王軍幹部巡り総合事務局を出ると一人の騎士が無縫達の方へと走ってきた。どうやら、宿泊を受け入れてくれる宿が見つかったらしい。


「……よく見つかりましたね。まあ、ないならないで時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを使って行き来しようかと思っていましたが」


「なんというか、やっぱり空間魔法って反則級だよな」


「……そうね」


「どうしたんだ? フィーネリアさん」


「無縫君の強さって寧ろ時空の門穴ウルトラ・ワープゲート以外のところにあると思っていたから。時空の門穴ウルトラ・ワープゲートを自在に使えるのって確かに強いわよね」


「まあ、異なる世界を繋ぐ技術は時空の門穴ウルトラ・ワープゲートだけの専売特許じゃないしな。そもそも、ロードガオンの虚界を渡る技術も(ゲート)のようなものを経由しているから擬似的な空間移動みたいだし」


「星同士がかなり近い距離にいないといけないとか、専用の船や装置が必要とか制約はあるけど、また確かに似たようなものではあるわね」


「なんというか、フィーネリアさんの世界も色々と凄いな」


「私からしてみれば魔法を使えるっていうのも十分凄いことなのよ。魔法は御伽噺の産物って言われているくらいだから。それぞれ、得意分野が違うのであって、貴賎がある訳ではないと思うわ」


「それぞれの世界にはそれぞれの文明がある。条件も全然違うんだから、単純比較はできないってことだな」


 魔族達の冷たい視線に晒されながら歩くこと二十分、遂に無縫達は目的地・宿屋『鳩の止まり木亭』に辿り着いた。


「それじゃあ、俺達は職場に戻るぜ。明日の幹部戦、楽しみにしているからな!」


 そう言ってオズワルド達は去っていった。残された無縫とフィーネリアは針の筵のような冷たい視線に晒されながら宿屋『鳩の止まり木亭』の扉を開け、中へと足を踏み入れる。

◆ネタ等解説・七十五話

某ガラルのジムチャレンジとチャンピオンカップ

 『ポケットモンスター ソード・シールド』の舞台ガラル地方のリーグチャンピオンを選定するシステムのこと。

 ジムリーダーやチャンピオン、リーグ委員長などの特定の人物から推薦状をもらったトレーナーだけが参加することができるという他作品にはない独自システムが採用されている。

 明確に決められた順番でジムリーダーを倒しながらゴールであるシュートシティを目指すジムチャレンジと、八つのジムバッチを手に入れたジムチャレンジャーがチャンピオンやシード枠のジムリーダーを交えたトーナメントによって構成されている。

 四天王が存在せず、元ネタのイギリスを反映してか、かなりスポーツ色が強い。


某パルデアのチャンピオンロード

 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の舞台パルデア地方でのチャンピオンランク選定試験及びゲーム内の三つのルートの一つ。

 八つのジムを巡り、ジムリーダーが用意したチャレンジを攻略した上でジムリーダーに勝利し、八つのバッジを集めてポケモンリーグに挑むという流れである。

 スポーツ色が強いガラルとは打って変わって資格試験としての要素が強い。また、ジムリーダーが全員副業を持っているのが特徴。

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